効果覿面だ
『真実の硝子
これは風の国にのみ伝わるもので、持ち主に真実を教えるものである
そして、風に愛された者だけが作ることができるものでもある
硝子細工は
見える者には正しき心と信頼を
見えない者には悪しき心と不信をもたらす
嘘をつかない者には見えることで正しき心の証となり
つく者には見えないことで悪しき心の証となる
きれいなものも人を選ぶ
その輝きの面に映し出すのは人の心
ただそれだけである
ゆめゆめ忘れることなかれ
真実は私たちの味方であり
敵でもあるということを』
僕が開いた教科書の部分を読み上げると、その場にいた人は何のことか分からないというような顔をしていた
風の国の出身である一人を除いて
「うん!小学校で一番に教えられたことだよ!!」
タイニーが元気に僕の目の前で腕を組み頷いていた
そう、これは風の国の出身である人がいないと証明できない方法なのだ
僕はタイニーの言葉に相槌を打ちながら、呆然としている周りを見た
「僕が今読み上げた部分は真実の硝子の効果、というのは分かりますよね?」
皆に語りかけるように言う僕の言葉にその場にいる人たちは静かに耳を傾けていた
「しかも、これは風の国の教科書です。信憑性の高い本はこれだと友人に聞きました」
友人、風の籠長であるクロウさんが言っていた言葉をそのまま借りただけなのだが
効果覿面だったようだ
「そうですね。小学校で使われる教科書は、一番信憑性が高い書物だと言われています」
だから、納得できますねというウィズさんの援護射撃が僕に降り注ぐ
ありがとうウィズさん
おかげで僕の話がより確かなものだと言えるよ
心の中でウィズさんに感謝をしながら、教科書を見て懐かしそうにしているタイニーに声をかける
「タイニー、これは風の国の人なら誰もが知っていることだよね?」
僕の質問にタイニーは勢いよく頷いてくれた
「うん!真実の硝子は風の国では悪い人を裁くときに使われるんだ。その信憑性はまさに折り紙つきだよ!」
だから、知ってて当たり前なんだというタイニーの声が部屋の中にこだまする
さて、僕が何を言いたいのか分かっただろうか
真実の硝子は風の国で主に使われるが、それを使うのは悪い人を裁くときだけ
そして、悪い人は硝子細工を見ることができない
最初に僕が取り出した時点で、クレイとワグマさんの二人は見えなかった
それは二人が悪い人だということを表すことになる
どうしてそれが本当のことだと言えるのか
それは、僕が今手に持っている風の国の教科書が証明してくれる
ウィズさんとタイニーが同意してくれたように、信憑性が高い教科書に書かれていた硝子細工がもつ効果は同じように信憑性が高い、信頼することのできるものだということになる
硝子細工が見えない者は嘘をつく悪しき心の持ち主である
そのことが教科書によって証明される
本の言葉を借りると、
二人は硝子細工が見えないので悪しき心を持っている
ということになる
つまり、二人は悪さをした人たちなのだ
同時に、マッドの二人の行動報告が本当のことであるということの証明にもなる
なぜなら、彼はこの硝子細工が見えていたからだ
僕の言いたいことがよく分かったのだろうか、ウィズさんが二人に目を向ける
「お二人とも、アーシィを海に投げ入れたり、アリアさんをトンネルを使って困らせようとしたり、したんですね?」
ウィズさんの言葉に二人は顔をあげ、弁解の言葉を探そうとしている
だが、無理だったようだ
二人の目は明らかに泳ぎ過ぎていた
「分かりました」
その二人の目を見据えたウィズさんは座っていた椅子から離れ、二人のもとに向かう
「詳しく、話を伺いましょう。さあ、こちらへ」
ウィズさんが二人に、奥の部屋に行くようにと促す
ワグマさんは観念したように渋々ウィズさんについて行こうとした
もう一人は震えたまま固まっていた
床を見つめ震えるクレイは、僕やっちゃったよ・・・という感じだった
詳しく話す前に、もう降参状態だよこの人
心の中で呟いていると、ワグマさんが坊ちゃんと揺り動かしている姿が見えた
「行きましょう。もう逃げ場はございませんよ」
そう言って諭すワグマさんの言葉にクレイはゆっくりと立ち上がる
やっとついていく気になったのか
僕がワグマさんを見ていると、何やらブツブツと唱えているような声がクレイの方から聞こえてきた
異変に気付いたのか、俯いた様子のクレイをワグマさんが下から覗き見る
そのワグマさんの表情が変わったのを見て、僕は咄嗟にポケットに手を入れていた
なんとなく、嫌な予感がする
その予感は見事に当たることになった
「・・・道連れに、してやる」
小さな声でそう吐いた後、クレイはキョトンとしているアリアに手をかざす
すると、アリアの真後ろにぽっかりと穴があいていた
トンネルだ
「えっ!?」
悲鳴をあげるアリアを無理やり吸い込もうとする
ワグマさんと僕以外はウィズさんを見ていた為、彼女の異変に気づくのが遅れていた
「アリア!!」
僕は積み木を取り出した。
効果覿面、こうかてきめん、です。てきめんってこんな字を書くのだなあと思った今日この頃です。
まだまだ、私の知らないことはたくさんあります。漢字以外もそうですね。知らないことが私を待っているかもしれない、そう思うと、動かずにはいられません。
だから私はそれをずっと探し続けたい。それができる人間になりたいと今日の投稿で思いました。




