場をおさめる
空になったお冷をカウンターの上に置いた
「頭は冷やせた?」
僕の方を見て固まっている二人に僕は言葉を投げかける
アリアは僕の方をしっかりみつめてきた
「うん!ハジメのおかげで」
冷静さを取り戻せたよ、と言うアリアは、恥ずかしそうに頭をかいていた
その様子に周りのお客たちも少しほっとしたようだった
えへへ、と言っているアリアはばつがわるそうだ
今度僕はウエイターの方を見やる
ウエイターは固まったままだった
あ、これ危ないかも・・・
アリアがウエイターの方を向いて、ウエイターの肩を叩く
「ごめん、言い過ぎたわ」
本当にごめん、というアリアの言葉にウエイターは気づかない
「・・・・」
何かウエイターが言っているのをアリアは聴こうとする
「何?聴こえないよ」
首をかしげているアリアにウエイターは目もくれず僕の方へやってきた
「・・・ごめん、で済むかよ!?」
僕の方に拳を向け、走ってくる
驚いたアリアが僕の名前を叫ぶ
周りのお客も息を呑んだ
やっぱりね
僕はウエイターの拳を片手で受けとめた
ウエイターは驚いている
そのウエイターは僕の顔の方しか視線が向いていなかったので
ついでにと足払いをかける
ふう、学校で体育の時間にした柔道が役に立ったな
視界の端で顔からずっこけたウエイターを僕は見なかったことにし、
アリアの手を引いてカウンターに座る
さっきお冷を持ってきたウエイターに僕は適当に頼み、追加のお冷を持ってきてくれるよう頼んだ
「ハジメ・・・」
僕の方を不安そうに見ながら、あの人はほっといていいの?と聞いてくる
「うん、いいんだよ」
空になったお冷をウエイターに渡しながら頷く
少しは頭を冷やしてもらわないと、ね
お冷が来るまでの間、僕たちは足払いをかけられ起き上がれないウエイターを眺めていた
人の良さそうな人が急いでお冷を持ってきた
「どうぞ、お客様。この度はうちの従業員がとんだご迷惑をおかけしました。
どうかお詫びをさせて下さい」
品の良い眼鏡をかけた茶色ががった赤い髪の男性が頭を下げ、持ってきていた料理を僕たちの目の前にそっと置く
「お詫びですので、お会計の必要はございません」
笑顔できれいなお辞儀をする男性は、どうやらここのレストランの責任者らしい
無駄のない、それでいて洗練された動きをしていた
顔面からこけたウエイターはやっと体を起こしていた
顔が真っ赤だな
フォークとナイフを持ちながら、ちらっと僕は見た
アリアが品の良い男性ににっこり笑顔で話しかけていた
「すみません、レストランにご迷惑をかけてしまって」
申し訳ないです、というアリアの目の前に男性は手を出す
「そんなことはございません」
とんでもない、と言う風に顔を横にふる男性はアリアの肩にタオルをかけた
「私どもの従業員の悪いところを正してくれたのです。むしろありがたい」
その男性の言うことに気をよくしたアリアは、タオルをありがとうと言った
遠慮なく濡れていた顔をアリアは拭う
それから、さーて食べるわよ!とカウンターの方を振り返り、僕と同じようにフォークとナイフを持ったアリアはいつも通りに元気だった
目の前の料理に僕たちは集中することにした。
顔からずっこけたウエイターは、どうしようもない人設定にしました。この後も、私の期待通りに動いてくれると思います。楽しみにしていて下さい。




