第66話 決闘を
「レクス。情報を帝国側に漏らしている者がいるのでは、という話が上がったのはいつだ?」
「一月ほど前に将校セレグアーゼからです」
部下の不審な動きに気がついての報告だったのでしょう。
そして、伯父様自ら調査して、これは騎士団全体に広がっているのではという確信があったと予想ができます。
そのため、野盗討伐で情報操作がされて、命令が違うということが起きたのでしょう。
「その者の対処はどうなっている?」
「将校セレグアーゼに一任することになっています」
やはり、今回特殊部隊から出たというのが大きかったのでしょうね。それで伯父様にその権利を与えたと。
「それで、聞いても無駄だろうがグレンバーレル。セレグアーゼからの要請はあったか?」
「さぁ? 他の者に聞けばわかるでしょうね」
そうだと思いました。この話を知らない時点で、報告は受けていても聞いていなかったということでしょう。
「はぁ。グレンバーレル。興味がないことを聞かなかったことにするのはやめろ」
「それは時間の無駄であり、思考の無駄です」
「何故、魔導師団長なんてしている? 一番してはいけないヤツだろう?」
「本当にそう思いますよ」
自他ともに認める、人をまとめる立場にしてはいけない者の良い例ですね。
別の人では駄目だったのでしょうか?
って、何故に無言で席を立つのです。レクス。そのまま部屋の入り口まで早足で移動していっているではないですか。
「レクス!」
「グレンバーレル魔導師団長。後ほど決闘を申し込みさせていただきます」
決闘! どこからそのような話になるのですか!
「何の話だ! レクス! あと、全く話が詰めれていないぞ!」
「はぁ、フェリラン。番犬の躾けぐらいしておきなさい」
「何の話だ! グレンバーレル!」
私が叫んでいると、目の前で扉が閉められ、グレンバーレルの姿が見えなくなってしまいました。
え? まだどうするか話ができていないです。
それに言いたいことがあったのに……。
レクスを見上げると、凄く不機嫌そうです。
ここに来てからレクスがおかしいのです。変な魔法に引っかかったのでしょうか?
もしかして、入口の扉におかしな仕掛けが? でも壊した私に何も影響がないのもおかしなものですね。
「レクス。下ろせ。あと、グレンバーレルに対する態度がおかしいぞ」
青い空を模しながら太陽がない空の下を進んでいるレクスに言います。
本当にどうしたのでしょうか。
「隊長。楽しそうでしたよね」
「はぁ、どこが楽しそうにみえたのか」
私が楽しそうだったと言っているレクスが、地面に下ろしてくれました。
そしてポケットからタバコを取り出して、火をつけます。
白煙と共に大きくため息を吐き出しました。
性格が合わないのに、楽しいなどありません。
「フェリラン中隊のみんなと話しているような隊長でした」
「は?」
レクスからそのように言われて一瞬歩く足が止まってしまいました。
それは違う気がします。
「言いたいことを言える相手ですよね?」
「まぁ、言わないと理解してもらえないからな」
言っても聞いていないときのほうが大半ですが。
「羨ましいです」
「レクスにも言いたいことは言っているが?」
はっきり言って、従騎士ではありえないほど、自分の意見を団長に言っていますよ。
「そうでしょうか? 所詮私は隊長の隣に立てない者です」
「また、その話か? 今のレクスはそのようなことはないと言っているだろう?」
「グレンバーレル魔導師団長とは共闘できると言っているではないですか。羨ましすぎます」
……そんなこと一言も言っていないですよ?
その昔、上からの命令で同じ仕事をさせられたということですよ。
「お二人であれば、ドラゴン討伐も可能と自慢していたではないですか」
「それグレンバーレルがな」
私はそのことに関しては何も言っていないですよ。それはもう、酷い有様だったからです。
その仕事。そもそも移動にすら意見が割れて、行き先も意見が割れ、各個人で動くかというときにラゼンがドラゴンと共に現れたのです。
共闘というには程遠い有様でした。
ええ、グレンバーレルの攻撃が私の横をかすることが何度あったことか。
そのグレンバーレルを囮にしてドラゴンを仕留めてやりましたけどね。
勿論その後で、喧嘩が始まったことは報告には上げていません。
「しかし、隊長への愛は負けません!」
「何の話をしている! もしかして、そこから決闘とか言っているのか! やめろ!」
騎士団団長と魔導師団長が決闘など、何が起こったのかと上層部がざわつくではないですか!
そしてその理由が、団長の従騎士だなんて……そんなことが起きたらアルバートに酷い噂が立ってしまいます。
この決闘は何がなんでも阻止しなければなりません。
「レクス。次の休みの日にどこか行くか?」
「はい! お供いたします!」
取り敢えず、グレンバーレルのことから思考を離しておきましょう。




