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終わる秋の夕暮れ

前回から1週間以上遅くなってしまいました(汗

表現に凝りすぎると良くないですね…

黄金こがね色に染まった部屋の中。

鳥の羽ばたくような音が響いている。

バサ、バサ、バサ、と大きな音をたてているそれは鳥ではない、真っ白なシーツだった。

大の大人も包めそうなほどに大きいそれは、わらを詰めた袋の上へと投げられ、空気を含んで膨らんだところを人の手で撫でられる。

シワを伸ばし、折った角を袋と木枠の間に挟んでいくその手に迷いはなく、瞬きを数回した頃には整えられたベッドがそこにあるだけだった。


「全く、母さんは人使いが荒いもんだ」


縦横ともに大柄な男が額の汗を腕で拭い、机を拭いていたヘレンに向けてそう言った。


ーーーー男の名は、アラン・バラード。

短く切り揃えられた茶色の髪に、眠たげに開いた瞼から黒い瞳を覗かせる彼はヘレンの父親であり、宿屋『鳩の巣』の現当主である。

彼の顔は平凡そのものだが、顎下に積み重ねてきた層は彼がこれまで築き上げてきた信頼を現しており、服をはちきれんばかりに膨らませる腹は妻のヘレナから長年与えられてきた愛情の証だ。

アランが腰に手をあてると腹が揺れる。


「シーツを敷くのは誰でもいいが、こんなに小さな机や椅子を俺に拭かせたらどうなるか分かってるはずなのになぁ、ヘレン」


「・・また、薪がふえちゃうね」


雑巾を手にしたまま、ヘレンはふふっ、とその時のことを思い出して笑う。


「あんなみじめな思いは2度とごめんだね」


アランも釣られるように苦く笑う。

…あれは、3年ほど前だろうか。

宿泊客を見送った後の空き時間に部屋の備品を拭いて回っていた時のこと。

『机と椅子を拭くだけ』の簡単な作業の連続にすっかり気が緩んでしまった彼は椅子の座面を拭いている時、手を滑らせて机の下に雑巾を落としてしまった。

拾わないと、と無意識に身をかがませ伸ばした手は雑巾を掴みはした。掴みはしたのだが、彼はとあることに気付くこととなる。


腕が、抜けない。


伸ばした時は何ともなかった机の足が、引き抜こうとすると返しのようになって離れない。無理に引っ張っても痛みが広がるだけで状況は何も変わらなかった。

幸いなことに階段の近くにある部屋だったため、声を張り上げて台所の妻を呼んでどうにか抜けないかと油などを試したが…最終的に行き着いた解決方法は、外で薪割りをしていたヘレンに助けてもらうことだった。

部屋の中で聞くと思わなかった、あのくうを切る音は今でも鮮明に覚えている。


「…そろそろ日も沈むなぁ」


ふと思い出したかのように見つめた窓の中では、オーム町を囲むモルゾン山の山頂に太陽が寄りかかっている。

気付けば側で同じように見つめている息子に向けて、アレンは『指示』を出した。


「ヘレン、店前にランタンを提げてくれ」


そう告げるとヘレンは1つ頷き、慌ただしい足音を立てて下へと降りていった。


ーーーーこれから厳しい冬が始まる。

次のお話は、宿屋っぽいことをします。

目指せ! 完結! 目標3万字!

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