青の祝福
「「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ」」
ドアを開き、入口の左右に僕たちが立っている
ぞろぞろと列をなして入ってくるお客たちは、興味深そうに店内を見てまわる
店内のカーテンはこの後のことを考えて閉めてある
お客は店内の窓際の席に座っていく
僕はというと
女性が席に着くときに椅子を引き、お客様が座りやすいように椅子を押す
そして、全員が窓際の席に座り終え、アリアがお辞儀をする
その後、顔をあげ、レストランに声を響かせた
「皆様、お席に着かれましたか?それでは、私、アリア・M・ジェーンがお食事の流れについてご説明させていただきます」
いつものアリアとは明らかに違った言葉遣いに、僕は息を呑む
「では、まず横にございますカーテンにご注目下さいませ」
アリアのよく通る声に皆は素直に従う
「当店ではお客様に海の景色をお楽しみいただく為、カーテンをお客様ご自身であけていただくようになっております。僭越ながら、私が音頭を取らせていただきますので、3、2、1の合図で一斉にカーテンをお開け下さい」
よろしいでしょうか?というアリアの声に、お客さん達はカーテンをみながら頷いている
僕はそのお客様達が気付かない間にお冷を置いていく
アリアが息を吸い、口を開く
「3、2、1!」
バサッとカーテンを開く音が重なる
レストランの店内は光り輝く海の色、青色に例外なく染まっていった
テーブルが
椅子が
床が
お冷が
そして、そこにある僕自身の心までもが、青の祝福を受けた
しばらくして、どこからともなく拍手の音が聞こえてくる
僕はアリアの横に立ち、拍手が鳴りやむまでお辞儀をした
拍手の音が止み、僕たちは同時に顔をあげる
「皆様、いかがでしたか?」
僕は窓際の席で一面の海にうっとりしているお客やお辞儀をした僕たちの方を見るお客に声を投げかける
「それでは、本日限りの宿り木コース料理をお楽しみくださいませ」
アリアは僕が言った後、すかさず食事の始まりを告げた
僕たちは食前酒のオーダーを取っていく
まだ大人になっていないパンジーやリリーには、ジュースのオーダーを取っていく
その後、食事の流れが止まらないように
前菜、スープ、メイン、デザートが三十人分リドの手によって作られていくのを
僕たちはお客様が食べ終わるタイミングに合わせて持っていく
その後は、食後に飲むドリンクのオーダーを取りながら、雑談をしていく
「やあ、リリーとパンジー。来てくれてありがとう」
僕は風の服屋の店主達に向かってお辞儀した
「「あら~、ハジメ。こちらこそ、どうもありがとう」」
凄くきれいでおいしかったわ~、と言う双子は幸せそうにリド特製のデザートを食べている
「「また、暇を見つけてくるわね~」」
ドリンクのオーダーを双子の席から全て取り終わり、カウンターへ向かった
「リド、ベリージュース2つとパインジュース1つ、赤ワイン、白ワインがそれぞれ一つずつです」
お願いしますと言うと、普通では有り得ない速さで飲み物の準備をし、カウンターに出してくる
「はいよ」
「ありがとうございます」
僕はお礼を言い、先ほどのリリーとパンジーの方へドリンクを持っていく
アリアも僕と同じようにオーダーをとり、ドリンクをお客の方へ持っていく
足取り軽くお盆にドリンクをのせ、歩いていくアリアの姿を見て僕は思う
接客することが本当に好きなんだろうな
幸せそうな顔で接客するアリアに、
僕も負けてられない
そう思ったことは絶対内緒だ。
アリアの接客、本領発揮です。創も初めてながら接客頑張ってはいますが、アリアにはこの先、正攻法では勝てないでしょう。なんかこう、特別な笑顔とかできるようにしてみると変わるかもしれませんが、そのままの創でいいかなと思っています。




