アリアの宅急便
リドのおかげで助かった
ふう、と僕が安心のため息をついていると、リドが僕の方を振り返る
「何があったんだ?」
リドは料理を手際よく皿に盛りつけていく
「え、なんのこと?」
僕は内心、焦りながら知らないふりをした
ふーんと言うリドは僕の方から視線を外し、料理の盛り付けに専念した
もしかして、さっきのアリアのこと、気づかれている?
冷汗をかきながらも、テーブルを拭いていると、結い上げたアリアがドアを豪快に開け放つ
「朝ごはーん!!」
アリアは僕の横を通り過ぎ、リドの傍へ行き、今日は何?なに?と言っている
どうやら彼女は先ほどのことをもう気にしていないようなので
なかったことにしよう
僕は抹消と言う言葉を思い浮かべ、テーブルに三人分のお冷を持って行った
アリアが料理を運んでくる
リドがフォークとナイフ、スプーンを持ってきてくれて、朝食の準備ができた
アリアだけじゃなくリドにも、食べ終わってから僕の考えを話してみようかな
そう思い手を合わせる
「「「いただきます」」」
手を合わせた三人の声が見事に重なったのを聞き、朝食が始まった
今日の朝ご飯は、黒胡椒とクルミのハイジパンとほうれん草とベーコン炒めの上に巣篭り卵をのせたもの、そして、コーンスープだ
アリアがいつも通り目を輝かせている
昨日あれだけ、ブルーベリーアイス食べてたのに
そうだな、女性はよく言うもんな
甘いものは別腹って
そういうことなのだろうと自分自身を納得させ、僕もパンにかぶりつく
本当はちぎって食べるのが正しいってのは分かっているんだけれど、このパンはかぶりつかないといけない気がする
黒胡椒のピリリとくる辛みとクルミの焼けた香ばしい風味が何とも言えない
僕は他の食べ物があることを忘れ、パンを食べていたのをリドに指摘された
パン以外の食べ物を食べ終わり、とりあえず食事がひと段落する
そろそろ話そうかな
お冷を呑みほし、僕は二人に向かって声をかける
「ねえ、二人とも話があるんだけど」
二人も食事が落ち着き、くつろいでた頃だった
「なに?」
「なんだ?」
二人とも僕の方を見てくる
昨日リドの話を聴いて僕が考えたことを二人に話した
「それで、僕はその法律を管理している人を探したいんだ。国を全部回れば僕の記憶喪失も治ると思う」
まずは今いる水の国から探そうと思うんだ、と言っているとリドが口を開いた
「ハジメが会いたがっている人達はな、加護を受けし者、加護者と呼ばれるんだ」
だがな・・・、と言ってリドは首をひねっている
「どうしたの?」
「いやなあ、実はな。俺は水の加護者の話を全く聴いたことがないんだ」
リドの言葉に僕は驚く
「えっ、どうして?」
僕が驚いていると、リドは頭を掻きはじめた
「他の国は移動計で立ち寄った際に聞いたことがあるんだが、水の国では分からなくてな」
俺も許可なしで水の国に滞在している状態なんだ
リドが言いにくそうに言っていた
そういえば、リドに水の国にどうやって入ったか、話を聴いてなかったな
それは後で聴いておこうかなと思い、僕は話を元に戻す
「そっか、リドは水の国に最初から住んでいたわけじゃないから分からないんだね」
僕はリドの言葉に頷く
「アリアはどう?」
誰か知っている?と僕が訪ねていると、アリアは頷いた
「うん、もちろん知ってるよ!!私は水の国の生まれだからね」
えっへん、と言う風に胸を張るアリアは、僕にとっては頼もしく思えた
だから僕は聴く
「本当!?アリアはその人に会ったことがある?」
僕がさらに質問を続けていくと驚くことが分かった
水の国の加護者は海の深く下に住んでおり、会いに行けるのは知る限りではアリアしかいないということだ
そして、アリアはひと月に一回のペースであいに行っているらしい
「じゃあ、その人に許可をもらって来ればいいわけね?」
分かったわ、と言うアリアの行動は素早かった
食べ終わった後の食器をカウンターに運び、アリアは以前街に泳いで行くときにかるっていた大きなリュックを店内に持ってきた
「よし!じゃあ、行ってくるね」
後は任せた!と言うアリアは、レストランのドアを先ほどと同じように開け放ち、
飛び出していった
活発だなと思っていると、リドから肩を叩かれる
「今日のレストランの接客はハジメの腕にかかったな」
ポンポンと肩を叩いてくるので、気づくのが遅れてしまった
アリア、そう意味の任せた!だったのか!?
僕の思考は、今日一日、どう一人で接客していくかに一気に傾いた。
創はクルミパンが好きなようです。食べる姿は、リスがどんぐりやクルミを食べている姿を想像してもらえるといいかもしれません。もひもひと食べてます。
アリアがいなくなり、接客のことについて絶望に染まっているようですが、アリアとリド直伝の接客方法なので大丈夫です、きっと。




