残る意味
顔をうちつけたウエイターをよそに、僕たちはこのレストラン自慢の豪快な料理を食べ始める
海老の姿焼き・オニオンソース添えとポトフ、ほかほか出来立てのクルミパンなど
結構なボリュームのある食事となった
うーん、リド並だな
スプーンでポトフに入っている人参をすくいながらそう思う
アリアは僕の横でおいしい、おいしいと、言いながら壮絶な勢いで食べている
これでさっきのウエイターの件がなければ最高なのに
はあとため息をついた矢先だった
顔面をうったウエイターが僕の方に殴り掛かってくる
でも、僕はその時アリアの方しか見てなかった
バンッ
「~っ」
ウエイターが声にならない声をあげる
さっきの品の良い男性が僕たちの料理を運ぶのに使ったお盆で、男性の拳を受け止めていた
「調子に乗りすぎですね」
品の良い男性は、ウエイターの頭をお盆で一刀両断にし、気絶させた
その間に、彼は従業員を呼び、ウエイターを店の外に出すよう指示をする
驚いていた僕とアリアに彼は再度お辞儀をした
その後、僕たちが食べ終わるまでに他のお客さんに迷惑料として、飲み物のサービスを彼が一人で配っていた
最後に僕たちの方にやってきて、ドリンクのオーダーを聞いてきた
「お客様、お飲み物は如何なさいますか?」
伝票を片手に眼鏡をかけた品の良い男性はいう
「じゃあ、私はブルーベリージュース」
はいはーい、と手をあげて言うアリアに、彼はかしこまりました、と言う
お客様は?と聞かれたので、僕もアリアと同じものを頼む
同じくかしこまりました、という彼は僕たちの目の前のカウンターにメモを置いていった
「今日の閉店時間まで、お店にいてもらえませんか?」
とメモに書いてある
料理をもらったのもあったが、きちんと店に今日の騒動を謝りたいとアリアが言っていたので、二人で残ることにした
~ 閉店後 レストラン フルにて ~
カウンターに居座っていた僕たちにウエイターの一人が近づいてきた
案内をしてくれるというので、僕たちは店の奥へついていった
案内をしてくれたウエイターが、ドアを開く
「お待ちしておりました」
先ほどの品の良い男性が部屋で立ち上がって待っていた
「「どうも」」
僕たち二人は同時に挨拶をする
ソファの方にどうぞと言われたので、僕たちは遠慮なく座った
品の良い男性もその後座る
「この度はうちの従業員だったものがご迷惑をおかけしました」
大変申し訳ありません、とまた頭を下げるその人にアリアは慌てる
「こちらこそ、店の中で他のお客様が居るというのに我を忘れてしまい」
申し訳なかったです、とアリアがぺこりと頭を下げた
そんな、と言っている男性に僕は違和感を覚える
相手がここに残るように言ったのはアリアとは別の目的だろう
それならば、真意を見定めなければ
アリアにごめんと言い、僕は彼の方を見据えた
「すみません、支配人さん。あなたはなぜ僕たちにここに残るように言われたのですか?」
僕が投げかけた言葉に目を少し見開いたその人は、さっきの謝っているときの雰囲気とは異なっていた
「ええ、あなたたちにご相談したいことがあったのです。でも、その前に・・・」
自己紹介いたしませんか?と提案されたので、僕達は頷いた。
品の良い人の名前は次の回で明らかになります。お待ちください。




