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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
134/189

二の舞

 「じゃあ、あなたはこの女性がお金を差し出したのが悪いと?」


 マッドの言葉に店主はそうだと答える



 「そうか・・・。そんな嘘みたいな商売がここでまかり通ると、そう思うのか」


 「何が言いたい!?」


 お前は!という言葉にマッドは、激高している店主をどうしようもないという表情で見下す


 そして、マッドは加護者として言葉を放った


 「営業許可証、持ってないわけないよな?」


 な?というマッドの確認に、店主は目が泳ぎ始めた


 「許可証!?」


 「そう。ここで夜間に営業する場合は、織り籠にいる籠長か加護者の許可が必要となるんだ。おかしな話だな。ここで営業しているというなら、知っていて当たり前なんだが」


 そんなことも知らないのか?というマッドの言葉に男はさらに目を泳がせる


 「営業するのに許可がいるなんて、俺は聞いてないぞ!?」


 前の都市では商売できたのにという店主の言葉に、マッドは釘をさす


 「聞いてないなんて、言えるはずがないんだ!!」


 マッドは店主を睨みつけていた


 その睨みに驚いて、店主は言葉を無くしてしまった


 

「ここの市場長が、新しく商売に来たものに営業許可をとるように言いに来たはずだ」


 違うか?というマッドの言葉に、呆然としてる店主は理解不能という様子だ



 「俺は知らない・・・」


 「そうか、知らないのか」


 なら、市場長を呼ぼうと言った後、マッドは隣の店に行って市場長がどこにいるか尋ねているようだった  


 少し待っていると、市場長と呼ばれる女性が僕たちの前にやってきた


 「はいはーい!市場長はこのあたし!」


 で、どうしたの、マッドの旦那?という市場長の女性に、マッドは久しぶりと声をかける


 「挨拶はまた後でいいか?今はこの店主を見てくれ」


 「この男?随分疲れがたまっている様子みたいだけど、それは?」


 「それも後にしてくれ。この男、見覚えないか?」



 マッドの言葉に市場長はその場で黙り込んだ


 そして思い出したのか、手を叩いて口を開ける



 「思い出した!この男、火の国から来たっていう変わりもんだ」


 で、こいつがどうかしたの?という市場長の疑問に、マッドは答える



 「この店主が、市場長から営業許可をとるように言われているはずなのに、営業許可のことを知らないというんだ」


 市場長が仕事していないのかと思って呼んだんだが、というマッドの言葉に市場長は首を横にふっていた


 「そんな、市場長の仕事をさぼるなんてそんな大それたこと、あたしにできると思う?」


 「いや、全く」


 思わないというマッドの言葉に、店主の嘘が確定した



 「じゃあ、確定だねマッド」


 僕はマッドに店主を摘発するように促す



 許可をとることを知らないということは、許可証を持っているはずがない


 市場長から取るように言われたにも関わらず、許可を取っていないということはその店主が悪いということになる


 だから、営業許可のない店の主としてこの店主を摘発できる


 僕はそう思ったから、マッドに促したんだ


 

 その後、店主とその店の売り物は、市場にいる見回り兵士に捕縛された


 女性のお金も店主の力ない手から返された


 

 そのことに感激した女性が、マッドにすがりついた状態でお礼を言う



 「ありがとう、マッドさん。とても助かったわ」


 すがりついたままの女性は、そのままマッドの頬にキスした



 

 どわ!?


 僕はそのキスを直視できずに、背を向けた




 う~ん、この世界の人たちはスキンシップが多くないか?



 そう思って顔をあげると、怒りの炎を背負っている人の姿があった



 怒りに満ちた琥珀色の瞳と心配そうなはちみつ色の瞳が僕の後ろにいるマッドを見つめていた



 ちなみにマッドはそのことに気づいていなかった



 教えるべきか、教えないべきか・・・


 いや、やはり危険が迫っていることを教えるべきだ


 命の危険が!!



 そう考えていると、すでに彼女の姿が僕の目の前にあった



 「退いていただけますこと?」



 表情は氷よりも冷たいが、背後にある怒りはきっとマグマより熱いだろう


 彼女の地の底から響くような声に僕は身の危険を感じ、そそくさとその場から離れた




 ああごめん、マッド


 どうか生きてください



 僕はタイニーと一緒に、迫っていく危険からマッドが無事に生還することを祈るしかなかった


  








 「いや、大したことはしてませんから」


 「そんなことないわ」



 オレは、女性にお礼を言われ、いい気になっていた

 

 「あなたがいなかったら、お金は帰ってこなかったわ、きっと」

 

 女性の色香に酔っていたんだろう


 加護者としての相棒が、目の前に迫ってきていたことに気づかなかった








 「この変態!!」



 アーシィはマッドがキスされていた頬を思いっ切り殴り飛ばしていた


 マッドはなす術もなく倒れる




 ああ、またアーシィの手の犠牲者が・・・


 僕はどうしてマッドに教えてあげなかったんだ


 

 自己嫌悪に陥っていると、隣の子犬が優しく諭してくれた



 「ハジメ兄・・・、あれはどうしようもなかったんだよ」


 「そう、かな?」


 「うん」


 そうだよというタイニーの言葉に僕は救われた気がする



 僕たちは床に転がったマッドに手を合わせた。



    

 創はマッドがアーシィに殴られたことに罪悪感をいだいています。マッドは生きているのか、少し不安にもなりますが、温かい目でいろいろと見てやってくださいね。

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