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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
182/189

ありったけの声

 包み紙を開けた僕は、水色の石が埋め込まれたアクセサリー(なのだろうか?)が入っているのが分かった


 「これは一体?」


 「これはね、イヤーカフ」


 僕が不思議そうにしていると、アリアは僕の手からアクセサリーを手に取ってみせた


 「こうやって耳につけておく、この国のお守りのようなものなんだって」


 イヤーカフ自体は水の国でもあるよ、という彼女は、自身の髪をかきあげ、僕の方に耳を見せてきた


 そこには黒色の全く同じ形をしたものがつけられていた


 「お揃い!!」



 そう言って飛び込んだ彼女は、止める間もなく水しぶきを上げ海の中へと消えて行った


 









 アリアが海へと泳ぎに行った後、僕は店内へと戻った


 店内にいた人々は少しずつ目を覚ましているところだった



 僕は厨房にいたはずのリドが起きているかを確認しに行った


 すると、彼は煮込み料理の味見をしているところだった



 「お、ハジメいいところに。これをお客さんに運んでくれ」

 

 朝飯食べてから帰ってもらえってアリアに言われてたからな



 そう言って椀によそうリドの目の下に隈は無かった


 

 ぐっすり寝たうえでのこの量の煮込み料理の仕込みもこなす


 さすがリド、料理人


 

 僕は受け取ったお椀をお盆に移し、目の覚めたお客にリド特製、食べすぎた日にピッタリの朝食を届けて行った



 僕が黙々とお客に料理を運んでいた時だった


 

 店内のドアが開かれ、声が響く


 「朝ですよー!!お客様、起きてくださーい!!」


 店内中に響く声に、お客は起きざるを得なかった



 

 泳ぎ終わったアリアも加わり、起きたお客に朝食を配っていく


 最後の一人に朝食が行き渡り、僕がほっとしたのもつかの間、先に食べ追わったお客がお店から出て行くので、それを見送っていく


 「「ありがとうございました!!」」


 二人の声が重なる中、徐々にレストランから出て行くお客に、店内が静かになっていくのを感じた


 

 食べ終わった後の食器さげと見送りを繰り返していると、いつの間にか最後のお客様になっていたのに気付いた


 立ち上がったお客が僕たちに近づいてきた


 「とっても楽しい時間だったよ。また生きているうちに来たいもんだ。ありがとう」


 そう言って帰っていくお客さんは、本当に満足したという笑みをたたえていた



 「「ありがとうございました!!」」


 僕とアリアはドアが閉まりきるまで頭を下げ続けた



 チリンチリンと響くベルの音が見送るべき人が誰もいなくなったことを僕たちに知らせてくれる


 下げていた頭を上げ、僕とアリアは振り返った



 その時、何もかもが終わるのを見計らったかのように出てきたのは、昨日の昼までいっしょだったはずの面々だった



 「美味しいごはんでした」


 「そうだな、ウィズ。いつもうまいけど、今日は特別うまかったな」


 酒も進んだぞというデニーさんに、ウィズさんはやめなさいと言っていた


   

 「確かに、リドさんの料理は格別だな」


 「当然ですわ。このレストランの料理を切り盛りしているくらいですから、そのぐらいでなければ困りますわ」


 マッドの言葉を受けたアーシィが、何を当然のことを言っているのかしら?というように彼をにらんでいると、それを見かねたポルカさんが間に入ってきた



 「まあまあ、アーシィちゃん。おいしい料理だったんだから、そのぐらいで。まだ、旦那には生きていてほしいし、今日のところはあたしに免じて」


 ね?というポルカさんに、アーシィは渋々頷く


 そんな三人を見ていたアリアに肩を掴まれた



 「はい!じゃあ、出発する準備しようか!」

 

 僕とリド、アリア、そして、ポルカさんは火の国に向けて準備を進めることにした


 土の国に一時的に残るタイニーと土の国から出る気のないウィズさんとデニーさん、アーシィとマッドは店のドアから出ていた



 まだ散らかっていたところを片づけ、僕たちは火の国に行く準備を終える


 その時、たまたま近くにいたアリアに訊ねた


 「ねえ、アリア。火の国に今日向かうのはどうやって決めたの?」


 「それはね」


 内緒!という彼女は、本当に僕に理由を聞いてほしくないようだった



 どうして内緒にするのか分からないけれど、きっと彼女には彼女なりの考えがあってのことだろう


 教えてくれる気になったら聞こうかな



 そう思った僕は、店のドアを開けた











 開け放ったドアを閉め、僕は土の国にかけていた橋を片づける


 そして、積み木を手に取り、甲板の方を陸の方へ向ける



 それが終わったと同時に皆が甲板に出てきた



 「さて、準備はいいかな?」


 僕の掛け声の後、三つの声が聞こえた   

 

 「気を付けてな!」


 「迷子になってはいけませんわよ!!」


 マッドとアーシィの声に甲板に出た四人は手を振る



 陸の方からひときわ大きな声が聞こえてきた 


 「ハジメ兄!ぼくを迎えにきてね!!」


 絶対だよ?という声は少し震えていた 

 

 「タイニー、必ず迎えに行くよ!!」 


 僕はタイニーに届くようにありったけの声を込めた



 「じゃあ、火の国に向けて出発!」

 

 アリアの掛け声の後、漂っているだけだった船は水面を滑るように動き出した



 まだ見ぬ火の国へ向けて、僕たちは走り出した。



 

 ついに、土の国編、完結です。いや、長かったというか、長くし過ぎたなと思いました。


 数えてみたら、土の国だけで91話も使っていたことに気づきました。


 すみません、まだまだ続きますが、お付き合いくださいね。


 今週はこの辺で、失礼します。

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