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悪夢と女神  作者: 小鎌 弓


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12/22

12.秋

 秋の学園祭が終わって間もなく、音楽過程にうれしいニュースが飛び込んだ。竪笛アウロスの上級生2人と小太鼓テュンパノンの上級生1人が、地元の音楽隊に入団することが決まったのだ。学園祭の演奏で腕を認められたのだそうだ。3人は飛び上がって喜んだ。

「おめでとう」「よかったね!」

 さらにその翌日、弦楽器リュートの上級生2人が、遠い街の音楽隊に入団することが決まった。2人も、とても喜んだ。

「おめでとう」「向こうでも頑張ってね!」

 急きょ、送別会がセッティングされ、旅立つ5人を皆で激励し門出を祝った。5人の嬉しそうな顔に、アンナも心から祝福した。私も音楽隊に入りたいな・・・と思いながら。

 翌日、5人減った教室は、広くなった気がした。


 ぶどうの収穫時期、テクネーアカデミアは1週間ほど休みになる。

 アカデミアの東と南に、広大なぶどう畑がある。男子学生は東の畑で、女子学生は南の畑で、それぞれぶどうを収穫する。そのぶどうから作られたワインは好評で、その利益がアカデミアの資金の一部になるらしい。

 今年もぶどうは豊作のようだ。ハサミで軸を切り、採ったぶどうをカゴに入れる。いっぱいになったカゴは専用倉庫へ運ぶ。朝から晩まで、この作業の繰り返しだ。アンナとマリアとシンシアも、3人仲良くおしゃべりしながら作業に励んだ。ぶどうでいっぱいのカゴは結構重い。最初のうちは元気だった3人も、3日目あたりから腰が痛くなってきた。

 それでもみんな頑張って、収穫作業は5日で終了した。残りの休み2日、アンナは帰省することにした。マリアとシンシアは腰が痛いので、寄宿舎でゆっくりするという。

 アンナの久しぶりの帰省を、両親は歓迎してくれた。ぶどうの収穫で疲れて腰が痛いことを話すと、両親は気遣ってゆっくりさせてくれた。ただひとり、末っ子のソフィアだけは容赦がない。遊び相手を強要してくる。他の兄弟はもう少しおとなしいのに・・・と、アンナはため息をつきながらも、妹ソフィアの相手をした。

 結局、ゆっくりできなかったが、久しぶりに家族みんなで母の手料理を囲み、わいわい談笑したら、疲れは飛んで行った。

 ・・・・こうして秋の休暇はあっという間に過ぎた。


 アンナは 秋の学院祭の時、偶然エレニ先生からテオの誕生日を聞いていた。まだ、ひと月近くある。

 アンナは誕生日プレゼントを作ろうと決めた。休みの日には市場へ出かけ、革のハギレと細い革ひもを買ってきた。彫刻のための工具をいれるポーチを作るのだ。

 寄宿舎でこっそりと作業を始めるが、マリアが気づいた。

「何を作ってるの?・・・なんか渋い色の革ねぇ、女の子っぽくないなぁ」

「ひょっとして、誰かさんへのプレゼント??」

 シンシアはすぐに察してニヤニヤしている。アンナが口ごもると、2人は笑いながらも、親切にアドバイスしてくれた。

「そこの縫い目はもう少し細かくした方が丈夫になるよ」

「こうした方が、中身が見やすくなって、使い勝手がよくなるよ。」

 さすが、日ごろ刺繍過程でポーチなどの小物を作成しているので、助言は的確で分かりやすい。アンナは2人に感謝しながら、夜な夜な針と糸を手に格闘した。

 やがて、アンナの想いが詰まった、革のポーチが出来上がった。マリアとシンシアがその出来をほめてくれた。

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