流れ始めた時間
草原の上で自由に踊る彼女に反応して光の粒が躍動する
誘われるままにただ足を動かすだけの僕を彼女はまだリードし続けてくれていた
女の子にリードさせているのってよく考えたら恥ずかしいことじゃ・・・
そのことに、僕は顔を赤くした
カーッと身体から火が出るような感覚を落ちつけようと心の中で必死にもがいていると、また目の前のアーシィから笑われる
「真っ赤、ですわよ?」
意地悪そうに言ってくるアーシィはそんな僕と一緒に踊り続ける
そんな彼女の踊っている姿を見守っている粒達は、波打つようにして僕たちを囲っていた
もっと踊れと、囃し立てるかのように
アーシィもその光の粒の願いに応えるように、キャラメル色の髪を目の前で揺らし、踊る
大勢で踊った方がいいと言われたけれども、僕は彼女が一人で踊る姿を見てみたい
踊る姿を想像した僕はそう思った
握られていた手をそっと離し、僕は彼女の手からすり抜ける
えっ?という表情をして驚いている彼女に僕は願う
「踊って」
僕の願いを聞き入れてくれたのか、僕の瞳をしっかり見つめた後、彼女は僕の目の前で光の粒とともに踊り始めた
草原の上でなびく髪の色がまだ昇りきっていない太陽の光を受け反射し、彼女の美しさをより一層引き立てる
その彼女の踊りに喜んでいる光の粒は、いつのまにか彼女の身体を覆うように集まってきていた
踊りに魅かれた光の粒が彼女のつけているブレスレットに集まってくるのが遠目からでも分かった
「?」
踊っているのに夢中で気づかなかった彼女も光の粒の動きに気づき足を止める
琥珀色に輝く光の粒は同じく琥珀色の鉱石を持つブレスレットに吸い込まれていった
光の粒の居場所が元々その居場所だったのだというように
アーシィもその光景を見るのは初めてだったようで、光の粒が吸い込まれた瞬間、何が起こったのか分からないと言う顔をしていた
「何が起こって・・・」
困惑気味のアーシィに僕は言葉とともに笑いかけていた
「さあ。でもいいんじゃないかな。喜んでたみたいだしさ」
僕の言葉にアーシィは不安そうに揺れている目で僕を見てきた
彼女はしばらくブレスレットを覗き込んでいたが、まあ良いと思ったのだろう
顔を上げて僕にはっきりと言った
「そうですわね。確かに喜んでいたと思いますわ」
だから、良いことにしますわというアーシィの目は草原を撫でていく風のように穏やかだった
僕がうん、それがいいよと言おうとした矢先、船のある方角からもう一人の声がしてきた
「ハジメー!!アーシィー!!」
そう叫びながら来たアリアは草原に立っている僕たちのところに走ってくる
そして僕たちの前に立ち、船を指しながらアリアは痺れを切らしたように言った
「もう!!ふたりが来ないから待ちくたびれちゃったよ?宿り木が待ってるから早く行こう」
そう言うアリアは僕とアーシィの手を掴むと、草原の丘を降りて行く
僕たちは引っ張られている同士で顔を合わせて笑っていた
アリアの背を見ながら僕たちは船へと向かうのだった
アリアに引っ張られ着いた船は穏やかな波に揺られていた
船の声を聴くことができる人がいたのなら、きっとこう聴こえただろう
お帰り、と
想像して船の前に立っていると、アリアから早く橋を架けるようにせがまれた
「ハジメが船に橋を架けてくれないと、船に行けないよ?」
だから、早くという彼女の願いに僕は苦笑しながら応えた
僕はポケットにある積み木を取り出し、手の平に出す
そして、いつものように橋が架かるよう、僕は目を瞑ってソウゾウした
僕が目を開いたときにはもう立派な橋が船に架かっていた
それを見たアリアは一目散に船に走っていく
「アリア、鍵!!」
僕は橋の上を走っている彼女に船の鍵を投げ渡す
「ありがとう!!」
僕が投げた鍵の音を片手でさせながら、彼女はドアの前に向かう
その姿を追いながら僕とアーシィは彼女を追った
船のドアにたどり着いたアリアは、急いで鍵をあける
カチャッという音とともに、アリアはドアを勢いよく開け放っていた
そして、誰もいない船の中に彼女は声をかけた
「ただいま!!」
カーテンを閉め切っている暗い部屋に向かって彼女は元気に挨拶をしていた
挨拶のあと、彼女は船にあるカーテンを一つずつ開いていった
一つ、二つ、三つと開かれていくごとに部屋には日の光と波の反射が船の中に降り注いでいく
暗いところに差し込まれる日差しと青の光に僕は懐かしさを覚えた
水の国で昼間にお客さんにカーテンを開けてもらったときみたいだ
僕はそう思った後、カーテンを開けていった
最後のカーテン開いたとき、いつもの船内が戻ってきたと思った
日の光に照らされ、海の色に染まるテーブルと椅子、床を見た僕は、今まで止まっていたレストランの時間が流れ始めたように感じた
帰ってきた
僕は心の中で呟きながらレストランの外に出て甲板に向かう
カンカンと鳴り響く足音はそこにある景色を思い出させていた
視界に収まらない広がる海の青さに僕は見入っていた。
うーん、どうでしょうか。最近は創たちがいる世界が分かるように、周りの景色、創たちが感じるものを文字で表現中ですが、おかしくないか不安です。
景色や感じるものを書くぶん、ストーリーがなかなか進まないなと感じている日々です。こんな感じでいいんでしょうか・・・。常に模索中です。
昨日!時間内に投稿できたと思ったら、日をまたごしているのにさっき気づきました。申し訳ないです。最後の一文に悩んでいたら遅れてしまったようです。
今日は送れていないので大丈夫と思います。
では、今日もこれで失礼します。




