24/33
24話 世界の目のおはなし
あるところに とても大きな竜がいました
竜のからだは美しい青色で
海の中では海の色に
空の中では空の色に溶け込んでいたので
誰もその姿を見たことがありませんでした
でも 竜は確かにそこにいたのです
大きな青い竜は
どんないきものよりも高く飛ぶことができたので
世界中を見渡すことができました
ある時竜は とても困っている人を見つけました
その人は 大事なものを探しているので 竜の目を借りたいといいました
竜は初めは断りましたが
その人が諦めず何度も何年も頼むので
一度だけ 片方の目を貸してあげることにしました
ところが
その人はいつまでたっても竜に目を返してくれません
それどころか 竜が会いに行くと逃げてしまいます
竜は一生懸命探しましたが
片目しかないので 世界を半分しか見ることができません
今もまだ竜は目を探しているのです
悲しくて 嵐がおきるほど泣いているので
竜がまだ 目を取り戻していないとわかるのです