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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
114/189

見つめる方向

 「どういうことですか?一次通過をしたのはマッドさんだと教会で会ったクレイさんは言っていたのですが?」


 僕の言葉を聞いて、マッドは顔をしかめていた


 「こっちが聞きたいくらいなんだけど、何でオレが一次通過したことになってんだ?オレは正式な加護者になる気なんかさらさらないんだけどな」


 そう言って、頭を掻いているマッドの言葉に僕は考える


 もしかして、クレイさんが言っていたことの方が嘘なのか


 僕はそのことを判断しかねていた



 黙ったぼくを見かねたマッドは僕の方に何かを差出してきた


 「これ、お前のだろ?返しとくよ」


 はい、と言って渡されたのはファイさんから僕がもらった硝子細工だった



 明らかな嘘をついている人は見ることができないというもの


 つまり、嘘発見器と同じものだった



 「これが、見えたんですか?」


 僕の質問を聞いて、マッドは当たり前じゃないかと言うような表情をしていた



 「見えて当たり前だろ?そこにあるものなんだからな」


 と言う彼の言葉に僕は理解した


 

 マッドは嘘をついていない


 嘘をついているのは、教会でアーシィと親しげに話していたクレイさんの方だ


 結論を出してから、僕はマッドに声をかけた



 「マッドさん」 



 けれども僕の言葉に対し、彼は待ってくれと言う風に手を出してきた



 「さん付けはやめてくれ。敬語も無しだ。肌に合わないんだよ」


 そう言う彼の言葉に僕は敬語を使わないことにした



 「じゃあ、マッド。どうしてこの硝子細工を持っていたんだい?」


 その言葉に待ってましたと言わんばかりにマッドは表情を輝かせていた



 「アーシィ嬢から頼まれたんだよ」


 そう言って嬉しそうに話しているマッドから、ここに至るまでの経緯を聞いていった



 彼は三日前にアーシィ達と会い、僕を探すと約束してくれたらしい


 そのときに探すために硝子細工を借りたという


 単身トンネルに入ったのは良いが、なかなか見つからず諦めかけていたところに、僕が突如現れた


 意識を失っている僕を見て、彼は駆け寄ってくれたということだった



 「見つけられるとアーシィ嬢に言った手前、見つけられなかったらどうしようと思っていたんだけどな、何とか見つけられて良かったぜ」


 そう言ってマッドは胸を撫で下ろすしぐさを僕の前でやって見せた


 


 うん、どうやら教会で聞いていた人とはずいぶん印象が違うみたいだな



 僕は目の前でニカッと笑うマッドの笑顔につられて笑っていた



 「おっ!笑える元気があるなら尚更いいな。そろそろアーシィ嬢のところに戻らないと、三日も待たせちまったからな」


 さあ、行こうぜと言って僕の手を引こうとするマッドに、僕は半ば抵抗するように逆の方向に引っ張っていた


 なんだ?という顔で僕を見てくるので僕は彼の目を見て言う


 「アーシィのところに戻るったって、三日も経った今、アーシィはそのはぐれたところでずっと待っているって言ってたの?」



 僕の言葉にマッドは立ち止まっていた


 「そういやあ、どこで待ち合わせとか聞かなかった・・・」



 まずいよな、という顔で僕を見てくる彼に僕は少し待つように言った



 アーシィはもともと急いでいた


 できるだけ早く目的地に行けるように、安全に地上を移動できる馬を呼んだんだ


 それに、最終的に土の織り籠に行けばいいということが分かっているのだから、あのアーシィがいつまでも待っているはずがない


 きっと、織り籠に向かっているはずだ



 そう確信した僕はマッドの服の裾を引っ張っていた



 「織り籠に行こう」


 アーシィもきっとそこで待っているはずだという僕の言葉にマッドは頷いていた

 

 








 僕たちがトンネルの中で行き先を決めている頃、アーシィ達は織り籠に近い街の民宿の前にいた


 「今日はここにお世話になりましょう」


 そう言って馬を降りるアーシィの言葉に私たちは従っていた



 はあ、もうお腹がすいて死にそう


 私は馬を撫でた後、自分のお腹も撫でていた


  

 マスターの手料理を食べられないのとハジメに会えないのもあって、私は不安だった


 でも、土の国の民宿を営んでいる人たちは皆いい人たちで、お世話してもらう度に心が温まる感じがした



 それでも、満たされない部分がある


 私は民宿で出された食事を一瞬で食べ終わり、外に出ていた


 月夜に照らされた馬小屋に私は向かう


 そして、私を乗せてくれた馬の前に行く

 


 「今日もたくさん走ってくれてありがとうね」


 たんとお食べと声をかけ、私は横に置いてあった干し草を馬の前に差し出していた


 その干し草を食べる馬の表情に私は少し癒されていた


 ヒヒーン


 もっとくれ、というように前足の蹄を土にこすり付け私の気を引こうとする


 「はいはい、あげるから」


 そう言って馬の世話をしていた



 初日にアーシィが呼んだ時に、無理をさせてしまった分私は優しくする



 二人乗っていたんだからきつかったよね


 そう言って、干し草を大量に飼い葉桶の中に入れた


 

 でも、今は乗っていないから重くないよ


 大丈夫


 大丈夫だよね・・・ 



 私は馬から視線を上げ、織り籠の方を見つめた



 ハジメはきっと来る


 私はそう自分を励ましていた。



 

 創の中では一日しか経っていない感覚なのですが、実際は三日過ぎています。その中で不安になっているのはアリアです。目の前で信じられないことが起こったとはいえ、助けられなかったのを彼女は悔やんでいると思います。

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