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2話


夜明け前、若者は自分のくしゃみで目を覚ました。窓から外を見ると、わずかな明かりが降り積もった雪に反射している。昨晩の吹雪はどうやらおさまったようだった。


ブーツをはいて剣を帯び、若者は部屋を出た。店内は静まり返っており、人の動く気配はない。空気の動いていない一階に降りていきながら、若者はホッとしたような笑みを浮かべた。


「喉乾いたな…」


店主のいないのをいいことに、カウンターで木のカップを探し出し、瓶から水を汲むと、その場で飲み始めた。

半分ばかり飲んだところでふと後ろを向くと、少し離れた所に、同年代の若者が立ってじっと見ている。

若者より頭半分ほど背が高く、細身だが鍛えられた姿勢のよい姿。短くしたくすんだ金髪に黒い目の彼には見覚えがあった。


「昨日もいたね。騎士、なのかな?」


若者が問い掛けると、彼は頷き、さり気なく剣に沿えてあった手を離した。


「ボッシュという。昨日はお前のおかげで騒ぎが収まった。礼を言う」


少しも謝意の感じられない言い方でそう言うので、若者は口の端で笑ってから、わざとらしく一礼した。


「それはご丁寧にどうもありがとう。立派な騎士様達がいらっしゃったのに出しゃばってしまったので、お叱りを受けるかと思っていたよ」


若者の答えにボッシュは顔をしかめてため息をつく。明らかにおちょくってきている相手に激高するほど短気でもないが、なかった事にしてこの場を流すほどの人格者でもない。


「騎士団は酔っ払いの喧嘩に口出しなどしない。武器を持って争うなら別だが」


「ふーん。まぁいいけど」


若者は本気で意義を唱えたかったわけではなく、ちょっと皮肉を言って満足したので、もう昨日のことには興味がなかった。

自分を見ている視線を気にすることなくカウンター前の椅子に腰掛け、突っ伏した。


「腹減ったな〜親父さん早く起きないかな〜」


ボッシュは若者に注意を向けながら、離れた席に座った。もともとは下から音がするので物取りかと思って確認しに来たのであった。隣室の彼が階段をおりる音などしなかったので、まさか客の一人とは思わなかったのだ。どうにも怪しい人物であるように思えた。


「お前、名は?」


「…レイジーだよ。ただの旅人」


少し悩んだような間を開けて、カウンターから頭を上げずに若者は呟いた。




短いですがキリのいいところで

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