表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
積み木の世界  作者: レンガ
~ 水の国 ~
29/189

思いを込めて

 アリアの説明はまだ続く


 「花瓶の色を見て、ハジメ」


 アリアは椅子から立ち上がり花瓶の横に立つ





 さっきの説明を受ければ分かる


 僕は四つの色の花瓶を見て言う



 「一段目が土の国、二段目が風の国、三段目が水の国、四段目が火の国」

 でしょ?と僕が言うとアリアは大きく頷いた



 「そう、花瓶の色はそれぞれの国の色を表しているわ」

 ここまでは分かったわね?と言ってくるアリアに同意する




 ・・・ここまで?それ以外にも何かあるのか




 僕はアリアの言葉に頭を抱える





 もしかして



 僕はある一つの可能性を口にした



 「うん、花瓶の色については分かったよ。それで、花瓶の並べ方とかにも意味があったりするのかな?」


 僕が聞くと、そうなのよ!と言って、アリアは僕に顔を近づけてくる



 「さっき大陸は昔ドーナツ状につながっていたって言ったでしょ?」





 そこからアリアの説明がかなり込み入ってきたので、僕が代わりに説明しておく 




 そのドーナツ状につながっていた大陸の真ん中には湖と巨木が一本、湖の中心にあったらしい


 今は四つの国が別れた衝撃なのか、その木は深く沈んでしまい、湖も海と一緒になってしまったという話だ



 「で、その木がね」


 アリアは沈んだ木を悲しく思っているのか、声のトーンが下がっている



 続く説明に僕は耳を傾ける






 『湖の中心に立っていたその木は、



 茶色の土壌の上にしっかり根を下ろし、


 鮮やかな緑色の葉を風が木の成長とともに作り出し、


 その葉先を水色の朝露が濡らして木全体に潤いを与え、


 命が燃えるかのような赤い花々を静かに咲かせていた』



 その木を実際にアリアは見たことがないらしい



 そういう風に書かれていたというアリアは、その記述がある本を部屋から持ってきてくれた




 ここからはその木のことについて書いてある本を中心に見ることになる





『この世界の中心にあった木と湖は、大陸の分断のときに消失した


 本当の原因は分からない


 だがこれだけははっきりと言える


 その木は四つの国を水難から守ってくれたのだ




 なぜそのことがわかるのか



 それは大陸の分断を見ていれば自ずとわかるだろう






 もともとドーナツ状につながっていた国々の大陸が分断されたのだ


 国と国の大陸の間には別れた分の隙間ができる


 その隙間を国々の外側を覆っていた海水が、隙間めがけて中に押し寄せてくる




 それは、海の中で握っていた拳を開くと水が入ってくることと同じ原理だ




 湖の水と海の水がぶつかり合い、国々は洪水と津波という自然の脅威にさらされるはずだった




 けれども洪水も津波でさえもこの世界では起こらなかった


 代わりに湖は海と一緒になり、木は海の底へと深く沈んだ





 きっと四つの国を湖と木が守ってくれたのだ


 そうに違いない』




 本の記述はそこで終わっていた








 パタンと音をたてその本を閉じた僕は持ってきてくれたアリアに返した



 アリアは目をふせながら本を見ている


 「・・・だからね、この花瓶のタワーはその木を真似ているの」



 本を持って立ち上がるアリアは僕の方を振り返った



 「深く海に沈んでしまった木を、湖を人々に忘れないでほしい。その思いを込めて」




 青の瞳で僕の顔をまっすぐ見てくるアリアは、とても悲しそうだった 






 目の前にあったとしても


 手の平ですくったとしても





 そこからなくなってしまった






 本の中で語られた木と湖の水のように








 今にも消えてしまいそうだった。




  

 本での出来事はこの異世界では実話です。その本の作者は不明、なのでその作者がその木を実際に見たのかどうか、誰も知ることはできません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ