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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
177/189

クラッカー

 力の抜けた僕がドアの前で倒れたままでいると、お店の中にいた料理人が上からのぞいてきた


 「ハジメ、誕生日おめでとうな」


 「・・・ありがとう」


 僕は諦めたようにため息をつきながら、身を起こし立ち上がった


 覗き込んできていた料理人、リドに僕は問いかける


 「もしかして、リドも・・・」


 「ああ、グルだよ」


 悪気など全くないというように手を広げ言い切るリドを前に、僕はまたため息をついていた


 

 リドがこれなら、他の人も・・・



 僕は背後にある橋をゆっくり渡ってきている人たちに声をかけた


 「ねえ、アーシィにマッド、それにウィズさん、デニーさん。もしかして全員・・・」


 グル?と聞いた僕の問いを聞いた人がそれぞれ反応を示していた


 「そうですわ。ハジメ、あなたに気づかれないようにするのはそれはもう、苦労の連続・・・」


 「苦労、か?」


 「そうでした?デニー」


 「さあ?誕生日自体が初耳だけど?」


 苦労したと首をふるアーシィにマッドとウィズさんは不思議がっていた


 その横で、一人置いてけぼりにされているデニーさんは、本当に知らされていなかったようだ


 つまり、僕はデニーさんと同じ扱いだったことになる



 デニーさんと一緒だなんて・・・、不覚!!



 隠されていたことを見抜けなかった自分自身を呪いながら、僕はレストランにいるアリアとタイニーに視線を戻した


 二人はニコニコしながら、やったね!うまくいったわね!と言い合い、僕を驚かせたことを口々に褒め合っていた


 

 嬉しいんだけれども、なんだか悔しいや・・・


 何とも言えない感情を僕は二人に視線でぶつけていた



 そんな僕を見かねた料理人が肩を叩いてきた


 「まあ、何はともあれだ。とりあえず、皆をレストランの中に入れようや」


 リドのもっともな言葉に反論できない僕は、しぶしぶ嬉しそうな皆(デニーさん以外が)をレストランに招き入れた










 僕が背中からダイブしたスポンジはいつの間にか跡形もなく消え、全員が入ったころを見計らってアリアが後ろ手に何か取り出した



 パンッ!


 弾ける音と色とりどりの紙吹雪、火薬の煙、そして、勢いよく飛び出す長い髪紐、日本でパーティのときによく使われるクラッカーの一種だった


 ただ、日本と違うところがこのクラッカーにはあった


 日本では火薬の嫌な臭いが鼻についていたが、ここのそれは弾けた途端、爽やかな果物の香りがした


 僕はそのことで十分驚いていたが、次に皆にそろって言われたことでもっと驚かされることになった



 「「「「「「「ハジメ!!誕生日おめでとう!!」」」」」」」



 盛大にならされたクラッカーの音と香りに気が向いていた僕は驚いていた


 皆の声がレストラン中に響き渡り、僕の耳に入ってくる


 

 僕はただ驚くしかなかった


 なぜなら、誕生日おめでとうなんて言葉、こんな大勢の人に言われたことが無かったからだ


 家族からはおめでとうと言われることはあったが、いろんな人から誕生日だからと言って祝われることはなかった


 僕が誕生日を周りに教えなかったということもある


 誕生日みたいなイベント事は極力避けたい、そう思っていた




 でも、今の僕はそうは思わない


 皆に祝われた後、僕ははにかみながら、


 「・・・ありがとう」


 と皆に小さく言った


 

 きっと顔がゆでだこ状態だろう、顔が燃えるように熱かった


 僕の様子をからかうかのように、アリアは僕の目線に合わせてきた


 「あ、ハジメ顔真っ赤!」

 

 あはは、と言うアリアの言葉に反応した皆が次々と僕を覗き込んでくるので、僕は顔を背ける


 それでも尚見てくるので、僕はレストランの端に移動した



 ついてこないだろうと思っていたが、甘かった



 「ハ~ジメ兄!!お顔見せて」


 「・・・嫌だ」


 「ええ!?なんでー?」


 「なんででも!」



 僕はタイニーの追跡から逃れるようにレストランをまわり始めた


 タイニーは諦めずに僕の顔を見ようとしてくる




 もうやめてくれ・・・。恥ずかしくて顔から火が出そうだから!



 僕がギュッと目を瞑ったとき、後ろからタイニーの軽い悲鳴が聞こえてきた


 振り返ってみると、首元を掴まれたタイニーがポルカさんによって宙吊りにされているのが見えた



 「ふふ。顔を赤らめたハジメくんを追いかけるタイニーちゃん・・・」


 なんて愛らしいの!?と言ってそのまま抱え上げるポルカさんから、ピンクのハートが出ているのはきっと気のせいだ


 僕はそう決め込んだ



 


 抱きかかえられたタイニーに皆の視線が言っている中、マイペースな料理人は僕たちに椅子に座るよう言ってきた



 「そろそろお昼だしな、昼飯食うだろう?」


 そう言ったリドの言葉で、僕の誕生日パーティが始まった










 

 料理は当たり前のように美味しく、僕も頬いっぱい詰め込むほどリドの料理を堪能していた


 僕の好物であるクルミパンを覚えていたリドは、大量の出来立てクルミパンの山を僕の前に出してきた



 「そら、たんと食いな」


 香ばしい香りのクルミパンを前に僕は頷く前に手を出していた


 両手にあるクルミパンをモギュモギュと頬張りながら、僕はクルミパンを食べることだけに専念した。


    

 お久しぶりです。活動報告でも書いていたのですが、それを見ていない方はすみません。5日間ほどお休みをいただいておりました。


 現実の方で、することが多すぎててんてこまい状態の私は、小説を投稿することができないと想い、急遽、活動報告に投稿できないと書きました。


 今日、とりあえず1話投稿できて本当に良かったです。

久しぶりなので楽しんでいただけるといいのですが・・・。



 さて、いつも読んで下さる皆様にお知らせです。残念ながら、現実でするべきことが多く、毎日投稿できそうにありません。


 そこで、しばらくは週に1話分以上で投稿していきたいと思います。毎日の投稿を楽しまれていた方、大変申し訳ありません。現実のことが済み次第、毎日投稿に切り替えますので、それまではご容赦下さい。


 投稿曜日は毎週日曜にしたいと思います。今後とも、『積み木の世界』をよろしくお願いします。


 では、今日はこれで失礼します。

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