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結婚するとは言っていません  作者: 白雲八鈴


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第6話 休暇をいただけると

 それから一週間経ちました。

 戦勝記念のイベントが控えており、それの対応に追われ、騎士としての訓練どころではないのです。


 団長の従騎士とは団長の雑用係と言っていいです。


 父からは戦勝記念のパレードの参加を言われていましたが、その前に式典があり、その後には色々催し物が控えており、最後にはパーティーまであるではないですか。


 騎士団のメインイベントはパレードですが、警備も入っているので、下準備が大変だったのです。


 いわゆる根回しであったり、書類の準備であったり、各隊の警備の采配であったりです。


「そもそもこんなに書類が必要?」


 広い部屋で一人で文句を言いながら書類に向かっているのでした。


 広いのはここが団長の執務室で、その部屋の端に何故か私の机が用意され、事務仕事をしているのです。


 だから王都勤務は嫌なのです。どうでもいい、報告書を出せだとか、物品購入理由がないだとか、予算が合わないだとかうるさい備品管理部。


 お陰で、あの堅物の部署の奴らを黙らせるほどの完璧な書類を書けるようになりましたけどね。


 それが、今も役に立っているとは、よくわからない人生です。

 このまま穏便に弟と入れ替わるまで過ごしたいです。


「従騎士アルバート。ただいま戻りました。私がいない間、何も問題はありませんでしたか?」


 そう、この団長の私への敬語をどうにかして、三ヶ月を乗り越えたいです。


「そうですね。団長が私に敬語を使っているという問題が現在進行系で起こっています」


 会議から団長が戻ってきました。

 私は頼まれていた書類ができあがったので、それを持って立ち上がります。


「レクスと呼んでくださいとお願いしているではないですか」


 誰がそんなことを入団したばかりの下っ端が言えるというのですか。

 そのことについてはスルーします。


「今日の仕事はこれで終わりましたので、あがらせてもらいます」


 書類を手渡しながら、残業しないで帰るときっぱりといいました。

 団長の従騎士になってから、団長の後をついてまわったり、雑用のために各部署に行って交渉したり、必要書類を作ったりと全く日課の訓練をする時間が取れないのです。

 だから、定時であがると一日目で宣言したのでした。


「はい。今日もお疲れさまでした。それで明日なのですが……」


 この敬語は直らないのでしょうか?

 それで明日の予定ですか、事前に聞いていないので、今日何か決まったのでしょうか?


「その……アルバートが書類を作ってくださったお陰で、明日の予定がなくなりました。なので、明日は休んでください」

「敬語はおかしいです……え? お休みをもらっていいのですか?」

「はい。あの……その……なので……」


 まさか従騎士に休みがもらえるなんて! 上官が休まない限り休暇などないのに!


 嫌いな書類作成を頑張ったかいがありました。


 それなら明日は王都を満喫しましょう!


「お疲れさまでした!」

「あ……」


 私は団長に挨拶をしてさっさと執務室を退出します。

 ん? そう言えば、団長は何かを言おうとしていました?


 閉まった扉を振り返っても、追いかけてこないので、特に重要なことではなかったということでしょう。


 何かあるのなら、休み明けに言われると思います。

 ええ、特に急がなければならない案件はなかったはずですから。



 私はサクサクと騎士団本部を出て、宿舎に向かいます。

 入団して一年は基本的に共同部屋と決まっていますが、何にでも抜け穴というものがあります。


 三階建の貴族の邸宅のような建物が見えてきました。

 騎士団の敷地内にある高位貴族専用の宿舎です。


 はい、いわゆる金を出せば、個室が与えられるのです。


 そして私の場合は、父がお金を出したわけではなく、団長のポケットマネーから出されました。

 なんでも、団長の従騎士だからという理由をあげられましたね。私個人的に個室であることのほうが都合がいいので、甘んじて受け入れましたが、それを良しとしない者がいるのも事実です。


 はい、私に絡んできたファングラン公爵家の坊っちゃんです。


「これはこれは、従騎士マルトレディルではないですか。お早いお戻りですね」


 と絡んできたファングランの坊っちゃんに『見習い騎士のファングラン様も早いですね』と挨拶をして去ります。

 構うと面倒くさいので、素通りです。


 騎士団は実力が全て、騎士の位が全てです。


 まぁ、その位も貴族位によって決まってくるのですが、今は私の方が上なのです。

 後ろで何やら騒いでいますが、無視です。


 そして私は自分の部屋に戻らずに、宿舎を管理している管理者の部屋の扉を叩いたのでした。


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― 新着の感想 ―
やったーーーーっ( ノ^ω^)ノ 続きありがとうございますっ! ニマニマしながら拝読しています
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