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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
181/189

贈り物

 「あ!創お兄ちゃん!!」


 そう元気に言う声が頭に響いた後、女の子が水面から飛び出して僕の方に抱き着いてきた



 おいおい、ちょっと待て!!


 なんだ今のは!?


 僕は抱きついてきた女の子をすっぽりと掴んでから、頭の中でツッコんでいた



 ふつう、水の中で口を開いて話すなんてできないだろう!?人間なら



 そのことを置いておいてもだ

 

 今の水中から僕の身体に抱き着くまでの間に、女の子がして見せたことは、基本的な人間の身体能力ではすることができない動きをしていた



 スクリュードライバーのように身体を水中でねじらせ、女の子は僕の方へと飛び込んできたのだった


 「どこにいってたの、お兄ちゃん?」


 そう言って無邪気に笑う女の子は、何事もなかったように僕が消えていた理由を問うてきた



 どうやらこの女の子にとっては、スクリュードライバーのような動きができることは当たり前のことらしい


 それが分かった僕は、心の中を落ち着かせ、抱きついてきた女の子の背を撫でた



 「ちょっと、こことは違うところに行っていったんだよ」


 「へえ。私も連れて行ってほしかったな」



 そう言う女の子は寂しそうな声で僕に話しかけてきた


 寂しがり屋なのか、僕の首の後ろに回した手を離すまいと、ギュッと締め付けてくるのが分かった僕は女の子を抱いたまま立ち上がった


 「ごめんね。お兄ちゃんにはどうすることもできないよ」


 僕が言う言葉に女の子はそっか、と答えるだけだった


 濡れていたはずの女の子の服はすっかり乾いた頃、僕はあの時しそびれた質問をした


 「そう言えば、名前を聞いてなかったね」


 何て言うの?


 僕の首にかじりついていた女の子が、僕の顔を見るように顔をあげてきたので、しっかりと抱えてあげた



 「わたしの名前はね、」


 そう区切られて言われた名前に僕は自分の耳を疑った



 まさか、この女の子があの人と同じだなんて、思いもしなかった


 けれど、僕がいつも見ている彼女の瞳の色は、この女の子のような透き通った水の色ではなかった



 じゃあ、全くの別人なのか


 僕は確信できずにいた



 そんな僕の様子に気づいた女の子は僕のほっぺたをつついてきた


 「お兄ちゃん、どうしたの?」


 心配する女の子に僕は微笑んだ


 

 「ううん、なんでもないよ」


 そう言って僕は女の子を抱え上げた



 「へんなの~」


 女の子は僕の手からするりと抜けると、乾いた地面に着地して見せた


 「お兄ちゃん、今から宝探ししようよ!!」


 そう言って女の子は僕の服の裾を引っ張る


 「エルファおいちゃんが私に二つの宝物をこの湖の中に置いていってくれたんだ」


 女の子は湖に近づく


 「どっちも同じ形で同じものなんだけれど、見る人によっては色が変わるんだって!」


 ね?面白いでしょ、お兄ちゃん


 そう言う女の子の言葉に、僕は新たな疑問を浮かばせていた


 

 三歳児くらいに見えるこの子は、三歳児ではあり得ない程僕と会話できている


 それに驚いていたが、女の子が口走ったエルファおいちゃんに見覚えがあったことを僕は思い出した


 確か、水の国の書状に・・・



 そう僕が思っていた時だった


 視界がまた歪み始めた


 僕がしゃがみ込んだのを見た女の子が僕の方に駆けよってくる


 女の子が何か言っているのが分かるが、耳は機能していないので聴こえていなかった



 また、来るから


 それまで待っていて



 僕はそう言った後、女の子の前で目を閉じた












 目を開ける


 自室の天井にため息をつき、起き上がる




 そうだ


 水の国の書状を見ないと


 僕は予め持ってきていたリュックから書状の入った筒を取り出す


 水色の筒の蓋を開け、僕は確認する



 『水の国の加護者、エルファ・M・クヴァンは、船上レストラン 宿り木の逆移動を許可する』



 「やっぱり・・・」


 僕は書状に書かれていた人物の名前を見つめる



 女の子が言っていたエルファおいちゃん


 それはきっとこの人のことだ



 そう思った僕は筒の中に書状を入れなおした



 女の子は一体、このエルファさんとどういう関係なのだろう



 僕は不思議に思いながら、レストランの店内に出るために身支度をしていった











 あらかた片づけ終わった店内を見た私は背伸びをする


 「やっと終わった!!」


 私はすっかりきれいになったテーブルを見て、頷いていた



 これなら、泳ぎに行ってもいいよね?


 そう思って私は店内のドアを開けた



 寝ている人たちを起こさないように、静かに閉め、私は甲板へと向かう


 海から吹く風を感じながら、甲板に靴を置き、準備運動をする



 その時、お土産としてハジメに買ったものが、準備運動のはずみでポケットから出てきた



 そう言えば、忙しくて結局渡せていないや


 私がそれをテーブルに置いた時だった



 「アリア、やっぱりここにいたんだね」


 少し息をきらした彼の黒い瞳は、私を深く吸い込みそうだった



 「おはよう、ハジメ!!」


 私はテーブルに置こうとしたものを手に取り、ハジメの方に近づいた



 「ハジメ、あげる」


 本当は昨日のうちに渡したかったんだけど、プレゼントだよ!



 そう言って渡されるものを僕は受け取る



 「あ、ありがとう」



 僕は貰ったものを彼女の前であけて見せた。



       

 女の子の動きがあり得ないことを想像してもらえると嬉しいですね。


 後1話、投稿します!

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