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終わる秋の昼過ぎ

最初は話が間延びしないように冬から始めようかと考えていましたが、今後の展開を考えると秋から始めた方が良いと気付いたので秋から始めます。

よく晴れた日の昼過ぎ。

一本の木が生えた小さな庭で、青年が白のシーツを棒から外してはかごの中に詰めていた。

ーーーー青年の名は、ヘレン・バラード。モンソウ国、オーム町にある小さな宿屋『鳩の巣』の1人息子だ。

日の光に照らされた髪は少し湿ってはいるものの、夜空を写したこん色をしており、無意識に細められたまぶたからは樹皮を思わせる焦茶こげちゃ色が覗いている。

洗濯籠と干し竿を行き来する腕は細く痩せて見えるが、実際は大人と比較しても変わらないほどの筋肉が皮膚の下に隠れている。


「ふぅ…」


ため息をついたその顔は輪郭こそ整ってはいるものの、額や頬に点在する紅のせいで決して美しいとは言いきれない。


「これでよし、と」


最後の1枚を詰めたかごを抱えて、ヘレンはレンガ組みの建物の中に入る。


「お母さん、洗濯終わったよ」


そう呼びかけるが返事はない。

狭い廊下を進もうと片足を出しかけた時、右手にある台所から物音が聞こえた。

1階の大半を占める食堂の1部として機能してるそこは、部屋の角を除いてカウンターテーブルとなっており、中を覗こうと思えば簡単に覗ける。

ヘレンも確認のために覗いてみれば、探していた『お母さん』は野菜を切っていたところだった。


「お母さん」


再びそう呼びかけると、真っ赤な瞳がヘレンの姿を捉える。まな板から視線を上げたその顔は口元のほくろに目が行きがちだが、整った顔をした彼女の魅力をより引き立てるアクセサリーにしかならない。

歳も既に30を過ぎているというのに肌は焼きたてのパンのように柔らかく、今は布に覆われている髪も光の下では輪を作る。

ヘレナ・バラード。

ヘレンの母親であり、宿屋では主に裏方業務を担当している。なぜ彼女が自ら裏方として働いているのかは、今も劣らぬ美貌を知っていれば当然だ。


「ヘレン、どうしたの?」


ほどよい赤みと丸みを帯びた唇が動く。

大抵の男はその動きだけで一瞬固まるものだが、『母親』として見てきたヘレンは何も感じない。


「さっき、シーツの洗濯が終わったからどこに置いたらいいか聞いておきたくて」


「シーツ…あぁ! ありがとうヘレン、助かるわ。 あとでお父さんが降りてくると思うから、どこか食堂のテーブルに載せておいて」


「わかった」


簡単な返事と共に台所を離れたヘレンは、2列に並んだテーブルの間を通って行く。今はテーブルの上に乗せられている椅子達が夜には下ろされて、この食堂を賑やかにしている姿を想像しながら。

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