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積み木の世界  作者: レンガ
~ 水の国 ~
32/189

 お客達はそれぞれ、お酒やジュースを片手に話し合っている



 生活のことや仕事のこと、趣味のことに言葉の花を咲かせあう人達もいる



 皆、それぞれの生活を送っている


 それはどの世界でも同じことだったのに気づく


 僕は、この世界に来るまで、異世界に生きている人たちの生活のことを全く考えて

いなかった


 いや、考える必要がなかった



 だから、僕は世界を積み上げては壊す、それを繰り返した



 ただの積み木の世界だから



 そこに別の世界があると、本気にしていなかった



 ただの積み木と思い、毎日のように作り上げては片手で壊していた



 積み木なら、積み上げても、壊しても、誰にも文句を言われない


 もちろん、法律にも違反しない


 ただの個人的な趣味の域で終わるからだ


 

 まあ、十八歳になってまだ積み木を持っているのか、と言われるのがおちなので


 日本の世界にいる周りの人たちには言っていない


 家族も知らない


 知っているのは、僕だけだ



 僕が積み木を組み立てるのは、ストレス発散のためだけではない


 僕が望む本当の世界を創りたいからだ


 でも、


 今まで日本で積み木を組み立てている間、僕の望む理想的な世界は創れなかった





 どうしてだろうか


 僕はこの世界に来てもそのことを考えている



 

 このときの僕は積み木で世界を創る意味を考えていた


 この世界での生活が終わるころ、答えが出るとも知らずに





 思考の渦に流されている僕を、アリアの言葉がひきあげてくれた


 「皆様、お食事はお済みでしょうか?そろそろ、船上レストラン・宿り木の食事会を一旦お開きにさせていただきたいと思います。その後、お話を楽しみたい方やお食事をされる方、くつろがれたい方はどうぞごゆっくりとこの後も、このレストランにてお過ごし下さいませ。」


 アリアがお辞儀をすると同時に、数人談笑しながらレストランを出ていく


 他のお客は話が盛り上がっているのか、席を立とうとしなかった




 けれども、例外が数人いた


 まず、レストラン・フルの支配人、ジェルだ


 ジェルは招待状の招待枠を使い、従業員四人を連れてきたらしい。その従業員たちをレストランの四方に飛ばし、従業員探しに奔走していた



 

 僕の言葉通りに本当に探してるよ




 床に落ちていたごみを拾いながら考えていると、床に誰かの影が漂っていた


 顔をあげるとそこには、金髪野郎が目の前にいた


 

 花屋のロウだ


 「よう!今日の料理うまかったぜ、あれ誰が作ってんだ?」


 にしし、という声が聞こえてきそうな笑顔で言うロウに、嫌味なにっこり笑顔で接客する僕は、リドを紹介するためカウンターへ案内し、リドに相手を任せた




 よし、うまくいった




 心の中でガッツポーズをしていると、今度は後ろからノアさんが話しかけてきた



 「おや、この前とは全然雰囲気が違うねえ」

 イケメンじゃないか!というノアさんは、遠慮なく背を叩いてくる


 いや。というか、もうこれは殴ってくると言えるのでは?


 思い切りのいい平手に僕はなす術もなく床へ倒れる


 「ちょ!?何するんですか、ノアさん!」

 

 やめてくださいよと言う僕に、ノアさんは豪快に笑っている


 ため息をついている僕の上に人影が

 

 「大丈夫か、坊主?」


 ほらよ、と言って片手に酒、あいているもう一歩の手を差し伸べてくる人は、リドから今朝聞いた親友、酒屋のデニーのようだ


 デニーの手を取って僕は起き上がる


 「ありがとうございます、デニーさん」


 「うん、デニー!?あんたどこまで行っていたんだい!?」

 探したんだよ!というノアさんの言葉に後ずさるデニーは冷汗をかいていた



 「かっ、母ちゃん!?何で、この町に!?」


 後ずさるデニーにノアさんはじりじりと近寄る



 「何で?何でじゃないよ!!」


 お待ち!というノアさんの声は、レストランから逃げ出すデニーのドアを開ける音によってかき消される


 ノアさんはデニーを探しにレストランを出て行ってしまった



 ふう、なんとか助かった



 ありがとう、デニーさん。あなたのこと忘れないよ


 


 僕は何事もなかったかのように、満面の笑みで開きっぱなしのドアを閉めた。     

 デニーの名字がノアさんと違うのは、デニーが結婚しているからです。デニーのお嫁さんとのかかわりが今後あるのかないのか、まだ決めておりません。

 もしかしたら、関わってくるかもしれませんが、出すとしたらもう少し先だと思います。

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