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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
132/189

光の中の闇

 タイニーの話は僕がトンネルから出てくる前に見た市場のことだった



 「僕がほしいと思っていた土地に関する本とか、売られてたんだ!!」


 だから、ハジメ兄と一緒に行きたいんだけど・・・



 ダメ?という風にタイニーは僕の方を覗いてきた




 そんな瞳と態度で子犬にお願いされたら、断れるわけがない


 僕は心の中で降参しながら、タイニーにうん、行こうかと言っていた










 食堂に入り浸っているアリア、リド、ウィズさんとデニーさんを残し、僕たちは月と星の明りしかない夜道を歩く



 青白い月と星の光は僕たちを優しく包み込んでくれた





 しばらくすると、その光よりももっと強い光が僕たちの目の前に現れる


 それは、市場に出ている店の軒先に吊るされているランプの光だった


 


 「わあ!!」


 タイニーのはちみつ色の瞳に、吊るされたランプ達の光が写る



 その光景に僕自身も目を奪われていると、後ろから突然肩を叩かれた



 ランプの光から背後に視線を向けると、そこには食堂の前で別れた二人の姿があった


 「ハジメ、タイニー・・・、あなた方どちらに行くつもりでしたの?」


 夜は危険ですわよ?という言葉をかけてきたのは、琥珀色の瞳をした土の加護者、アーシィだった



 「そうだぞ。意外とここら辺りは危険、と言うより面倒事が多いんだ」


 何か用があるなら昼がいいぞ



 アーシィの後ろから僕たちを気づかうように声をかけてきたのは、同じく琥珀色の瞳をしたマッドだった



 「アーシィ姉!マッド兄!」


 どうしてここにいるの?というタイニーの無邪気な質問に、二人は疲れた様子を見せないように振る舞っていた



 けれど、僕から見た限りでは二人の疲労はそう簡単にぬぐいきれるものではなかった



 疲労の原因が気になってアーシィに聞いたところ、



 「ジェル兄様が行方不明になった後の書類の整理に追われていたのですわ」


 今は息抜きに出られただけで、帰ったらまた書類整理ですわね



 はあ、というため息の後のアーシィの表情から、想像したくない程の書類が机の上に山積みされているだろうと推測できる


 

 「そうなんだ・・・。何か僕に手伝えることがあったら、遠慮なく言って」


 という僕の言葉にありがとうと答えたアーシィの笑顔は、先ほどよりもいくらか疲労が薄れて見えた



 「それで?どうして二人はこんな夜に外に出てるんだ?」


 マッドの質問に対し、僕は食堂からこの市場前に至るまでの話をした



 その話を聞いてマッドとアーシィはなるほどとというように僕たちの話に相槌を打ってくれた



 「だから、夜に外に出たのか」


 「ウィズさん、二人に外に出るのは危険ということを言い忘れたみたいですわね」


 お酒のせいで、というアーシィの言葉にタイニーと僕は不安になっていた



 

 危険って何が危険なんだ?


 夜で歩くのがそんなに危険なのだろうか


 僕はそう思えない



 僕の目の前で不安そうにしているタイニーは、アーシィ達に夜に外を歩くことが危険な理由を聞く



 次の瞬間、二人はわざとでもなんでもなく、声を合わせて僕たちに言い切った



 

 「「トンネルが暗闇で見えないから」」



 だな

 ですわ



 というマッドとアーシィの言葉に、僕ははっとした


 


 確かに、暗闇になればあの真っ黒なトンネルは見えない


 光で照らされて暗闇でない市場や織り籠の中はいいかもしれないが、市場に来る前に通った道は確かに危険かもしれない


 

 僕がその危険性に気づくと同時に、タイニーがまた首を傾げていることにも気付いた


 「マッド兄は、さっき危険というより面倒事が多いって言ってたよ」


 それはどうなの?というタイニーの質問に、マッドは少し唇の端を上げて笑う



 「けっこう鋭いな、タイニー」


 「そう?ありがとう、マッド兄!!・・・うん、でもけっこうって」


 どういうこと?というタイニーの質問をよそに、マッドはよしよしというように、タイニーの頭を撫でてやる



 撫で方が心地いいのか、マッドに撫でられている間、タイニーはずっと目を瞑っていた

 


 「面倒事はな、市場に出店している店の中で、加護者もしくは籠長からの営業許可が下りていないのにも関わらず、勝手に営業している店があるんだ。オレ達がここに来たのは、息抜き半分、営業許可を取っていない店の摘発半分、だな」


 これが面倒事だというと、タイニーはおお!という声をあげている


 

 マッドに尊敬の眼差しを抱いているタイニーを見ながら、僕はアーシィに話しかける



 「じゃあ、今からその摘発に行くってことなのかな?」


 「ええ、そういうことですわ」


 少々危険で面倒ですけれど、同行されます?というアーシィの誘いに僕は乗ることにしようと思う


 


 営業許可の下りていない店がどうアーシィ達に摘発されていくのか


 営業許可が下りてないことをどう店主達が誤魔化していくのか 



 正直、楽しみでしょうがない


 タイニーには悪いけど、僕はこっちの方を主に楽しんで行こうかな




 未だにマッドに撫でられているタイニーにごめんと心の中で謝りながら、僕はアーシィに向かって大きく頷いて見せた



 「行くよ」


 アーシィは僕の言葉に満足そうな笑みを浮かべた。



  

 遅くなりました。タイニーは基本的に、年上には~兄、~姉と呼びます。ウィズさんだけは、ウィズ姉ではなく、ウィズさんのままだと思います。きっと、タイニーも創同様、ウィズさんに恐れを抱いていると思うので。

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