奮闘
~ レストラン・宿り木 レストラン 店内 ~
今日がこのレストランの正式営業の初日だと言うのに、アリアが飛び出して行ってしまったため、今日は僕だけで接客をする、ということになった
何かの夢なら覚めてほしい・・・
僕は、11時の始業時間を告げる時計の長針と秒針の音を恨めしく思った
とりあえず、ドアを開けて入ってくるお客さんを笑顔で迎える
「いらっしゃいませ!」
昨日と同じようにすればいいだろうと思い、僕は接客に勤しんだ
夕日が沈み始める時間、接客によって僕の魂魄が尽きかけたとき、
店のドアを開け放つ人物に僕はほっと安堵する
今朝、飛び出しって行ってしまった、アリアだ
「ハジメ、おまたせ!!」
アリアは荷物を部屋に置きに行き、すぐに店内に戻ってきた
アリアが部屋で休んでていいよと言ってくれたので、その言葉に甘えることにした
店内に向かってお辞儀をし、僕は自分の部屋に戻る
ベッドに仰向けにダイブし、靴を脱ぐ
張りつめていた息を吐き、緊張の糸をほぐしていると、眠気が襲ってきた
いけない、まだ仕事中なのに・・・
僕は眠気に勝てず、目を閉じてしまった
~ レストラン 店内 ~
「アリア、ビールもう一杯くれる?」
「はーい!」
アリアはお客の注文を受け、カウンターに注文後、ビールをお盆にのせて持っていく
創は昼間どんな接客をしたのかな
そう思いながら私は注文をしたお客さんの目の前にビールを置く
もしかして、昨日のお昼と同じように接客をしてたりして
・・・まさか、ね
他のお客さんの注文を聴きに、お冷を注ぎながら店内を隈なく回る
しばらくして、営業終了時間がまじかに迫ってきた
酔い気味のお客さんやその人を心配するお客さん、お酒には目もくれず料理を食べ続けているお客さんなど、様々だ
「ごちそうさん!」
「うまい料理だったよ」
満足そうに言って、ほとんどのお客たちはそれぞれの家へ帰っていく
最後の客が千鳥足でレストランから出ていくのを私は見送った
カランとドアが音をたてる
今日の営業終了!!
よし!まずはマスターからハジメの仕事の様子を聞いてみようかな
アリアは気合を入れなおし、カウンターにいるマスターの方へ向かった
カウンターで皿を手に取っているマスターに私は声をかける
「マスター!」
「うん?」
皿を布巾で拭きながら私の方を向いてくれる
「今日、ハジメの接客はどうだった?」
私が訊ねると、リドは布巾で皿を拭く手の動きをとめる
その後、遅れて肩を揺らしながら笑いを必死にこらえようとしていた
「よく働いていたが・・・、昨日の接客のまま、だったぞ」
「そっか・・・」
口を押えながらリドは後ろを振り向いたので、どうやら私の予感は的中したようだ
ハジメは素直みたいだから、昨日の接客を間に受けちゃったみたいね
その後説明しておけば良かったなと改めて思った
ハジメ、もっと肩の力を抜いて接客していいんだよ
そう私は言いたかった
よし!今日の労いも兼ねてハジメにそのことを言いに行こう!!
私はマスターにお疲れ様でした!というと、ハジメの部屋に歩を進めた
ガチャリと音をたて、ドアを開ける
あ、ノック忘れた・・・。でもいいか
ハジメなら許してくるよね?と思い、ドアを完全に開け私は中を覗く
「ハジ・・・メ?」
ハジメの返事がないので、私は後ろ手でドアを閉める
ハジメは疲れていたらしい
ベッドに仰向けに身を投げ出し、寝息をたてていた
これじゃあ、起こせないよね
労いとここでの働き方の説明は明日かな
後、今日の収穫も、ね
寝息をたてているハジメを私は見下ろす
ハジメ、かわいいなあ
そう思い私はハジメの額を撫でる
本当に私より年上?と思う私はおかしいのかな。いや、おかしくないはず
この寝顔を見れば分かる!と言うアリアは心の中で叫んでいた
無防備に寝ているハジメに私は声をかける
「今日はお疲れ様、ね」
疲れた顔で眠る創の頬をアリアは撫でる
その後、アリアは布団をかけ創の部屋を後にした。
リドは創の接客がこのレストランとは全く異なったものだと気づいてはいたのですが、面白がって注意をしなかったようです。創は接客をしたのが昨日が最初で、すること以外は何にも分からない状態だったので、仕方がなかったんだと思います。
明日の朝の創のリアクションが楽しみです。




