鍵
~ マッドの根城 洞窟前 ~
「あなた、土の加護者は興味ないとおっしゃてましたけど、ではなぜ織り籠に来て私たちの前であんなことを言ったのかしら?」
マッドは以前、土の織り籠で
「手前らなんか、足元に及ばねえぜ!!」
と言うことを二人の前で言ったそうだった
そう、そのときの彼と今の彼の言動はあまりにも違いすぎる
私もそう思っていたんだ
アーシィの言葉にマッドは首を傾げていた
「オレ、土の織り籠には近寄ったことないんだけど?」
そういうマッドの顔に嘘をついていると思えるものは一切見れなかった
まあ、ファイさんからハジメがもらった真実の硝子?があるから嘘つけないとは思うけどね
マッドの言葉に対し、アーシィは特に首を傾げていた
疑問に思うところがあったのだろう
眉間にしわが寄っているのが見えた
そうこうしているうちに、マッドは私たちに向かって咳払いをしてきた
「で、助けに行くにはその人が身に着けていたものが必要なんだ。何かないか?」
そういうマッドの言葉に私は手に持っているものを差出した
「はい!これなら、ハジメの荷物だったからいいと思うわ」
私が差し出した真実の硝子をマッドは受け取る
よく眺めてから頷いた彼の瞳は強く輝いていた
「ああ、これなら大丈夫だ。追える」
マッドは硝子細工を自分の荷物の中に入れていた
「本当に任せてもよろしいのですか?」
アーシィの再確認にマッドは手を振る
「バッチリ大丈夫だってアーシィ嬢」
そう言うとマッドは洞窟の中に向かって歩き出した
「じゃあ行ってくる」
ハジメを探すために、マッドは洞窟の中へと入って行った
入っていくのを見送った後、タイニーがアーシィに言う
「これからどうするの?」
タイニーの疑問にアーシィは少し考えて答えた
「とりあえず、当初の予定通り、土の織り籠を目指すことにしますわ」
その言葉に私は驚く
ここでハジメが帰ってくるのを待つんじゃないの!?
私はアーシィにそのまま言いそうになった
でもその前にアーシィが私たちに教えてくれたことがあったのを思い出した
「何かあったら織り籠で、集合ですわよ」
そう教会に入る前に言っていたのだ
だから、そのことを聞いているハジメも織り籠に向かうはず
私はそう思って顔を上げた
「とりあえず、目的地は変わらない、でしょ?だから、土の織り籠で落ち合うってことだったよね?」
そういう私の言葉にアーシィはしっかりと頷く
「そうですわ、さすがアリアさん」
タイニーはダメですわねというアーシィの言葉に、横で頬を膨らませているタイニーがいた
リスみたい
そう思いながら、私はその頬を見ていた
「では、そろそろ出発しますわ」
その言葉を機に、私たちは馬に跨ったのだった
~ 白と黒の世界 ~
無残に崩れ落ちたこの世界の積み木を見ていると、意識が引っ張られる感覚に陥った
瞬きをした瞬間、白と黒の世界に戻ってきているということが認識できた
僕は今まで回想の中にいたんだ
そう思っていると、目の前に積み木を持って立っている女の子がいたことを思い出した
リンネだ
彼女はまた白と黒に覆われた世界で一人、優雅に紅茶を飲んでいた
「お帰りなさい。あなたがしたことが何だったのか、思い出せました?」
そういうリンネの言葉に僕はゆっくりと頷いて見せた
八歳の自分がすでに完成されていたこの世界の積み木をバラバラに崩してしまっていた
回想と言う形で見た今となっては忘れたくても忘れられなかった
「そうです。あなたが八歳のときに行ったことが、表の世界のシンボルであった湖と木を沈めてしまったのです」
そう言って彼女は砂糖の入った紅茶を匙でかき混ぜていた
「あなたはそのとき自覚がなかったのでしょう。仕方ないと言えばそれまでですが、それでも、あなた自身が世界のバランスを壊してしまったということには変わりないのです。それは大人であっても子どもであっても、この世界に関与するものにとっては同じことなのです」
混ぜ終わった後、匙を置いた彼女の目は僕を射るような目で見ていた
「まあ、何とかこの世界は崩壊せずに済みましたから良かったですが」
湯気の立っている紅茶に口をつけている彼女の声が白と黒の世界に静かに響いていた
僕の八歳のときの行為でかなり迷惑をかけてしまっていたみたいだ
そう思っていると、彼女から再び椅子に座るように促された
今度はすぐに動いて座る
そして、同様に出された紅茶を先ほどと同じように僕は飲んでいた
温かい紅茶のぬくもりと香りに癒されていると、リンネから声がかった
「創、あなたはこの世界とどう関わっていくのですか?」
その問いかけに僕は考える
どう関わっていく?
僕はその言葉に考えさせられることになる
もしかして、この質問がこの世界を出るための鍵になるのではないか
僕は真剣に答えようと思って頭を回転させた
「ゆっくり考えて下さいね」
リンネの言葉が僕の耳に聞こえてくる
この答えが今後の僕の命運を左右する
そう思うと迂闊には答えられないな
そう考えている自分がそこにいた。
こんばんは、今日も投稿できました。これを投稿したらもう寝たいと思います。
アーシィ達はやっとマッドの根城から動き出すことになります。しばらくレストランの話ができないので私的には物足りないのですが、目の前の問題が解決していくように、物語を書き進めていきたいと思います。




