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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
172/189

白状

 私はベッドの上で昨日のうちにアーシィから借りたものを見ていた



 琥珀色の輝きを放つそれは私をあの場所へと必ず連れて行ってくれるものだった


 それを腕にはめ、立ち上がる



 よ~し!準備しないとね


 ハジメにも内緒にしているから、きっと驚くだろうな



 意気込んだ私はドアを勢いよく開けた、つもりだった


 

 そうやって意気込んでいた私はドアの前に人がいるなんて微塵も思わなかったわけで



 ゴッ、という音の後、ドアがそれ以上開かなくなったのを見て、慌てて廊下に出た


 すると、ドアの前でうずくまって額を押さえているのは、黒髪の少年だった


 「~っ!?」


 顔をしかめているハジメに駆け寄り私は声をかける


 「ハ、ハジメ、大丈夫!?」


 ごめんね!!、という私の声に反応したハジメは額を押さえながらゆっくりと立ち上がった


 「・・・なんとか。少しヒリヒリするけど大丈夫だよ」


 そう言ったハジメは涙目になりながら私を見上げた


 赤くなった額を見た私は慌てながらドアを勢いよく開けてしまったことを謝った



 「本当にごめんね?何か私にできることがあったら言って・・・」


 あ、食堂から氷もらって来た方がいいよね?という私は、ハジメを置いてその場から食堂へと向かおうとした


 けれど、私の手はハジメに絡め取られてしまい、行くことができなかった

 

 振り返った私にハジメは静かに言った


 「氷よりも僕のお願い、聞いてくれる?」


 「お願い?」


 ハジメは私の握った手の方を引き寄せていた


 「わっ!?」


 バランスを崩した私はハジメの方に倒れていく


 その私の身体を支えるようにして立つハジメは、今朝はめた腕輪を指さしていた 


 「そのアーシィから借りた腕輪をはめてどこに行くのかと、お昼にポルカさんを呼んでどこに連れて行くのか、教えてほしいんだけど?」


 にっこりと笑って私に聞いてくるハジメの顔は、獲物をみつけたかのように目を光らせていた



 その瞳を見て私は気づいた



 も、もしかして、ハジメがドアにあたったのは私が今日何をするつもりのか、聞きだすためにわざと!?


 そう思った私はサーッと血の気が引いていくのを感じた



 「ねえアリア、どこ行くの?」


 早く教えてほしいなという彼の声はいつもの声異なり艶を帯びていた


 私はその声を聞いてドキッとしてしまった




 はあ、うまくごまかせたと思ったのに、当日の朝にハジメに捕まってしまうなんて


 「・・・白状します」



 私は今日のたくらみの全貌を彼の前で吐露していった












 廊下を歩きながら僕はアリアがたくらんでいたことを聞き出していた


 これから一緒に旅する仲間であるポルカさんの歓迎会の後、レストラン宿り木を一時的に開店させようとしていたということだった



 だったら、従業員である僕にどうして黙っている必要があるんだ?


 人手は必要じゃないか


 

 僕がアリアにそう告げると、アリアはそのことについても慌てながら話してくれた


 

 なんでも、今日のお昼に行う歓迎会の主役であるポルカさんをレストラン宿り木まで僕に案内してもらおうと考えていたらしく、それまでの間、僕にゆっくりしてもらうという彼女の気遣いによるものだった



 「ハジメは土の国に来たその日に、穴の中に入ってしまってひとりで彷徨っていたんでしょ?精神的に参っているといけないから、今日のお昼ぐらい自分の好きなことをして休んでほしいなと思って・・・」



 歩きながら食堂に向かう僕はアリアの気遣いを嬉しく思っていた


 「そっか、ありがとうアリア。僕を気遣ってくれて」



 アリアにお礼を言うと、穴の中で出会った人物について僕は思い出していた


 穴の中というか、その穴の中でつながっている裏の世界、白と黒の世界の住人であるリンネだ

 

 今、どうしているんだろう


 僕はリンネからもらった積み木をポケットにの上から触れていた



 しばらく白と黒の世界での出来事を思い出していた僕は、目的地である食堂にたどり着くのが遅れてしまった



 日の昇っていない薄暗い中、響く料理の音と漂う香りは、少し早く起きた僕の眠気を一気に消し去った


 

 でも、どうして食堂に?


 僕は横にいるアリアにそう訊ねようとしたが、その前に彼女は食堂の厨房に向かって叫んでいた



 「マスター!!」


 準備できた?という声の後、厨房から出てきたのはリドだった



 「おう。ここならではのものを使って作りたいって言ったら、こんなにたくさん食材くれた・・・、ってハジメがいるじゃないか」


 どうなってんだ?と首を傾げるリドに僕はにっこりと笑って答えた


 「聞きだしたんだよ」


 「そうなのか?」


 「朝捕まっちゃったのよ」


 アリアの少し悔しそうな顔を見たリドは、食材の入った袋を抱えなおしていた



 「とりあえず、レストランに行こうか」



 リドの声で僕たちは食堂を後にした






 日が昇らない中、僕たちは昨日アーシィと行った穴の前にいた


 リドがそれを見て眉をしかめていた


 「本当にこれ、通っていいのか?」


 黒い穴を指さしているリドにアリアは大丈夫と言うとリドと僕の手を取った



 「行くよ~!!」


 アリアの掛け声で、僕たちは黒い穴へと足を踏み入れた。


     

 アリアのたくらみはハジメの策略(と呼べるのか)によって白状されます。まだ、アリアはハジメには内緒にしていることがありますが、それはまた後ほど書きます。


 出会った時の3人組のやり取りを思い出しながら読んでみてください。


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