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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
144/189

眠りの波に溺れ

 食堂に本日の主役達が集まったことで、ウィズさんが音頭をとり二人が正式な加護者になったことを祝う



 頬の腫れ上がったところをアーシィに擦られているマッドは満更でもない表情をしている


 二人の話は聞いていなかったがどうやらアーシィが殴り過ぎたことを謝っているようだった



 後でアーシィに本当のことを伝えなければ



 僕はポルカさんから忠告されたこととマッドから励まされたことを思い返しつつリュックに手をかけた



 目の前にいたアリアの目が光る


 「ねえねえ、ハジメ。アーシィから何かお土産があるって聞いたんだけど」


 何?と聴いてくるので僕はアーシィの前でリュックに詰め込まれた麻袋を引っ張り出して見せる


 リュックから引っ張り出した途端にブルーベリーの香りが広がるのが分かった


 「もしかして、もしかしなくても!?」


 アリアの目の輝きがさらに増したのを見て、僕は本当に思う



 アーシィのブルーベリー知識に感謝しなければ


 僕はアーシィに心の中でお礼を言いながら、アリアの前に麻袋の口を開けて見せる



 そこには零れ落ちそうな程大きく実っている丸く青い果実があった


 

 アリアの目は言うまでもなくそれらに釘付けで、喜び全開というようにはわ~!!と言いながら顔に手をあてていた


 そんなアリアの様子を見てタイニーも歓声を上げている


 「改めて見ると、すっごい量だね。アリア姉、このまま食べるのもいいけどマスターさんに何か作ってもらった方がいいかもね」


 タイニーの意見に僕も賛成しようと思って彼女の方に目線を向けるたが、すでにそこに彼女の姿はなかった


 走り去っていく音を頼りに目を走らせると、マスターのもとに軽々とブルーベリーが大量に入った麻袋を持っていっていた



 タイニーに言われるまでもなく、ということだったようだ

  


 「うう、せっかくぼく役に立てると思ったのに・・・」


 意見を言ったものの、それを受け入れるはずの人がその場から消えているのだ


 役に立てずタイニーはガックリと頭を下げていた



 そんなアリアの様子とタイニーの様子を見て僕が苦笑いしていると、デニーさんが僕たちのところにやってきた


 「なんだ~?二人は祝いの席だってのにどうして嬉しそうにしてないんだ~?」


 おかしいじゃないか、というように言ってくるデニーさんの言葉は的を射ていた



 当然というように片手に持った酒瓶を除いて  


 まあ彼の場合は的を射ていても、その的を射すぎていたり、変な方法だったりして、的自体が木端微塵に砕け散って、的の意味をなさないことが多いのではないかと思うのだが



 そんなデニーさんを妻であるウィズさんが叱咤する


 普段の大人しくて聡明に見える籠長から一変、デニーさんの前では駄目夫の根性を叩き切る、いや、叩き直す刃物トークの妻となってしまう


 べしべしと切れない手で叩かれているデニーさんにウィズさんはお酒の注ぎ方を熱弁している



 極まれに彼の魂が抜け出て見えるのは気のせいだろうか


 まあそれが見えたとしても、僕にはどうしようもないことなのだが


 自己完結した考えを心の奥にしまい、僕は目の前の夫婦のやり取りを聴いていた

 


 

 その間にマスターがアリアの頼みを聞いたのか、ブルーベリー料理がテーブルに並ぶ


 アリアがスキップしながら厨房からマスターお手製の料理を運んでくる




 そういえば最近、レストランで接客することを忘れていなかったか



 僕がそのことを考えていると、アリアが青紫色がかった飲み物を持ってきた


 「はい、ハジメ!!ブルーベリーの酸味と甘み、香りを余すことなく使ったソーダだよ」


 ほら飲んで、というように勧められたものを僕は素直に両手で受け取る


 

 嬉しそうな表情で僕にソーダ-をアリアが運んできてくれたんだ


 断れるはずがない



 そう思い僕はグラスに口を付け一口飲みこむ

 

 シュワシュワの炭酸が口と鼻、咽喉を刺激し、グラスの中で立ち昇る気泡は僕の目の前ではじけていく


 ブルーベリーの味を舌で感じていると、厨房から出てきたマスターが「あ」と声をあげる


 その視線は僕の持っているグラスに注がれていた



 「それ俺が飲もうと思ってたんだよな」


 「あ、そうなの!?ごめんなさいマスター」



 申し訳なさそうに間違えて持って行ったアリアがリドに謝っている

 

 「いや、俺はいいんだけれど、ハジメがな」



 「ハジメが?」


 リドの言葉にアリアもリドと同じように僕に視線を向ける

 

 「?特に変わった様子は見えないけど」


 アリアの言葉を聞いて、僕も頷く



 けれど、その時すでに僕の体に異変は起こっていた



 頷いたことをきっかけに僕の頭を何かが引っ張るような感覚が襲う



 何だこれは・・・


 僕がソーダ-の入っているはずのグラスをテーブルに置くと、そのままテーブルに

突っ伏す



 力が入らない


 僕がテーブルに突っ伏しているのを見て、リドは頭を掻きながら暴露する


 「俺用に度数の高い酒を炭酸と一緒に混ぜといたんだ」


 それがあれだと言うと僕がテーブルに置いたものを指していた



 ああ通りで


 力が入らないわけだ



 僕はテーブルに身を任せ、眠りの波に溺れていった。


  

 ブルーベリーに目を奪われていたアリアは間違えてマスターのお酒入りのものを創に渡してしまいます。お酒を飲んだことのない創は、飲んだ時それがお酒入りだと気づきませんでした。

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