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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
117/189

這い上がる手

 私たちを待ち受けていたのは、教会で会った二人だった


 「なかなか着かないから心配したんだよ」


 そう言って、クレイさんは心配そうな表情で私たちを見ていた



 「ご心配をおかけしましたわ・・・」


 アーシィは言いたいことを噛み殺しながら、クレイに精一杯の笑顔を見せていた


 

 サイを使ってハジメを連れ去った後、トンネルに落としたのもきっと



 そう思い、私はアーシィの後ろで二人を睨んでいた



 卑怯なことをする人たちは大嫌い


 そういう嫌味も込めて



 教会で会った時とその場の空気が違うのを感じたのか、クレイさんの付き人であるワグマさんは私たちの方を見渡していた


 「そう言えば、あの方はどうされましたかな?あの黒髪の少年は」


 ワグマさんの言葉にアーシィは冷静に答える


 「今は別行動をしておりますの。何か必要なものがあると仰っていたので」


 「ほう、そうですか」


 アーシィの言葉にワグマさんはおとなしく引き下がっていた



 「クレイ様たちはもうネックレスは見つかりまして?」


 そう言うアーシィの質問に、クレイさんは首をすくめていった


 「いいや、まだなんだ。全然見つからないんだ」


 これから、また国中を探しに行くところなんだけど、というクレイさんの言葉にアーシィは相槌を打つ


 

 「そうですか。お互い頑張りましょう。私達は籠長に会って参りますわね」


 「僕らも旅立つ前に一回籠長にお別れを言っておこうかな」


 ついていくよというクレイさんの言葉にワグマさんは頷いていた



 「坊ちゃん、いい考えですな」


 早速参りましょうというワグマさんの言葉に、クレイさん達は踵を返していた 



 二人の言葉を皮切りに、私たちは籠長室へと進む



 けれど、その進んでいる中でクレイさんが私たちに振り返り、忠告する



 「アーシィ嬢、最近織り籠の中に人を巻き込むトンネルができやすくなったらしいんだ。気をつけて」


 そう言ってウインクをしてくる彼に、アーシィはご親切にどうもとお礼を言う



 二人のやり取りを何となく聞き流していた私は考えていなかった


 後々になって、そのトンネルが私たちの身に危険を及ぼすものだということを



 私たちはクレイさん達と一緒に、籠長室へと続く土の結晶で覆われた廊下を通っていった


 アーシィの瞳の色のような結晶が太陽の光を受けながら輝いている



 きれい・・・



 光の反射に目を奪われ最後尾にいると、風の織り籠の時みたいに荘厳な扉が目の前に現れた



 「もう着いたね」


 クレイさんの言葉に顔を上げ、ゆっくりと開かれる扉の方を私は見る


 

 この中に土の籠長が

 


 そう考えていると、突然足に床の感触を感じなくなっていた




 うん?



 不思議に思い、足下に視線を向ける


 すると、何かも呑み込んでしまいそうな黒い穴が一つ、ぽっかり私の足下にあいていた



 「えっ!?」


 黒い穴に浸かり始めている片方の足を、自力で引っこ抜こうとする


 扉の方に気を取られていた周りも私の異変に気付いたのか、後ろを振り向いてくる


 アーシィは目を瞠り、慌てて私のところに向かってきていた



 

 もう、間に合わない!!




 落ちると思っていた矢先、その横にもう一つトンネルができたのが見えた


 その中から這い上がるように白んだ手がトンネルから出てくる


 


 も、もしかして・・・


 その手の主が私の知っている人だと期待し、私は息を呑んでいた



 「やれやれ、今度はアリアが餌食になるの?」


 トンネルから抜け出してきた彼は、今にも沈みそうな私の体を片手で一気に引っ張り上げてくれた


 その後、もう片方の手で握っているものに声をかけると、ぽっかりあいた穴の上に蓋を作る


 引っ張り上げられていた私の体は、彼の手によって導かれ、蓋の上に着地することになった

 


 「ただいま」


 そう言って私を見上げていたのは、数日前に別れた少年


 ハジメだった



 「ハジメ・・・、お帰り」


 突然帰ってきたハジメに、私はあふれ出る感情を堪え切れずに、思いっ切り抱きついてしまった


 

 顔を覆われた彼が苦しいと言っても、やめなかった


 

 助けてあげられなかったけど


 無事、戻ってきてくれた



 本当に、良かった・・・ 


 

 私の抱擁に顔を赤くしているハジメは、私が落ちつくのを待ってくれていた












 ふう、なんとか皆に危険が及ぶ前に帰ってこられたな


 僕はアリアの腕の中で、今までの出来事を振り返っていた


 

 








 リンネの声が聞こえた後、僕たちは土の織り籠の出口まで来ていた



 「よし!着いたぞ。俺は問題なくトンネルから出られるんだがな。ハジメは」


 できないよなと言うマッドの話を聞いていると、リンネが再び話しかけてきた



 「あなたも大丈夫ですから、ここは先にマッドさんに出ていてもらいましょう」


 そういうリンネの言葉を信じ、僕は口にする


 「僕も何とかできるから、マッドは先に出ておいてもらえるかな?」


 「そうなのか、本当に大丈夫か?」



 心配そうなマッドの言葉にリンネは痺れを切らしたらしい


 

 「大丈夫、と言ってください!」


 という風に僕の頭に声を響かせてきた



 分かった、できるって言えばいいんだろ?



 そう頭の中でリンネに話しかけてから、僕はマッドに出るように促していた。



   

 やっと、アリアと創が再会できました。アリアのピンチに助けに現れる、まあ乙女チックに言うと、白馬には乗ってこれないけど王子様?(創)が助けにきたというような感じですね。助けてもらったアリアを羨ましく感じるのは私だけなのか、そう思う今日この頃です。

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