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積み木の世界  作者: レンガ
~ 土の国 ~
106/189

白と黒の世界

 下手にサイから降りると踏みつぶされかねない


 僕はサイの群れが行く先をただ眺めるしかなかった


 

 森のようなところを突き抜けたと思ったら、今度は畑に突っ込んで行く



 目まぐるしく変わっていく景色に僕は翻弄されていた

 

 畑の上を通り過ぎ、また森へと群れは突き進む


 

 一体どこまで行けば気が済むのだろうか



 僕は半ば呆れるような感情をサイたちに抱いていた



 ため息をつきながらサイの行く先を見ていると、洞窟が見えてきた


 

 先頭のサイがその洞窟に入っていくと、他のサイも同じように洞窟に吸い込まれていった


 僕が乗っているサイも同様だった



 何で洞窟に?


 そう思っていると、視界が一気に暗くなった


 目が暗闇に慣れないまま、サイたちは洞窟の中で止まった



 急に止まった?


 暗闇の中にある洞窟内を見ようと必死に目を凝らすが、なかなか目が順応してくれない


 そうやって苦労をしていると、誰かに服の襟をつかまれてしまった



 「何だ此奴は?」


 宙ぶらりんの状態で話しかけられた僕はその誰かに気づくことができなかった



 「その方は、先ほどの・・・」


 もう一人の声が聞こえる


 

 「ああ、さっきの・・・、子どもな」


 でも、という声が洞窟の中で反響する


 「子どもには興味ないんだよな」


 

 僕を片手でつかみあげながら、その人は移動する



 「捨てていいよな?」


 「ええ」


 二人の会話に僕はついて行けてなかった


 僕を掴みあげている人の手が離れる


 だから、僕は地面に落とされると思っていた



 けれど実際は違っていて、


 僕は冷たい水の中に入る感覚を感じることになった



 そこで僕は意識を失ってしまう 










 

 水の中に深く沈む感覚と同時に、あの夢を思い出す


 暗い水の底へと進んでいたのを思い出し、僕は水を掻き分けていった



 低音の声が近づく


 ぼんやりと、暗闇の中から光が見えてきた


 僕はその光の方へと向かう


 そして、手に届きそうだと思い手を伸ばしていた


 

 光っているもののところへとたどり着いた僕はそれを手に取って見る


 それは僕のよく知っているものだった



 「積み木・・・」



 僕は海の中で光り輝く球状の積み木を手の平にのせた



 その瞬間、暗く淀んていた海の底が急に白く輝き出す



 僕は咄嗟に腕でその光を遮っていた



 その中で僕は藍色の髪をなびかせている人を見つけた



 僕は低音の声を発している人かと思い、遮っていた腕を解く



 そして、その人をまっすぐ見つめた




 その瞳は吸い込まれるような水色の瞳で、どの水よりも透き通った色だったと思う




 きれいだ




 僕がその人の姿に目を奪われていると、その人が口を開いた



 その人の声を聞こうと思って、全神経を集中させるようにした



 けれど、その人は声を発しなかった


 その代わり、僕の頭に直接聞こえるように語りかけてきた



 ―――― あの子を救って ―――――



 ただそれだけを



 







 


 「あの子って・・・?」


 誰だと声を出していると、今自分がいるところに目を瞠るはめになった



 どうやらまたあの夢から覚めたらしい



 僕はぼんやりとしている頭に手をやりながら、黒と白が混ざり合った世界に僕は立っていた



 「ここは?」



 僕は辺りを見回していた











 ~ 山の麓手前にて ~



 「アーシィ、タイニー!!」


 私はありったけの声を目の前に居る二人に送る


 二人は私の声に気づいたのか、手綱を同時に引いていた


 私が二人のところにたどり着いたところで、二人から声を駆けられる



 何かあったの?と言うような顔で


 

 「ハジメが!」


 私は息を切らしながら、二人に事実を告げた



 「サイの群れに連れて行かれちゃったの!!」


 私の声にタイニーは驚いていた


 「ええ、ハジメ兄が!?」


 そんなと声をあげているタイニーの横で、アーシィは悩むそぶりを見せた



 その後、アーシィが私の目を見据えてきた



 「そのこと、詳しく話していただけませんこと?」


 とりあえず知る限りのことをアーシィに話すしかできなかった



 「なるほど・・・、そのサイはあちらの方へとハジメを乗せていってしまったのですわね」


 アーシィの言葉に私は頷いていた


 「それなら、心当たりが少々ございますわ」


 リドさん、デニー叔父様と合流してから参りましょうかと言うアーシィの言葉で、私たちは後から来るはずのマスターとデニーさんを待つことにした




 しばらくして、後方から二頭の馬が駆けてくるのが見えた


 私たちが止まっていることに気づいた二人は声をかけてきた



 「お~い、何で止まってるんだ?」


 「競争はどうなったんだ?」



 デニーさんとマスターが口々に言っているを見て、アーシィが声を張り上げる



 「進路変更致しますわ。詳しくは走りながら説明いたしますから」



 そう言って、アーシィはサイの群れが向かった方向へと馬を走らせていた



 









 ~ 白と黒の世界 ~


 僕は白と黒に覆われた世界にいた


 さっき夢で手に取った積み木を手に見回していると、遠くの方にテーブルと椅子が置いてあるのが見えた


 

 あそこには何があるのだろうか



 僕はこの世界から逃れたい一心で走り出していた



 白と黒で統一された床を蹴りながら、僕は目的地へと向かう




 白黒でなく、積み木の色をしているテーブルと椅子の方へ


 

 僕はその場から逃げ出した。




 サイに連れて行かれる災難に遭遇している創に、さらなる災難が降りかかります。創は無事白と黒の世界から抜け出せるのか、楽しみです。

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