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積み木の世界  作者: レンガ
~ 火の国 ~
186/189

オルエの街

 火の国第三話です。少し急展開?だと思います。それではどうぞ。

 白く、そして黒い煙の中、他の国からは見ることのできなかった光景を、僕は見ている


 掘り起こされ、風によって砂煙が巻き立つ荒れた土地

 低いけれども、ドーナツ状の広がりを見せる黒い山

 その中にある工場とそれを中心とする一つの街

 

 そこに僕はいた

 隣りにいる、涙を流す者とともに


 けれども、その者が流した涙は肌をつたい、雫となって乾いた地面へと沁み込んでいく。

 土は、待っていたかのように跡形もなく、水を取り込んでしまうのだ

 何もかもが乾ききったこの国で、僕は彼に話しかける


「リド」


 二つ目が流れたのを見届けた僕の目の前で、彼は自分の腕で擦るように溢れるものを拭った

 彼から視線を外し、煙を産み出す煙突を見据えると、僕は乾きの中で口を動かす


「良かったね」


僕の言葉もこの国に吹く乾いた風が欲するように、奪っていく

必要な部分だけを、彼に残して


 拭い終え、顔をあげた彼の瞳は輝いていた


「ああ」


 戻ってきたという、思いの光を抱えて……



(と、いうような語り口調で、リドの涙を華麗に演出していたはずだったのに)

 

 僕はズキズキと痛む頭と頬を押さえ立ち上がる。黒い地面はゴロゴロと動き、安定しない。下を見てみると、不揃いな石炭と鉄鉱石でつくられた、人工的な床の上にいることが判明した


 ここは、オルエの街。奥、国のど真ん中にある工場を中心とする街のみを見ていた愚か者が落ちる、黒のみの街。

 辺りは黒。人も石炭や鉄鉱石を扱っているせいなのか真っ黒。そして、そこに住む人の心も黒く淀んでいるように見えた。

 中心にある街の人からは見離されたこのオルエの街の住人は、さまざまな意味で黒かった。

 それこそ、僕のブラックが可愛らしく思えるぐらいに。 

  

「どうしてこんなことに!?」


 頭を抱え込む僕の疑問と叫びに答える人はなく、黒い心でもって、僕に近づいてきた。僕の持っている黒いリュックを盗ろうと。


 そんな僕が盗みの危機にさらされていることに全く気づいていない(!)ということは、次の話まで置いておいて、そこまでに至る経緯を皆様には話していないので、話しておこう

 時は、先ほどの華麗な涙演出(監督は僕)まで戻ることになる




 ―― 自画自賛 華麗なる涙の演出 とでも言っておこうか? ――



 僕がそんな風にしてリドの涙を表現していると、僕たちの後ろの方にまだある煙から解放されようと彼女たちの張り上げる声がした


「ハジメとマスター!!どこにいるの?」

「ハジメく~ん!生きていないと困るよホントに~」


 その心配そうな声とは裏腹に、ドタバタと大地を蹴り上げる二人分の足音が耳に入ってくる


(うーん)


 僕が腕を組んで、声が聞こえた方を向いている間に、リドは涙を引っ込めたらしく、僕が向いた方に近づいてきて、大声で叫ぶ


「おーい、二人ともここだ。こっちの方は煙がないからな」


 リドの声が聞こえたのだろう彼女たちは、煙の中から蹴りだす、いや、飛び出すようにして僕たちを見つけていた


「マスター発見!」

「ハジメくん発見!!」


 二人とも、自分の大きすぎるリュックがまるでないかのようにして走るその様は、間違ってもご主人を見つけ、走り寄ってくる小型犬の軽く、愛らしい走り同様と思うことなかれ


「がっ!?」

「うう!!」


 僕と僕の隣にいたリドのあげる悲鳴が、二人に抱き着かれた勢いの怖さを知ることになる


 その後は、二人同時に気絶。その気絶した二人を容赦なく起こそうと、二人が頬を思いっきり引っぱたいたり、首を神社の鈴のように動かしたりしたなんてことは、きっとないことを願いたかった


 そして、女性陣二人の熱烈な目覚ましにより、命からがら僕たちの意識は、現実へと浮上することになる


 二人は謝っていたが、悪気はない。いや、悪気がないのはいつも分かっているのだけれども、それでも彼女たちの力は余りあるものだった


 その二人の謝罪を受け入れつつ、船の中で話し合ったことを思い出し、僕たちは当初の目的通り、ポルカさんのお父さん探しに行くことにした


「人を探すなら、どこがいいかな?」


 エメラルド色の髪の持ち主で、無駄に力のある女性Aが首をひねっていると、探し物をしている人、無駄に力のある女性Pが聳え立つ工場を指していた


「それはもちろん。人の多そうなあの変な煙突の所でしょ?」


 当然のように言う彼女に僕は頷いていた


「まあ確かに、ほとんどが見知らぬ土地で、見知らぬ誰かを探すのであれば、まずは人に聞くしかないよね?」


 僕の頷きに「でしょ~?」というポルカさんの声が同意した

 その彼女の声と同じように僕を見て頷くのは、先ほどの彼だった


「ああ。この国、パリエスの一の街で、国が認める唯一の正式な街だ。癖のない情報が一番集まりやすいと思うぞ」


 そう言ったリドに、彼女たちが抱きつくのを心の目で見ていた僕は、彼の言葉に疑問を感じていた


(正式な街ということは、正式でない街があるということ。そして、癖のない情報が集まる所ということは、癖のある情報を扱うのが、その一の街以外の街なのか?そもそも、癖のない情報とある情報の違いって?……、まあそこら辺はおいおいにして、とりあえず目指せばいいのか)


 僕は煙はく工場を見上げていた。目的地が決まったからという訳ではない。吸っていい思いのしない煙を吐き続けているあれが、正直、好きになれそうになく、睨みつけたい気分だったからだ


(公害で苦しむ人たちはこんな感じだったのかな)


 きれいになった空気のもとで暮らしたことしかないただの高校生は、そんなことを思っていた

 その煙はく者から目を逸らすと、手と声を高らかにあげ、僕たちに近づいてくる彼女たちが目に入った


「さあ、ハジメも行くよ!!」


 アリアの声に頷くと、僕たちは力強く走り出していた。あの工場のある街を目指して



 ―― 黒の山 ――


 乾いた空気と土煙の舞うこの荒れた土地が終わり、黒い山々に差し掛かった時だった

 僕たちは、黒い不安定な山の上を、手と足を使い登っていた。斜面は全く急ではなく、非力な僕でも余裕で登ることができていた。

 けれども、遠くから見た時とは異なり、実際は日本の女性の平均身長の人三人が、縦に連なったぐらいの高さだった


 黒い石炭と鉄鉱石でつくられた山々は、先ほどの荒れた土地から掘り上げられたものだということをリドに聞いた僕たちは、それを素手でつかんであがる


(手が真っ黒だ)


 そう思って僕が頂上にある鉄鉱石に手を置いた時だった。誰かに手を引っ張られ、僕の身体は山の外から中へ、谷の方へと引っ張られた


「は!?」


 何が起きたか分からない僕は、黒い谷の底へと道連れにしようとしているその手を引っぺがそうと抵抗する。そ問答無用で引っ張っていくそれは、手がある時点で人間だと分かるのだが、それ以外は人間と呼べるものなのかどうかさえ、現実を受け入れられていない僕には分からなかった

 尚も抵抗し続ける僕に、その手の持ち主は僕に止めを刺す


「静かにおし!」


 そう、あの時は女性の声が聞こえた後、ああ人だったんだという思いが浮かんだ。その次に、頭に何か蹴りのようなものを食らって、再び気絶した後、僕は目を覚ます

 黒く、暗く、そして、淀んでいるこの谷底で、頭を抱える僕はまた一人になってしまっていた

 その僕の前に黒ずんだ看板が、僕のいる所を示してくれていた


 『オルエの街』


 と。

 

 こんばんは。今日も投稿できてうれしいです。しかも!今日は余裕を持って投稿できそうなので、私は満足です。

 その代わり、前回に比べたら明らかに文字数が少ないので、それは許してくださいね。

 

 あ、皆さんにお知らせがあります。もう活動報告を読まれている方はご存知かとは思いますが、現在、日曜の18時までに書き直し投稿を一話しております。今日も勿論、書き直し投稿しておりますので、是非読んで行ってください。「海上レストラン 宿り木」です。

 活動報告に、登場人物を書き直したということも書いてあると思うので、そちらをご参考に、どこまで書き直したのかということを確認していただけると嬉しいですね。

 皆さんも、私も楽しめる、そんなファンタジーをソウゾウできたらなと思います。

 では、また来週会いましょう。おやすみなさい。よい夢を。

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