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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
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心の広さ

 未だに寝ているマッドを抱え、僕たちは土の織り籠の門をくぐっていた


 アーシィと別れたときの織り籠のときとは違って、兵士が楽しそうに談笑している姿が見受けられる


 先ほどの血眼兵士もいたので、僕はどうして楽しそうに談笑しているのか聞いてみることにした


 すると、兵士は嬉しそうに僕たちに語ってくれた



 「今日は加護者就任のお祝いをするのだと、籠長から言われたんだ」


 さっきのアーシィを呼びに行ったのは演技で、驚かせる為だったのだという



 迫真の演技?だったな



 僕がその時を思い返していると、演技の人は僕たちに先を急ぐよう言ってきた



 「食堂で今アーシィ様を祝っているだろうから、早く行くといい」


 きっと待っているという兵士に僕たちはお礼を言い、食堂へとマッドを引きずっていった






 琥珀色にゆらめく食堂まで続く一直線の廊下を僕たちは突き進む


 眠っているマッドを揺り動かしながら



 「マッド兄、起きてよ!!」


 タイニーがマッドをつつき起こそうとしているのを見て、僕もあいている手で背中をポンポンと叩く


 

 「起きないと、アーシィが・・・」


 僕がポンポンと叩いて言っている言葉に眠っていたマッドは反応した



 「ア・・・シィ?」


 「そう、アーシィだよ」


 そろそろ起きないとね?というと、マッドは目をそっと開ける



 「・・・アーシィ、おきないと・・・な」


 マッドは欠伸をすると僕たちから離れて背伸びをした



 「あ~、ヒリヒリする」


 アーシィに殴られた両頬を両手でさすっているマッドに向かってタイニーは笑いかけた


 「目覚めたね、マッド兄」


 良かったというタイニーにマッドは微笑み返す



 「ああ、なんとかな」


 助かったよというマッドがタイニーを撫でた



 「ハジメもありがとな」


 ここまで来たってことは、食堂に行くんだろ?というマッドに僕はばつの悪い顔で頷く



 「じゃあ、行こう早く」


 そこにアーシィがいるんだろ?というマッドが僕の方に手を伸ばしてきた



 タイニーと同じように撫でようとしているマッドを見て、僕は拍子抜けしていた



 てっきり、僕がアーシィに殴らせるために嘘をついたことを怒ると、そう思っていたのに・・・



 僕は近づいてくるマッドの手を無言で受けとめた



 僕が手をつかんだことに驚いているマッドに対し、僕は疑問を突き付ける

 

 

 「どうして怒らないのさ?」


 僕がアーシィに殴られるように仕向けたのに、という僕の疑問を聞いて、マッドは手を引っ込めた


 考えるようなそぶりを見せないまま、マッドは僕たちに背を向けて食堂に歩き出す



 僕とタイニーはそんなマッドを追いかけるようにして付いて行く



 「どうしてか・・・な」


 僕の言葉を頭の中で反芻しているのか、マッドは呟いていた



 その後、前を向いたまま彼は問いかけてきた



 「嘘をついた後、ハジメはどう思った?」 



 表情が見えない彼からの言葉に僕は嘘をついた後のことを思い出す



 「・・・嘘をついて悪かったなって、そう思ったよ」


 僕の声にマッドはゆっくり振り返る



 「そう思ってくれたんなら、それで十分だ」

 


 廊下に施されているランプの光がマッドの笑顔をより一層柔らかく見せた




 マッドはその笑顔でもって僕に教えてくれた


 心の広さを



 「オレに嘘をついたことを反省してくれた、そのことがハジメの申し訳なさそうな表情を見て分かったからな」


 反省している人に怒ってもな?というマッドに、僕は彼の心の広さを思い知らされたと同時に、自分の心の狭さも思い知らされることになった




 マッドは僕が嘘をついたことを許してくれた


 それが原因で気絶をしたというのに、だ



 それに比べて僕は・・・


 マッドの背中を見つめて唇を噛みしめる



 幼く見られたということだけで彼に怒りという名の牙を向けてしまった


 なんと幼稚な行動だったのだろうか



 僕が頭の中で反省していると、


 「反省はそこまで、な?引きずるとろくなことがないぜ」


 そう声をかけられた



 その言葉に僕が反省という荷物を肩からおろそうとしていると、タイニーが僕の後ろに回って食堂に向かって押してきた


 「ハジメ兄、早く皆のところに行こう!!」


 マッドの言葉とタイニーの声で僕は肩の荷がおろすことができた


 


 そして、三人で食堂の入り口の前まで来ていたことに気づいた



 ドアが開かれている食堂の中で楽しそうにクラッカーを鳴らしているのは僕が知っている人たちだった


 その知っている人達に囲まれ、もう一人の加護者は僕たちの方を見据えていた


  


 そうだな


 引きずらない方がいい


 僕もそう思う



 マッドとタイニーの言葉に励まされた僕は自分の足で食堂に足を踏み入れる


 

 クラッカーを鳴らしているアリアが僕たちにいち早く話しかけてきた



 「あ!ハジメ達だ」


 おかえり~!!と満面の笑みで僕たちを迎えてくれる


 そのアリアの声にウィズさんとリド、デニーさんもこちらを見てきた



 「マッド!!やっと来ましたね」


 「遅かったな」


 「よかったな~」




 全員の笑顔に安心していると、琥珀色の瞳が僕たちを見つめていた



 「無事、生還ですわね」



 良かったですわというアーシィの笑みを最後に、食堂は皆の笑顔で溢れていた。



    

 昨日は休ませていただきました。何故か体の節々が痛かったのですが、早めに就寝したおかげで回復しました。


 お待たせしました、今日のお話です。きっと数分で読み終わるでしょうが、この話を読んでくれている方、読者の皆様方、そして私自身が楽しめるようにと思って書いてます。

 けっこう長いお話ですが、これからもお付き合いください。


 それでは、今日はこれで失礼します。おやすみなさい。

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