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結婚するとは言っていません【書籍化・コミカライズ化決定】  作者: 白雲八鈴


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62/63

第62話 魔導師団長の研究室

 魔導師団の扉をノッカーで叩くレクス。

 ・

 ・

 ・

 誰も出てきません。

 私はきちんとアポを取りましたよ。

 書類を持ってきた魔導師団長の補佐官にです。


 仕方がありません。少し距離を取って、思いっきり塔の扉を蹴ります。


 内側に吹っ飛んでいく魔鉄製の扉。

 何やら術がかけられていたようですが、相変わらず物理防御が弱いですね。


「団長。入りましょうか」

「これ良いのですか?」

「後で誰かが直しますよ。待っていても誰も出てきませんからいいのです」


 私はサクサクと塔の中に入っていきます。

 そして塔の中央に伸びる登り階段と地下に下る階段がある場所にきました。

 迷うことなく私は地下に下りる階段に足をかけます。


「良く来られていたのですか?」

「文句を言いにですかね。当時の魔導師団長は最上階が研究室でしたけど」


 退役されて今の魔導師団長に変わったのは戦後と聞いています。


「アレは研究に没頭したいからと地下室を希望したと言っていました」

「え? グレンバーレル魔導師団長とお知り合いなのですか?」

「だったと過去形にしてください」


 今は会ったこともありません。ほぼ塔の外には出ることはないでしょうから、そもそも会う機会もありません。


 そして中央階段を下りきりました。地下三階です。目の前には長い廊下が青白い光に照らされているのが見えます。


「実はグレンバーレル魔導師団長には片手で数えるほどしか会ったことがないのです」


 それはそうでしょうね。

 全体会議とかどうしても出てこいと言われない限りは部屋から出てこないでしょう。

 国王陛下主催のパーティーにも顔を出しませんでしたから。


「ましてや、研究室に直接など……普通は応接室に通されるのですが?」


 レクスの口数が多いと思っていましたら、どうやら私の行動に戸惑いを覚えているようです。


「それ、応接室でどれほど待たされましたか?」

「……五時間」

「時間の無駄です。そんな無礼者に対して、礼儀に倣ってやる必要などありません」


 そして長い廊下の突き当りの部屋の扉の取っ手に手をかけます。


「隊長! せめてノックを!」

「レクス。これを見てもそう言えますか?」


 私はそう言って扉を開け放ちました。

 そこは地下だというのに、まばゆい光に視界が奪われてしまい、手を上げてその光を遮ります。


 涼やかな風が頬を撫ぜ、緑の草花の匂いが鼻をかすめました。


「これは……」


 レクスは目にした光景に言葉を失ってしまったようです。


 上を見上げれば、青い空が広がり、床には室内と思えないほど草木が生え、鳥や虫が飛び交っています。


「さて、行きますよ」


 室内と思えない扉の内側に一歩踏み込み、私は轍のようになり草が生えていない場所を進んでいきました。


「隊長……これはいったいどういうことですか?」

「空は幻影だと言っていましたね。草木はどの程度まで成長するか実験中だと言っていましたが、見る限り問題はなかったようです」


 まぁ、ずいぶんと昔の話ですので、今は何の研究をしているのかは知りません。ただ、これを再現できる人が居なければ、彼の研究の意味はないということは知っています。


「あれが、本当の研究室です」


 私はそう言って、見えてきた二階建ての建物を指し示しました。


「あの?これはどれほど広大なのでしょう?」


 レクスは、それよりもこの実験場の広さのことが気になったようです。


「さぁ? 塔の地下だけでは足りないと文句を言って上と掛け合って、騎士団と魔導師団の敷地までは広げていいという許可をもぎ取ったところまでは知っています。ですが、その後どうなったのかは知りません」


 地下を自分で掘り進めて広げていたことは知っています。騎士団と魔導師団の敷地ということはかなりの広さがありますが、今見ているような風景にはなりませんよね。


 遠くに山が見えるとか距離感としてはありえません。

 恐らく途中から空と同じように幻影を使っていると思われます。


 こだわり過ぎです。


 そして、庶民が暮らすような一軒家にたどり着きました。

 その家の扉はきちんとノックをします。


 すると直ぐに中から扉が開きました。


「どのようなご要件でしょうか?」


 メイド服を着た女性が顔を出してきます。太陽のようなキラキラとした金髪に、光を反射したような金色の目が、印象的です。


「うわっ! 相変わらずコレなのか?」


 思わず、その女性に対してぼやいてしまいました。


「あの? 何か?」


 メイドの女性は首を傾げながら私を見下ろしてきます。


「んんっ! 午後から面会の予約をしている騎士団の者です。中に入れてください」

「面会……予約……」

「補佐官に伝言をお願いしたので、入りますね」


 良くわかっていない風の女性の横を通り過ぎようとしたところで、背後から肩を掴まれてしまいました。


「マルトレディル。それは失礼にあたる」


 私を引き留めたのはレクスです。

 そうですか。人は見た目ですか?


「団長。コレ、何に見えますか?」


 私は、メイド服をまとい首を傾げている女性を指して、レクスに尋ねたのでした。



流れだけになってしまったので、63話も投稿します。

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― 新着の感想 ―
今回の話は団長がまともに見えます。
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