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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
161/189

女の勘

 ポルカ姉の帰りを待ちながら、お店の前に群がるお客さんの対応に追われていたぼくは、他の皆が何をしているのかちょっぴり気になった


 




 ~ 食堂 ~

 

 テーブルの上にあるウィズさん専用のグラスにキンキンに冷えたビールが注がれていく


 デニーさんはボトルをある一定の角度で固定し、ビールの泡を消さないよう、細心の注意を払っていた


 その彼を眺めるウィズさんの様子は、どことなく嬉しそうだったのが僕にも分かった



 まるで、ソムリエだな


 ビールを注ぐ熱心なデニーさんの姿を見て、僕はそう思った



 二人のいるテーブルから少し離れたところにある別のテーブルで、アリア、アーシィ、マッド、リドと僕の5人は、その二人の姿を見ながら雑談していた



 「ふふ、ウィズさん、デニーさんにべた惚れね!!」


 にやにやと見るアリアにアーシィがため息をつきながら同意する


 「そうですわね。離れているのに、愛の熱が伝わってくるようですわ・・・」


 困った表情になっているアーシィは、感じるはずのない熱さを和らげるかのように、手で扇いでみせた



 盛り上がる女性陣の話に、僕を含めた男三人はついていけておらず、互いに首をひねり合っていた


 「そうなのか?」


 「そうなんだろ?」


 「うーん、たぶん?」


 マッドとリドの疑問を僕がとりあえず疑問形で受けとめたが、実際僕にも分かっていないところがあった



 どうして女性は色恋の話が絡むと盛り上がるのだろうか


 そのことを盛り上がっているアリアにこっそり聞いてみると、僕に理由を教えてくれた



 彼女の答えはこうだった



 「ずばり、女の勘よ!!」


 ビシッと突き立てられる指を見て、僕は分かったかな?と聞いてくる彼女に向かって咄嗟に頷いてしまったが、僕にはやはり理解できないことだったようだ



 うん


 アリアの言う女の勘とやらが働いたその時は、女性の意見を尊重しておけばいいよね



 僕は最終的にその考えに至るのだった



 


 



 夫婦二人の様子を眺めていた僕たちが、いつの間にか夜になっていたことに気づいたのは、日暮れとともに兵士の手によって灯されていくランプの灯りだった


 

 「あら?いつの間にか夜になってましたわね」

 

 太陽と異なる灯りの色に、食堂の雰囲気はガラリと変わった



 「ほんとな」


 マッドがそろそろと言ってから腰を上げるのを見て、僕は彼に話しかける



 「どこに行くの?」


 「ああ、市場の偵察にな」



 僕の疑問に答えながら椅子をテーブルの下になおすマッドに、僕は来るか?と訊ねられた



 そう言えば、昨日はいろいろとあったのもあって、ゆっくり市場を見ることができなかったんだよね・・・



 そう思った僕は、いつもより元気よくマッドに向かって頷いていた



 「うん!行くよ」


 勢いよく立ちあがった僕を見たマッドが、僕の頭を撫でる



 「よし、じゃあ行くか」


 「待って!私も行く!!」


 女子同士で盛り上がっていた話を終わらせ、僕たちの後を追ってきたのはアリアだった


 「私、昨日はご飯に夢中で行けなかったから、行きたい!!」


 だめ?と聞いてくるアリアにマッドはとんでもないというように首を横にふった


 「よし!三人で行こうぜ」


 マッドのかけ声を受けて、僕たちは夜の市場へと繰り出していった




 


 

 


 にぎやかな市場の歓声に目を向ける


 僕たちは昨日と同じ道順で市場の通りを歩いていた


 

 昨日となんら変わらない市場の雰囲気に、僕はほっとする


 そのほっとしている横で、市場に売られている食べ物に目移りし続けているアリアを正気に戻しながら、僕は先を行くマッドの後を歩いていた



 遊びで来たわけではない、ということが彼の市場を見守る真剣な表情が言っていた



 マッドがすでに加護者の一人だということは昨日の一件で市場中に知れ渡っていたみたいで、自信のなさそうな商人がひっきりなしに、前にいるマッドを尋ねてきていた


 その商人たちに粗雑な扱いをするわけではなく、マッドは一人ひとり丁寧に対応していく


 その間、暇を見つけては僕とアリアが市場に売られている品物を見定めていく、ということがしばらく続いた



 

 市場の通りを曲がったところで、順調に進んでいた僕たちの目に、店の前に群がる客の集団が飛び込んできた



 うわ、相当混んでる店があるな


 そう思った僕は、昨日来たことがあるお店だと気づかけなかった



 込み具合を目の当たりにして引いている僕をよそに、アリアはその混んでいるお店に目を光らせていた


 「なになに?あの店そんなに人気があるの?これは行かなくちゃ!!」


 彼女は僕の制止を聞かずに、人混みの方へ単身突っ込んでいってしまった



 アリアはこの市場には慣れていないと思うから、はぐれないようにした方がいいと思う


 そう考えた僕は、意を決して人混みの中に身を躍らせた





 

 「はい、ごめんね!」


 アリアは謝りながら人混みを器用に通り抜けていく


 それに追いつこうと思った僕は、小さいという欠点を生かし、人と人の間にできたわずかな隙間を縫っていった


 開けた視界を見る為に僕は顔をあげる


 そんな僕の目に入ってきたのは、群がる客の前で要望を聴きまわっている子犬だった。


    

 いかがでしたか?


 今回は、デニーさんとウィズさんの夫婦仲の良さとそれを見る女性陣と男性陣との温度差、食堂のランプの灯りで気づく時間の経過、そして、マッドとアリア、創の市場へのお出かけなど、今まで土の国の関係で出てきた人たちをまんべんなく登場させたお話でした。

 ただ、ポルカさんはタイニーの言葉でしか出てきておりません。そこは見逃してください。


 最後の子犬はきっと今まで読まれた方はきっとわかると思います。なので、次回までそのことには触れないでおきます。分からない人は推測してみてください。


 それでは、今日はこれにて失礼します。


 *現在、今までに書いた話を書き直しております。今のところ、「始まり」~

「お姉さんからの質問」までです。時間がある方は読み返して見てくださいね。

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