021 新居の使用人を雇う
朝を迎えた服部家。
朝食時間だと言うのに誰一人起きない。春人と夏は久しぶりに大満足して夢の中。
秋人と冬は目が覚めたが、起きれば自分が朝食を作るようになってしまうとじっと我慢である。しかしだんだんお腹が空いてきた。我慢の限界である。
冬がドアをそっと少し開けて秋人の部屋を見る。秋人の部屋のドアも細目に開いていた。目が合った。あきらめて二人で一階に降りた。
ため息をつきながら秋人が食材を確認する。なんと米がある。研いだがすぐ炊いては旨くないだろうと思って、土鍋に水を大目に入れて炊いて野菜などを入れて粥と雑炊の中間のものを作った。
満足の出来であるが、朝食を作るのは地球に引き続きこっちでもかとぶつぶつ言っている。
良い匂いが漂った。
「名付けて粥雑炊」
狙っていたように春人と夏が二階から下りて来た。微妙に艶っぽい。
「ふん、昨晩はお楽しみでしたね。朝食ぐらい作れ」
秋人がふくれている。
「いや、それはお前。夫婦だから」
「余計な事は言わないの」
蹴飛ばされる春人。
冬は夏に抱きついた。お父さんとお母さんが仲よくなって嬉しいのである。
「旨い。だが秋人ばかりに作らせて申し訳ないな。料理人を入れよう」
春人が言うとみんな賛成である。苦節十数年、やっと料理から開放されると秋人であった。
食事のあとすぐヒカゲ家を訪ねた。
「おはようございます」
「おはようございます。どうぞお入りください」
中に入った。間取りは服部家とほぼ同じに見える。ただ調度品は全く違う。春人の家は高級品で揃えてあったがこちらは実用品で揃えてある。
応接室に通された。女性がお茶を持ってきた。
「早速ですが料理人をお世話願えませんか」
「はい。わかりました。丁度二人います」
すぐ二人が入ってきた。
「イタサンとジーナ夫婦です」
30代後半くらいの人であった。イタサンさんは真面目、ジーナさんは陽気そうである。
「冬、どうだ」
「良いよ」
冬センサーはOKだ。
「ではお願いします」
「ついでですから、執事、侍女、下働きの女性はいかがでしょうか」
三人入ってきた。
「執事のセバス、侍女のコレット夫妻、下働きのテアです。あの屋敷ですと最低限この三人は必要です。ハットリ家の皆さんは何でもご自分でお出来になると思いますが、日常細々とした事までやると時間ばかりかかってしまいます。それに居留守を使う事も出来ません。セバス、コレットは追い返すのが得意です」
執事、侍女夫妻は40代で洗練されている。テアさんも40代、こちらはおばさんだ。
「あなた、いいんじゃない」
「冬」
「いいよ。みんないい人だよ」
「それじゃお願いします」
「ええと給金は」
「それは王宮から出ていますので不要です」
「そうですか。ではお借りします」
「いえ、今日から主人はハルト様です。どうぞご自由にお使いください。ただ午前中は引越にあてさせてください。隣ですからすぐ終わります」
一遍に五人使用人が増えてしまった。
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。僕が春人31、夏29、秋人17、冬は自称もうすぐ15です」
夏は、29で元の年齢からかなり若くなっているのでアラサーでもにこにこしている。
それからすぐ五人の引越になった。隣である。あっという間に春人の屋敷の宿舎に引越が終わった。
すでに荷物は運び込まれていたのではないかと疑う春人一家である。
一階居間で待っていると服装を整えて五人が戻ってきた。
「本日からよろしくお願いします」
「こちらこそ」
「では早速、本日のご予定は?」
「特にないなあ」
「皆さんは嫌いなもの、食べられないものはありますか」
「特にないなあ」
「あ、蛇はちょっと」
「承知しました。では本日の昼食から作らせていただきます」
イタサン夫婦は厨房に向かった。
「馬を持ってきましょう」
「お願いします」
「馬の担当者一人呼びますがいいでしょうか」
「お願いします」
執事が出て行った。すぐ外から馬のいななきが聞こえてきた。
4人で4頭連れてきた。立派な体格の馬だ。
馬を厩舎に入れて二人帰って行った。残ったのはセバス執事と40代の男。
「旦那様、馬丁のテオです。ちなみにテアの夫です。一緒の部屋に住みます。引越は昼前に済ませますので。ちなみに馬車の御者は馬が出はらうときはテオが、馬が残っているときはそれがしが御者を務めさせていただきます。足りないときはツキカゲ家から来ます。なお、料理人とコレットも御者が出来ます」
冬はテオにOKを出した。
「旦那様、よろしくお願いします」
「こちらこそ。馬は多少は乗った事はありますが後で教えて下さい」
「はい。承知しました。鞍も用意してあります」
冬は早速厩舎に行った。馬を撫でている。馬も嬉しそうだ。
何か話しかけている。
冬が一頭の馬の背中目指して飛びあがり、ふんわりと背中に着地。
馬はゆっくり歩き出した。
「お父さん、ちゃんと言うことを聞いてくれるよ」
「これはたまげた。手綱もなく言うことを聞いている」
「ちょっと家の周りを回ってくる」
馬はゆっくり走り出した。振り落とされもせず手を振って走っていって戻ってきた。降りて一言。
「楽しい」
「お嬢様、今度は鞍をつけて走ってみましょう」
テオさんがすぐ鞍を持ってきてつけた。
「行ってくるね」
また飛び乗って走って行った。家の周りを何周もしている。
「あ、手綱をつけるのを忘れました」
「なんの支障もなさそうだよ」
「お父さん、お母さん、楽しいよ」
「良かったね」
秋人が自分も乗りたいようだ。テオさんが鞍をつけている。
早速乗り出した。楽しそうに家の周りを回っている。
「旦那様も奥様もいかがですか」
テオが鞍をつけて引いてきた。
馬を撫でてから馬に乗って走り出す。
「これはたまげた。みんな一流の騎手だ。馬も楽しそうだ。競馬に出ても優勝しそうだ」
何周かして戻ってきた。
「流石でございます」
「騎乗についてはもうお教えする事はございません。後は馬車に乗ったときに一緒に御者をしてもらえれば良いと思います」
テオに合格をもらった一家である。
冬はまだ馬を撫でている。動物好きなのであった。




