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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
128/189

今までにないこと

 「ジェルさんの手紙をよく見てください」


 僕がそう言うと、ウィズさんはもう一度手紙を取り出す


 「ジェルさんは誰か良い人を選んでほしい、そう書いていたと思います。けれど、加護者は一人とは書いてませんでした」


 違いますか?という僕の確認に、ウィズさんはジェルの手紙に書かれている文字を目でざっとと見ていく


 一通り見終わった後、ウィズさんは手紙を閉じて僕に視線を向けた

 

 確かに・・・という声がウィズさんから漏れたのが聞こえた


 「ジェルは良い人を~とは書いてますが、一人を選べとは書いてありませんね。だからハジメは、一人ではなく、二人でもよいと考えた、そう言いたいのですね。けれども、それは・・・」


 前例のないことですよ?と言い、記憶の糸を手繰り寄せているウィズさんの姿に、僕の後ろにいる人たちも勝手に話し始めていた



 「うーん、加護者が二人なんて聞いたことないわね?」


 マスターは?というアリアの言葉にリドは首を横にふる



 「いや、大概一人が基本だったと思うぞ」


 なあ?というリドの疑問にデニーさんも頷いていた



 「確かにな~、聞いたことないな・・・」


 普段酔っぱらっていることが多いデニーさんもこのときは真剣に話し合っていた


 身内が関わるからだろうけど、と思っていると



 「風の加護者もファイさん一人だしね・・・」


 顎に指をあてて一人唸っているタイニーと、そうそう!と頷いているアリアたちの反応を見て、僕は自分の意見がこの世界では通じないのだということに気づかされた


 僕はそのことで逆に面喰っていた




 ほら、あれだよ。学校の学級委員長とかでも、クラスから男女で一人ずつ選ぶみたいな感じのことだよ


 あっ、でも待てよ。それは日本に限りのことであって、この世界の小学校ではないことなのか?


 そうなのかもしれない・・・



 と一人で心の会議を開いていると、アーシィとマッドが僕に話しかけてきた 


 「ハジメはどうして、私達二人を風の加護者にと思いましたの?」


 「・・・何か理由が?」



 選ばれた張本人たちである二人の疑問は最もなので、僕は心の中で考えていたことを分かるように伝えることにした


 「えっと、どうして二人を選んだのかというと、二人で加護者の役割を分担した方が良いかなと思ったからなんだ。二人が得意なこと、好きなことも違うみたいだしね」


 僕は二人に自分の考えを説明していく


 「アーシィは表だって動くことが好きで、トンネルを使うのがどちらかというと嫌いないんだよね?」


 マッドが尾行していたことを怒ったようにと言い、アーシィに確認すると、ええと言って僕の話に答えてくれた


 「確かに私は、裏でこそこそとすることは、とても、嫌いですわ。正々堂々と動いて、相手の目の前で意見を言う。これが一番良いと思ってますわ」


 ギンッという音がしそうなほどの鋭い視線で見られたマッドは、アーシィと視線を合わせないようにしていた


 尾行していたことで、大変な目にあったとマッドはトンネルの中で愚痴零してたからな


 僕はアーシィの視線を見なかったことにした 



 さっきの続きを、ため息つきながらアーシィは話していく


 「尾行のことは置いておきますわ。トンネルのことは・・・。好きではありませんわね」


 きっぱりと言ったアーシィの言葉に僕は続きを促す


 「うまく使えないというのもありますが、私は大地の上で生きている動物たちと地上を移動する方が好きなのですわ」


 だから、トンネルは緊急事態以外は使いませんわね


 というアーシィの言葉に、今度はマッドの方を見て話をする



 「マッドはどちらかというと、尾行して情報収集するのが好きで、トンネルを使うことが得意なんだよね?」


 僕を助けに来てくれたときのようにね?と言うと、おう!と勢いよく頷くマッドは、トンネルを使うことの良さと尾行のことを話していってくれた

 

 「オレは動物たちと触れ合える地上も好きだけどな、トンネルの中に広がる未知の空間を自分自身が探索していく、これが本当に好きだな!自分の行きたいところが決まってたら、基本的にトンネルを使うしな」


 良いもんだ、という風に腕を組みながらトンネルのことを力説しているマッドは、きっと傍から一人演説みたいに見えたと思う

 

 「それにな、地上だと目立ちすぎて、尾行しにくいっていうのもあるんだけどな。尾行して情報収集するのは、結構好きだぜ。後で役に立つことが多いからな」


 さっきのときとかも役に立ったろう?というマッドの言葉に、アーシィはさらに視線を鋭くしていた


 そう言う問題なのかしら?という表情とともに、アーシィの背後にどす黒い何かが渦巻いているように感じたのは、気のせいではないと思う


 僕が寒気を感じていると、二人からそれで?という風に言われた


 「その得意なことと好きなことがさ」

 

 「どう二人が加護者になるのと関係するんですの?」


 もっと詳しく説明してくださいなという二人の催促に僕はあれ?と思っていた



 今までにないことが起こったとき頭の回転は鈍くなるということを僕は思い出した。



   

 遅くなりました。今までにないことを考え、他人に伝えて、そして、それを理解してもらう、簡単なようで簡単でないことですよね。小説を書くことも、そう言うことにつながるのかなと思った回でした。

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