たくらみの続き
私は目の前にいるお客様とハジメを交互に見る
ハジメにはまだ言ってなかったことだから驚くかもしれないけど、まあいいか
よし!と勝手に決めた私は笑顔と一緒にお客様の問いに答える
「申し訳ないですが、レストラン宿り木の営業は、土の国では本日限りです。私たちには行かなくてはならない所がありまして」
「ええ!?明日はないの?今度はどこで営業するつもりなの?」
「火の国です!!」
そう言って笑う私の顔を見るお客様はもちろん、そのお客様の横にいたハジメも呆気に取られたように私の方を見ていた
僕はアリアの言った言葉が信じられなかった
今、彼女が言ったことが本当なら、明日には火の国に向け出発ということになる
待て
いくらなんでも急すぎだろ!?
僕は横にいるお客よりも焦っていた
確かに、土の加護者から約束の書状をもらったから土の国での目的は果たしたのだけれど、
ポルカさんには明日火の国に向けて出発なんて言っていないし、アーシィをはじめ、土の国でお世話になった人にはお礼も言っていない
なにより、出国する準備が整っていないのでは?
僕は残念そうに帰っていくお客さんを見送った後、アリアに詰め寄った
「アリア!!」
「うん?」
僕がさっき疑問に思ったことをぶつけるために
「明日から火の国に行くってどういうこと!?」
きっと聞かれるだろうなと思っていたことなので私は驚かなかったけれど、かなりハジメは焦っていた
何も知らないからこその彼の焦りように、私は心の中で可愛いと呟く
焦っているハジメを落ち着かせようと、私は彼の質問に順序よく答えていった
「その質問に答えるわ、ハジメ」
とびきりの笑顔で
アリアからの話だと、彼女のたくらみはまだまだ続いていたようだった
まず、ポルカさんの件だが、今日の朝渡された手紙には僕の誕生日のこと以外に、火の国に行くことについても書かれていたようだ
なるほど
だから、ポルカさんは準備をしに一度家へ戻ったわけだったんだな
僕が納得した様子になったのにほっとしたアリアは、その後も答えていってくれた
お世話になった土の国の人たちには、今、このレストランに集まってもらったので、ここでお礼を言えばいいと言うことだ
「集まって食事してもらって、私たちの感謝の心を示すの。いい考えでしょ?」
嬉しそうな彼女に僕は頷く
「じゃあ、最後に!出航する準備だけど」
そう言って彼女は店内に飾られている時計を指さした
「ハジメにポルカさんを出かけてから2時間後に連れてきてほしいって頼んだでしょ?」
「うん」
「その間に必要なものは準備したのよ」
アリアの言葉に僕は本当の意味で彼女のたくらみを理解した
2時間後と言ったのはそのためだったのだ
見抜けなかったことに僕は悔しさを覚えたが、同時に疑問が浮かんだ
「2時間で買い物を済ますなんて、できるの?」
「うん!!できるようにしておいた、のよ」
「できるようにしておいた?」
「そう!」
彼女はアーシィと書類を片づけている最中に、彼女の欲しいものがどこに売られているのか、尋ねて言ったのだという
あの、山積みの資料の整理の手伝いの傍ら、彼女はこの土の国でほしいものが手に入るように下準備していたという事実に、僕はあいた口がふさがらなかった
「ビックリした?」
いたずらが成功した小学生のような顔をしている彼女に僕は素直に首を縦に振る
「そっか!じゃあ、改めて、ドッキリ二段階目、大成功!!」
彼女の明るい声が響いた後、彼女の周りにいたお客は何だかよく分からないけれど、とりあえずめでたいことがあったのかな、といったような感じで拍手が送られた
その拍手の後、店内は徐々に静けさを取り戻していった
眠りに身体を委ねる人と家路につくために店を出る人
僕も凄く眠たかった
まぶたを擦りながら食器の無くなったテーブルを拭いていると、リドからもう寝ていいぞと言われたので、僕はレストランにある自室に向かう
もう限界だった
ドアを開け、僕はベッドに身を沈めた
~ あの夢の中 ~
白い意識の幕から抜け出し、僕は目を開ける
そこに広がっていたのはお決まりの景色だった
青く澄み渡った湖の上にたたずむ一本の木に僕は以前と同じように身体を預けていた
僕はそこから体を起こす
以前の夢で出てきた女の子はどこに行ったのだろう
そう思いながら木の前に立ち、周りを見渡す
僕の見る限りでは、女の子は確認できなかった
おかしいな
僕はこの世界でもう一度会えると思っていたんだけれど
くまなく辺りを見回していると、湖の水面に小さな泡がポコポコと出ているのを見つけた
「まさか・・・」
僕はそう思ってその水面に近づき、真上から水の中を見下ろす
するとそこには、湖の中で泳ぐ女の子の姿があった
僕は驚きを隠せなかった
何故かって?
三歳児が水の中で泳いでいることにも驚いているんだけれど、それ以外にも驚くべきことがあった
それは、僕に気づいた女の子が僕の頭に直接語りかけてくるように、口を動かして僕を水中から見上げていたからだった。
創が終わったと思っていた彼女のたくらみにはまだ続きがあった、という感じで書きたかったので、少し満足している私がいます。
とりあえず、今日のお約束分である2話は終わりましたが、まだ書けそうなので書きますね。
では。




