仕事と木片
「お客はいないから、働くことを教える時間があるのはいいな」
そう言って、リドは僕にレストランの仕事を教えていってくれた
店や店の周りの掃除、テーブル拭き、食器洗い、注文の取り方、お冷出しなど細々としたことはリドに教えてもらった
その後は接客の仕方についてアリアから手ほどきを受けた
ドアを開けてお客を招き入れる、そして、元気にあいさつを忘れずに、スムーズにお客様のご希望の席に案内するのだそうだ
ここでは、お客様が来るまでは店のカーテンをあけずに、お客様にあけてもらってから開放感を味わってもらうという
この場所を利用した素敵な仕掛けだと僕は思う
後は、満員になった時のお客様への対応とか、クレーム処理の仕方など一日で教え込まれた
夕日が海に沈んだので、リドがそろそろ働く練習を終わりにしようかと言った
店じまいをして、従業員用の部屋へ皆で引っ込む
「はあ、今日もお客さん来なかったわね」
「今さらだろう?」
鍋を持ちながら、僕たちの夕食の準備にリドが取り掛かる
手伝わなくてはいけないのでは?と思ったので、席を立とうとした
「ああ~いいのよ、手伝わなくて」
アリアが僕を止めた
「どうして?」
僕は首をかしげた
「マスターは料理を他の人に手伝われることが一番嫌いなのよ」
アリアは、苦笑いしながら僕にコップを差し出す
「そうなんだ」
「うん!」
にこにこ笑顔で僕に微笑んでくるので、コップを受け取っておとなしく席に座った
そのこだわりがあるから、前のレストラン辞めてここに来たんだろうな、と思った
まあ、リドの料理を作る速度はびっくりするぐらい速かったから、仕事には支障ないとも思う
その後、リド特製、根野菜と鶏肉の煮込みができた
これがまた文句なくおいしくて、アリアと一緒におかわり競争をすることになった
お腹がはち切れるってこのことだな、うん
僕は腹をさすりながら、空になった鍋を見ていた
食器の後片づけをし、今朝まで寝ていた部屋に僕は帰る
食べている途中で、リドから部屋は好きに使えと言われたので、その言葉に甘えることにした
部屋のドアを開けると、ベッドの横の机に麻袋が置いてあった
これは、食事中にアリアが言っていたものだろう
僕が落ちてきた後の海に、たくさん浮かんでいる木片があったらしく、
一応アリアが回収したらしい
僕はその袋の中身を取り出す
案の定、僕がこの世界に落ちてくるまで使っていた、積み木だった
丸、三角、四角、円柱・・・、他にも様々な形の積み木がこの中に入っていた
僕と一緒に落ちて来たんだろうな
袋の中に積み木をしまい、僕はベッドの上にひっくり返る
ふと、僕は一つの可能性を思いつく
試しにこのレストランのことをいじってみようかな
そう思って積み木を組み立てた
明日の朝、このレストランがどうなっているかで、僕が今後どう行動する必要があるのか分かってくるだろう
そう思いながら、机の上に組み立てた積み木をそのままにし、僕は眠りにつくのだった。
創にとってのキーアイテムである、積み木が出てきました。次の朝レストランはどうなっているのか、に注目です。




