謎の増殖
僕から受け取った腕輪をはめ、アーシィは僕にお礼を言ってくれた
「ありがとうございますわ、ハジメ。私、今日ハジメと一緒に出掛けたいと思っておりましたの。この後、ご一緒させていただいても?」
そう言うアーシィの後に、他の三人も僕に同じように僕に話しかけてきた
「オレもハジメと出かけたい気分だな」
「私とデニーもです」
「あれ~、そうだっけ?」
不思議そうにしているデニーさんに、ウィズさんがそう言う気分でしょ!?と小突いているのが見えた
何か全員の様子がおかしいけれど、まあいいか
僕はアーシィと同じようにこの場にいた全員に一緒に出掛けようと伝えた
部屋のドアを閉め、廊下に出る
後ろには、アーシィとマッド、ウィズさん、デニーさんがぞろぞろと僕の後についてきていた
一体何なんだこれは
?マークを浮かべながらポルカさんがいるはずの織り籠の門の前に向かった
時間きっかりだったのか、織り籠の門の前にはポルカさんが待っていた
列をなして出てくる僕に気づいた彼女は、僕の方に手を振っていた
「おーい!もしかして案内人はハジメくんなの?」
ポルカさんは腰に手をあて、僕を見下ろしていた
そして、僕の後ろに続いている人を見て不思議そうに首を傾げていた
「それに、アーシィに旦那、ウィズさんに、後・・・誰だっけ?」
ウィズさんの横にいるデニーさんのことを知らなかったポルカさんに僕はデニーさんの説明を簡単にした
「へえ、なるほど!ウィズさんは既婚者だったわけか」
ポンと手を打つ彼女の視線を感じたウィズさんは、デニーさんの陰に隠れるようにしていた
その様子を見てにやけているポルカさんの目の前に僕は手紙を突き出していた
「これ、アリアから渡してって頼まれたんだ」
「アリアちゃんからの愛のメモリー!?読む!」
ポルカさんはその場で手紙の封を開けた
他人にあてた手紙は見てはいけないよね?
そう思った僕は手紙から視線を逸らしていた
しばらくして、手紙を読み終わったのか、ポルカさんが手紙を元に戻す音が耳に入った
それを聞いた僕は、ポルカさんの方を振り返った
「うーん・・・」
ポルカさんは唸り声を上げ、悩んでいた
何を悩んでいるんだろう
さっきの手紙、何か関係あるのかな
僕はポルカさんの言葉を待ちながらそう思っていた
やがて、ポルカさんが僕を見てから頭を掻きだしたのが僕の目にに映った
「ごめん、ハジメくん。一回、家に戻っていいかな?アリアちゃんに頼まれていたものがあったの忘れてたんだ」
えへへと言いながら頭を掻くポルカさんに僕は頷いていた
「いいですよ。アリアから後一時間半後くらいにレストランに連れて行くよう言われてますから」
僕の言葉を聞いたポルカさんは少し困ったように言っていた
「私の家までの往復する時間は一時間ちょっと、その間ここでずっと待たせておくのもなんだから、あたしの店までは一緒に行かない?」
その提案は今の僕にとってありがたいものだった
どうやってレストランに案内するまでの間、時間を潰せばいいのか悩んでいた僕は、ポルカさんの提案を受け入れた
「じゃあ僕たち市場の通りに行くけど、」
皆も来るの?という僕の問いかけに後ろにちょっとした列を作っている人たちはほぼ同じタイミングで頷いていた
「もちろん、いきますわ」
「ああ」
「行こうか~」
「そうですね」
僕の後ろにいる人たちは、飽きもせず僕の後を追いだした
昼間の市場の通りは分かりやすく、すぐにポルカさんのお店までたどり着いていた
ポルカさんは僕たちの方を振り返った
「じゃあ、ちょっと家まで行ってくるから、ここら辺の店を適当に回っていてね」
彼女から指さされたお店を見ていた僕たちが彼女の姿をもう一度確認しようとした時、すでに彼女の姿はなかった
「相変わらず、足速いな」
ポツリと漏らした僕の声が活気のある市場の通りに転がった
ポルカさんに言われた通り、僕たちは一時間かけて、ポルカさんの店の周辺にある店をしらみつぶしに見ていた
その間に、当然のように一緒についてきた四人の様子も僕が観察していると、遠くの方から甲高い声が聞こえてきた
「ハジメ兄!!」
はっきりと聞き取れた方に体を向けた時には突進してきていた
僕よりも小柄な存在で甲高い声
言わなくても分かるだろう、子犬のタイニーだった
「どーん!!」
そんな掛け声とともに抱きついてきたタイニーを僕は受け止めていた
「えへへ、驚いた?」
嬉しそうなタイニーの顔がよく見えるようにしゃがみ込ん打撲は彼の頭を撫でていた
そんな僕の耳にまた聞いたことのある声が入る
一時間ほど前に家へと帰っていたはずのポルカさんだった
「あれ?タイニーちゃんもいるの?これだとほとんど全員集合じゃない?」
そう言うポルカさんに僕は苦笑いしながら、そうですねと答えるしかなかった
本当に今日は一体どうなっているんだろうか
向かう先々で僕と一緒に行動しようとする人が増えていくのだけれど
僕は抱きついてきたタイニーの頭をひたすら撫でていた。
アリアのたくらみ、これハジメ以外の全員が加担しております。いや、デニーさんは成り行きです。




