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22.妹

 そのころ、大神殿の建設は順調に進んでいた。大神殿の奥の中央には大神像が、その両脇に3体ずつの有翼の女神像が配置されることになっている。

 中央の大神像は、親方と工房一の腕前の職人が手掛ける。そして、翼の生えた女神像の1体をテオが受け持つことになった。この大抜擢にテオは高揚し、身が引き締まる思いがした。愛する家族のためにも、名誉ある仕事を成功させようと、今まで以上に腕を振るった。


 仕事から帰れば、テオは愛娘のエテルナをすごく可愛がった。エテルナの、天使のようなほほえみは、仕事の疲れを吹き飛ばしてくれた。エテルナは、すくすくと順調に育っていった。


 ある日、彫刻の職人だけ、特別に休みがもらえた。テオは、だいぶ重たくなったエテルナを抱っこし、妻アンナと街へ出かけた。

 丘の上の神殿からは、カンカンと工事の音がする。自分たちだけ休みなんだと、あらためて特別感を感じた。

 緑豊かな一角に差し掛かると、しゃれたレリーフが施された塀が続く。出入り口の門には学問・知識の神像が立っている。塀の向こうの敷地には、大きくて立派な建物がいくつも見えた。ここは、裕福な家庭の子息・子女が学ぶアカデミアだ。男子は、哲学、天文学、建築学、科学といった高度な学問を専攻し、女子は社交界の教養を学ぶコースや巫女養成コースなどがあった。テオとアンナが学んだテクネーアカデミアとは、雰囲気も規模も全く違っていた。


 門の近くには、子女を送迎する馬車が何台も停まっており、ちょうど授業が終わったのだろうか、敷地の中から女学生たちが出てきた。

その時、テオの耳に、聞き覚えのある名前が飛び込んできた。

「リリア、さようなら、また明日!」

「また明日!」と、美しい少女が門から出てきた。


 「リリア?!テオだよ!覚えてるかい?!」テオは美少女に駆け寄った。少女は足を止め、驚いたようにテオを見た。2人の顔立ちはとても似ていた。少女の表情が変わる。

「テオ・・・・お兄ちゃん?」リリアはテオを見返す。

 かつて引き裂かれた兄妹が、長い時を経て再び巡り会えた!不意の再会に、2人は歓喜し、喜びの涙があふれた。


 落ち着いてから、二人は互いの近況を語り合った。リリアは、養子先で幸せに暮らしていると言う。テオは、アンナと結婚し、可愛いエテルナという娘もできたこと、そして、大神殿の有翼の女神像を彫る職人として働いていることを話した。

「まあ! お兄ちゃんが彫刻家に…! しかも、あの大神殿の女神像を?!」リリアは目を輝かせた。

「私は今、祭典で舞踊する巫女の勉強をしてるんだけど・・・ついこの間、あの大神殿の開場式典で舞踊するメンバーに選ばれたのよ!」

 兄が彫った女神像の前で、妹が神に舞踊をささげる・・・・なんというめぐり合わせだろうと、アンナの胸にも熱いものがこみ上げてきた。


 その後、兄と妹の間で、ときどき手紙のやり取りが行われた。リリアは、巫女の舞踊のレッスンも順調で、養子先でも学校でも幸せのようだった。妹の幸福を知り、テオは胸を撫で下ろした。

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