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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
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第三の選択肢

 女の子に引っ張られた僕は、湖を見ている女の子の傍に膝をつくことになった



 見ず知らずの人に遊ぼうだと?


 今の日本じゃあ滅多に経験できない遊びへの誘い方だろうな



 僕はそう思いながら女の子の遊びを傍らで見ていた


 

 女の子の遊びは湖の水面に指を突っ込み波紋を作るという、極単純なものだった


 ただそれだけを、ひたすら女の子は繰り返していく



 僕はその行動を見て怪訝に思った


 その時、僕の心に二人の分身が現れた



 二人は僕に意見を言ってきたのだ




 一人は言う



 夢の中の出来事だ


 あまりとやかく他人のすることに首をつっこまない方がいいはずだ


 

 そう思う分身の一人が言う一方で、もう一人の僕がその意見に対して警笛を鳴らしていた


 


 もう一人はこう主張する



 何言っているんだ


 女の子がたった一人で遊んでいるなんて、明らかに変だろ


 他の遊びを提案するとか、どうしてその遊びにこだわるのかとか聞いて、その子がどういう理由でここにいるのかとか聞いてあげないといけないんじゃないか


 そんなことも考え付かないとか人として有り得ないって



 心の中にできた僕の分身同士が争っているのを、本来の自分であるこの僕が心の片隅で聞き入れる



 二人は尚も言い争っていた



 自分の意見が正しいんだ


 いいや、お前の意見はおかしい




 そんなのお前に判断できるわけないだろう


 じゃあ、あいつに判断してもらおうぜ



 分身である二人は、ここの主である僕に最終判断を委ねてきた

 

 どちらかの意見を選べと僕に二人は言い寄ってくる



 そんな二人に僕は思ったことをそのまま述べる



 僕はどちらの考えも正しいと思う


 それは一種の逃げるという行動に近いと分かっていても、僕はそれを言いたい



 二人は静かに僕の意見を聴いてくれていた


 それを見た僕はさらに自分自身の主張を貫いていく


 

 逃げるというのは恥ずかしいことだ


 自分のしたことから目を背けてその場から去ってしまう


 そういう自分の責任を放棄したまま、自分の都合のいい所へ、いい方へ行こうとする、他人のことを思いやらない身勝手で無責任な行為なのだから



 心の中の僕は二人に向かって自分の主張と本音を吐露し続ける



 けれどそれが何だと言うんだ


 逃げて何が悪い


 正しいものを選んで何が悪い


 正しくないものを選ばないで何が悪い

 

 選択肢からどうして僕は、人は、選んでしまうんだ



 僕の言葉を聴いた二人は目を泳がせながら僕に応えようとする

 


 それは・・・



 二人の分身は僕の中で戸惑っていた


 自分たちの想像していた意見、選択ではなかったからなのだろう



 僕はそんな二人をこっちに来るように呼びかけた


 二人は渋々僕の方に近づいてくる




 そんなことなら


 僕は新たな選択肢を作り出してやる


 そうすれば、二人は僕に協力してくれるんだろう?



 僕は心の中にいる二人に新たな選択肢を提示して見せた


 分身である二人は僕の選び出した意見に納得していた




 僕が出した意見、主張はこうだ


 

 二人の意見は僕の意見でもある


 それなら僕はその両方を聴くし、取り入れる


 そして僕なりの解釈で主張していく



 これでどうだ?



 そう二人に問いかけると、静かに頷いていた



 

 その二人の反応を見てから僕はふと思った


 二人の意見は相対していた


 それぞれが逆の立場の意見を言っていた


 でもそれは、僕自身が考えることであったし、目の前に居る女の子のことを考えているものでもあった



 だったら、僕の中にある二人の意見は僕に対しても、目の前に居る女の子に対しても正しいんだ


 今回はたまたま僕が二人の分身の意見を採用していく形を選んだだけであって


 二人とも僕が悩むことを想定して僕の代わりに意見を出してくれた



 そして、僕がその二人の意見に満足してしまわないように、第三の選択肢を選びやすいように仕向けてくれたんだ


  

 だから、僕はこれから迷う必要はないんだ


 二人の意見を徐々に聞き入れながら、僕は自分自身の意見を作り出していけばいい


 

 それは現実においても同じことが言えるんだ


 僕が創った世界でも、日本でも


 一人で悩む必要はない



 他の人の意見を取り入れて僕なりの意見を出していけばいいんだ



 ただ、それだけのことだったんだ


 


 僕は未熟だ


 そんなことにも気づかなったんだから



 僕はそのことに気づいてから、心の中がじんわりと温まってくるのを感じた


 

 心の葛藤が収まったのを見計らい、僕は湖に指を突っ込んでは波紋を見て喜んでいる女の子に話しかけることにした



 「僕は相田 創って言うんだ。君の名前は何て言うの?」


 僕の問いかけに女の子は水面に突っ込んでいた指を引っ込めた


 僕の方を見つめた後、彼女は嬉しそうに答えてくれた



 「創お兄ちゃん、だね?わたしはね、」


 女の子の名前を聞こうと思って耳を傾ける



 その時に僕は視界が歪んだ



 その予兆に僕は覚えがあった


 

 どうやら僕は女の子の名前を聞かずにこの夢を去ることになるようだ



 今度、名前を聞こう


 僕はそう思った


 きっとあの女の子もこの夢と同じで僕を待ってくれるはずだ



 根拠のない自信を振りかざしながら僕は意識を手放し、忘れた頃にやってくるこの夢に何度目になるか分からない別れを告げた。



 

 今回は創の葛藤編です。書いている自分も分からなくなることがありますが、心の温もりの糧になるのであれば、それはそれでありなのかなと思います。

 

 今日は、後一話は最低投稿できそうな気がするので、します。ちまちま投稿してしまって申し訳ないですが、お付き合いいただけると嬉しいです。

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