疚しいこと
先に出てもらったマッドの後を追う為に、僕は上空にあいた穴を見る
これが出口・・・
そう思っていると、声が響く
「では、私がさっきあげた積み木を出してください」
言われた通りに手の平に出して見せると、さらに僕の持っている積み木を出してと言われる
二つの積み木を出してどうにかなるものなのか・・・
僕の考えていることがリンネには分かったみたいで
「意味があるから、出してほしいのですよ?」
だから、出してくださいね
そうリンネの声が頭に響く
「分かったよ」
僕はリンネの言葉に頷きながら、両手の平に積み木をそれぞれ持つことになった
「では、それを合わせてください」
積み木を手の平に挟んだまま僕は積み木を合わせる
「こう?」
すると、二つの積み木が光を帯びだした
「そうです。この空間は創と私、両方が干渉できる場所です。ですから、あなたもこの空間は土の加護者と同じように行き来できますよ」
これで、あなたは大丈夫です
リンネの優しい声が響くと同時に、僕は出口に向かって浮遊する
「表の世界へ行ってらっしゃいです」
私はあなたをいつでも見守っていますからね
その言葉の後、リンネの声は聞こえなくなった
代わりに、頭上から懐かしい声がする
でも、それは切羽詰まったような声で
何か起きている?
そう思いながら僕は黒い穴の中に手を差し入れた
そういう訳で、アリアに抱き着かれるということになっている
一人頭の中で回想していると、少し遠いところから震えたような声が聞こえてきた
「な・・・、なぜだ!?」
予想外のことが起きたらしい、その人は慌てているようだった
意識を失う前に聞いた声と同じ声を持つ人物で、多分僕をトンネルに突き落とした張本人
クレイさんだ
僕はそう確信した
皆は僕が帰ってきたことに集中していて、彼が慌てているのに気付いていなかった
慌ててる時点で犯人って丸わかりだけどね
僕はため息をつきたかった
慌てているクレイさんを宥めているのはお付きのワグマさんで
「坊ちゃん、気をしっかり」
と励ましているのが僕の耳に入ってくる
そのことに対してまた僕が勝手に落胆していると、目の前のドアが開かれた
「おお、ハジメ!無事に着いたか。よかった、よかった」
ドアを開き僕に近づいてきたのは、さっきまで一緒にいたマッドだった
「何とかね」
そう言って僕はアリアから離れ、マッドさんにグーサインを送った
そのことにまた驚いたのか、クレイさんは口をわなわなとさせていた
それにはさすがに僕以外の人も気づいたみたいで
「クレイ様、何を慌てておりますの?」
アーシィの琥珀色の瞳がクレイの挙動をとらえた
そのとらえられた彼は、アーシィの鋭い視線の前に魂が抜け出ているようだった
「何か、疚しいことでもございまして?」
そういうアーシィの言葉にクレイさんはひるむ
「いえいえ、坊ちゃんは何も慌てておりませんよ」
ひるんだ坊ちゃん、クレイさんを庇うようにワグマさんは前に出てきた
だから、庇う時点で疚しいことがあるって言ってるようなものなんだけどな
そのやり取りを遠くから眺めるような気分で僕は見た
「いいえ。何も疚しいことがないのでしたら、必要以上に慌てることはございませんわ。それでも何か、疚しいこととは違うと言えるものはございますの?」
ございますのよね?というアーシィの威圧の前にワグマさんも戦意喪失したようだった
弁解の余地はないと思ったのだろう
ワグマさんはクレイさんの後ろに引き下がった
その二人の様子を見て、マッドは声をあげる
「オレ、今まで二人のこと尾行してたんだよな。だから、二人が今までしてきた疚しいこと、全部言えるんだけど・・・」
ここで言う?というマッドの提案にアーシィが首を振る
「ここではなく」
アーシィの視線を追うと、マッドが出てきた扉の先を見ているのが分かった
「籠長の前で、お話しいたしましょう」
その方がよろしいでしょう?というアーシィの飛びきり冷たい笑顔に、二人は怯えていた
二人の顔はこう言っている
もうやめてくれ
分かったから、頼むから、籠長の前だけはやめてと
そう言っている顔だった
けれど、怯えている二人の願いなんてかなうわけなくて
扉の前で小さくなっている二人をマッドとアーシィがその中に容赦なく放り込む
僕たちはその放り込まれた二人の後を追って、中に入った
いよいよか
僕は籠長室に足を踏み入れた
琥珀色の光が部屋を包んでいる
その中でひときわ輝く場所に、一人の女性が佇んでいた
「お帰りなさい」
そう言って、迎えた人はどことなくデニーさんに似ていた
どことなく・・・?
いや待てよ、これはどことなくどころの話ではない
ほとんど似ているような
僕が心の中で考えていると、目の前に居るデニーさんの動きが止まったように見えた
「ウィズ・・・」
震える声で言うデニーさんに気づいたように、目の前にいる人も動きをとめる
「デニー!」
駆け寄ってきたのはデニーさんの知り合いだったみたいだ
「あなたなの!?」
目の前で感動の再会、僕はそう思った。
私自身のことを考えていたら、小説を書くのを忘れておりました。2日間も放置してしまったことをお詫び申し上げます。
自分がどう生きていくのか、考えることはものすごく疲れることです。疲れるから考えたくないというのが本音ですが、それではいけないということも分かっています。だから、考えます。
納得のいく答えが出るまで、考え続けます。小説のことも同じくらい考えてきたいと思います。よろしくお願いします。
さて、籠長室にいた人は誰なのか、皆さんはお分かりでしょうか?以前、出すかもと言っていた方なのですが、お分かりになりますか?
デニーさんと縁のある方です。どこの話に書いたかは私自身も忘れました。知りたい方は、後書きの欄を見ていただくと分かると思います。
分からない方は探されて見てくださいね。




