想い、想われ
~ 市場の通り ~
私は一人店に足を運び、二人のお土産を選ぶ
お土産用というだけのことはあり、そこには人の目を魅了する魅力的な商品が置かれていた
特に私の目を引いたのは、「想い、想われの石」と書かれた紙の下に、ずらりと並べられた色とりどりのガラス玉だった
大きさでいうと、ビー玉から針の穴程度のものまで様々だった
気になって一粒手に取ろうとすると、先ほどまでいなかった店主がいきなり姿を現し、声をかけてきた
「いらっしゃい、お嬢ちゃん!!おお、それに目を付けたお嬢ちゃんはお目が高いよ、本当」
気前の良さそうなおじさんが私の目の前で石を一粒、手の平の上にのせて見せてくれたのを見て、私は注視する
おじさんは得意気に指を立て、この石について話し始めた
「これはね、想い、想われの石って書かれてあるように、誰かと誰か、つまり、想い合う二人がいて初めて意味のある石なんだ。恋愛感情でも、恋愛感情じゃあなくても、問題ないよ。誰かが誰かを想う気持ち、それが大切なんだよ」
で、お嬢ちゃん
おじさんの話を聞き入っていた私は、叔父さんの話をキョトンとした様子で聞いていた
何を言われるのか分からなかった私は首を傾げ、おじさんの質問を待った
おじさんは勿体ぶるようにしてから、私にさらっと言った
「誰か、好きな人でもいるのかい?」
「えっ!?」
予想だにしていなかった質問に、私は焦る
目の前で石を転がすおじさんは、面白そうにしていたので、
「い、いません!!」
と、咄嗟に嘘をついてしまった
はっ!と思ったときには、首を上下に振るおじさんが目の前にいた
「そうかい、そうかい・・・。最近の若い子は遠慮深いのかな?まあ、いいか。じゃあ、大切に想う人は?さすがにいるだろう?」
そう言われてから頭に思い浮かべると、黒髪に黒の瞳の少年(年齢的には青年)を真っ先に思い出した
いきなり空から降ってきてびっくりしたけれど、接するにつれて彼のことがよく分かってきたような気がするのは、私の気のせいかな?
あ、でも、記憶喪失だと思ってたら、火の国出身だとか言ったりして・・・、やっぱりまだ彼のことはよく分かっていないのかも
うーん、どうなんだろう
考えていると、おじさんが今度は顔をニタニタさせながら私に話しかけてきた
「まあ、今ちょうどお嬢ちゃんが考えている人が想い人だと思うよ?想い人がいておじさん本当に良かったよ。さて、本題に入ろうか」
そう言っておじさんは、水色に輝くガラス玉を一粒、つまんで見せた
「自分の瞳の色と相手の瞳の色、分かるかい?」
「黒色と夜色、だと思う?」
「だと思う?もしかして分からないのはお嬢ちゃんの瞳の色かい?」
どれ、よく見せてと言われた私は、おじさんに近づいてから瞳の色がしっかり見えるように目を開けた
おじさんはその場でうーんと唸りながらガラス玉に目を走らせていたが、しばらくして、おじさんは決めたようにガラス玉を取り出した
「瞳の色がよく分からない場合は、おじさんが選ぶようにしているよ。だから今回のお嬢ちゃんのガラス玉の色はこれがいいと思うよ!」
おじさんはそう言ってから、透き通った水色のガラス玉を私の手の平にのせた
その後、黒光りするガラス玉も私の手の平の上に落とした
準備が整ったというような表情をしていたおじさんを私は見つめる
その視線の中で、おじさんは屈んでから、何かが入った箱を取り出してきた
「想い、想われの石は、何らかの形で身に着けていないと意味がないんだ。だから、これからお嬢ちゃんに相手のことを想って加工してもらうよ?」
おじさんの手招きに応じた私は、店の中にある作業するスペースに連れて行かれた
そこでレストランのメニューのような紙に書かれていることをおじさんが読み上げていった
「ヘアピンにヘアゴム、ネックレス、リング、ブレスレット、アンクレットにブローチ、カチューシャ、イヤリング、イヤーカフ、ピアス・・・。大体そんな感じでお客さんは加工していくかな?」
どう?というおじさんに加工メニュー表を手渡され、私は考え込む
その私を見たおじさんは慌てて私の方を向いてきた
「ちなみに、相手の瞳の色の石を自分が、相手はその自分の色の方をもつことになるから、それを踏まえてどれに加工するのか、よく考えてみてね、お嬢ちゃん」
おじさんは私が悩んでいる間に、また店の奥へと引っ込んでしまった
うーん、どうしよう・・・
私はメニューに書かれている加工をじっと眺める
泳ぐことを考えたらすぐ外れるものはなし、だよね?
腕や手、足首、首につけるのは元々好きじゃないし、つけるなら耳の部分のもの、イヤリングかイヤーカフ、ピアスがいいかも
でも、ピアスの穴は開けたくないな
じゃあ、イヤリングかイヤーカフなんだけど、どっちがいいんだろ?
そんなことに私が頭を悩ませている間に、この店の前にいるはずのポルカの周りに人が集まってきているということを、加工に夢中だった私は知る由もなかった。
後書きを書かずに投稿してしまいました。2月6日の夜までは、諸事情により投稿することができません。
申し訳ないですが、ご了承ください。
2月6日の夜からは投稿しますので、それまでお待ちください。
いつも読んでくださってありがとうございます。では、失礼します。




