鏡
ポルカさんが抱えていたマッドを落としていた
口に手をあて、信じられないものを見てしまったという表情をしている彼女にタイニーは何故か駆け寄った
僕を庇うよう彼女の目の前に立ち、タイニーは弁護する
「ハジメ兄の特技なんだよ、あれ!!」
すごいでしょポルカ姉、というタイニーの屈託のない笑顔に意表を突かれたのか、彼女はポカンと口を開けていた
そのポルカさんにタイニーはさらに僕のことについて説明していく
「ハジメ兄は、積み木を自由自在に操ることができるんだ」
土の力でも、僕が使う風の力であってもできないことがハジメ兄にはできるんだ
嬉しそうに僕のことを伝えるタイニーを見たポルカさんは、出会ったときと同じ落ちついた表情になっていた
「そうなのね。タイニーちゃんはハジメくんのこと、好き?」
「うん、大好き!!」
ひねることもなく、まっすぐに言うタイニーに僕は赤面した
真後ろにいるのに、そんな直球で言われてしまったらいくらなんでも照れる
僕はその照れを隠すために、二人から視線をそらしていた
「どうして好きなの?」
尚も続くポルカさんの質問に、タイニーは少し考えるそぶりを見せてから答える
「あのね、ハジメ兄は普段はおとなしくて優しいんだ。ぼくに対しても他の人と同じように接してくれるし、ぼくが間違ったことをしていたり、悩んでいたりしたら、どうすれば良いのか教えてくれるんだ」
「それで?」
彼女の促しにタイニーは僕の真後ろで、僕がいるのを忘れているのではないかと思うほど、どんどん僕の良いところ(?なのだろうか・・・)を言っいく
「でもそれはね、ぼくが何をしたいのか、何に悩んでいるのかをしっかり見てくれているから、一緒になって考えてくれているからできることだとぼくは思うんだ」
ポルカさんを見据えタイニーは言う
「ハジメ兄は人が困ることはしないよ。あの特技も困っている人がいた時にしか使わないんだ」
だから、ポルカ姉が見たことはポルカ姉が思っているほど危険なものでもないし、他人の心を惑わすものでもないよ
安心して
ポルカさんの心を読み取ったタイニーの話は、彼女の考えていることが彼の言動と全く同じだったということを物語っていた
実際に、彼女は言い当てられて目を白黒させていた
その後、彼女は額に手をあて、小刻みに震えながら笑っていた
「そっか・・・、タイニーちゃんにはあたしの考えていることがバレバレだったわけね」
そっかそっか、というポルカさんをタイニーは不思議そうに見つめる
「分かった!!あたしの今さっきのハジメくんに対する行動は、本当の彼を見ない、愚かな行為だった。そういうわけね」
そう言ったポルカさんは、タイニーを通り越してから僕の目の前に来ていた
「ハジメくんごめん。あたし、ハジメくん自身を見ないで、あなたの行動だけで判断してしまうところだった」
本当にごめんなさい、という彼女の謝りに僕は困惑していた
どうしてそんなに一生懸命になって謝ってくれるのだろう
タイニーもだ
どうしてそんなにも僕のために一生懸命になってポルカさんに僕のことを教えてくれたのだろう
僕はそこが不思議でたまらなかった
そんな僕の考えとは裏腹に、ポルカさんは僕たちの方を見てしみじみとした表情をしていた
「ハジメくんのことを一生懸命庇うタイニーちゃんを見て、あたし思っちゃったな~」
腕を組んでいるポルカさんに僕は何が思っちゃたのかを聞くことにした
「何が思っちゃったんですか?」
僕の質問にポルカさんは指を立てて僕たちに教えてくれた
「タイニーちゃんはハジメくんに命の危機が迫ったとき、どうする?」
僕の質問には答えず、ポルカさんの言葉にタイニーは即答した
「助ける!!」
「でしょ?」
そうだよね、というポルカさんは僕にも同じ質問をしてきた
「ハジメくんは、タイニーちゃんに危機が迫っていたら?」
どうする?という彼女の言葉に、僕もタイニーと同じように頷く
「もちろん、助ける」
僕のできる限りで、という僕の言葉を聞き、ポルカさんはほらねと言っていた
「タイニーちゃんとハジメくん、両方とも同じことを言ったね」
どうしてか分かる?
ポルカさんの問いかけに僕たちは考えさせられた
う~ん
同じことを言えるということは、それだけ相手のことを大切に思っている
って言えるんじゃないのかな?
そう僕が思ったことをポルカさんに伝えると、人差し指を振りながら僕に教えてくれた
「そうね。それも言えるかもしれない。でも、あたしが思ったのは違うんだ」
ポルカさんは僕たちを交互に見る
そして、一文字だけ言葉を発した
「鏡」
鏡?
どうして?というタイニーの声に、彼女は手鏡を取り出して見せた
「見てみて」
手渡された手鏡を僕は眺めた
そこには自分の顔が映っているだけだった
これが何なのだろう
僕がそう思っていると、鏡から顔を上げた僕と鏡の僕を指さしていた
「鏡は姿を映すもの」
そして
「人は、人の心を映すもの」
彼女の言葉に僕たちは目を合わせていた。
狙ったわけではないのですが、今日は140話目でした。2014年が始まる時に14が入る数字で、少し驚いています。
皆さんは今年の一年どうでしたか?
楽しく過ごせた思い出が一個でもあるのであれば、それはとても幸せなことだと私は思います。
つらいことばっかりで楽しいことなんて一つも・・・
そういう人も、今年一年で楽しいことを思い返してみてくださいね。
来年も楽しい人生が送れますように、私自身も、読者の皆様にもお祈り申し上げます。




