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消える。

作者: 森の手

 彼方さんは突然消える。


 僕と彼女は幼稚園からの付き合いだ。その頃からよく消えていた。だいたい自分に都合が悪いことがあるとそうなる。あと恥ずかしいとか、好きな人(だいたいがかわいい顔した年下)が来たとか。

 高校生になると、過去の恥ずかしいのを思い出して消えたりもしていた。


 そんな彼女がアイドルデビューした。


「ん~、ここのダージリンの香りは最高ですね。新品のノートパソコンのにおいと同じくらい好き!!」


 なんてことを言っている。紅茶に詳しいアイドルなのだ。マリーアントワネットみたいなカツラをつけ、「ん~」と言うとき、そっくり返りながら長い付けまつげをバチバチはためかせ、鼻穴を広げて見せる。

 そのあと、ズベズベズビィィィィーーーっと大変汚い音を立てて紅茶を飲み干す。


 なんだか気持ち悪いが、数多く見ていると癖になる。『彼女の心は壊れてしまったが、紅茶を持ち上げる動作だけは、当時の名残をとどめている』なんて書かれたりもしている。


 どうもそれが受けたようだ。ファミレスで子供が真似をしているのを見かけたことがある。


 いつも大学で見かける彼女は、ものすごい美人だ。性格はおしとやかで口数も少ない。子供の頃から日本舞踊をやっているのだ。立ち姿も美しい。それがそのまま動くのだから、初見の人は奇跡を目にしたみたいに見入ってしまう。


 紅茶を飲んだ後の彼女も大変に美しい。数秒前にあんなに下品に紅茶を飲んだ人と同一人物なんて考えられない。


 そういう緩急も人気の要因のようだ。


 彼女の正体に気づいているのは大学でも僕だけだろう。何故気づいたのか。


 消えるからだ。


 調べてみると、ちょっとそっちの方面でも話題になっている。ライブ配信で消えたとか、薄っすらと背面が透けたとか、ホラーめいた扱われ方もしている。


 決定的だったのが、コラボ企画でアニソンを歌っているときだ。後ろから彼女が尊敬する歌い手さんが現れた。このとき驚いて3秒ほど消えた。ついでに歌い手さんの歌も止まった。100万回再生されている。


 ただ世間ではそういう風に編集されていると思われているらしい。

 彼女の方でも分かっているらしく、変なところで唐突に消えたりもしている。


 ちなみに幼馴染といっても、僕は話したことなんてない。一回も。そんなだから、彼女の中で幼小中高大の僕の存在は同一人物になっていない可能性が高い。


 ―――彼方さん視点―――


 目をつぶっていても、外の景色が見えることがあった。


 自分が本当に消えているのだと分かったのは、鏡の前でそれをやったときだ。


 鏡の中に私がいない。目を開けるとパッと現れる。透明になっているのだと気づいたのは、何度か確かめたあとだった。目をつぶって『あの感じ』を出すと、私は誰の目にも見ることができなくなっている。外の景色が見えたら成功の合図。


 透明人間。


 やがて、目をつぶらなくてもできるようになった。別に副作用もなかったから、その気になればいつまでも透明でいられる。


 弱点といえば一つくらい。びっくりするようなことがあると、コンマ数秒消えてしまう。


 直そうとはした。


 一時はうまくいっていた。腹式呼吸の要領で、一瞬だけ腹圧をかけると回避できる。でもお腹が出る。ご飯のあとなんかは要警戒。


 なんてやっているうちにうまくできなくなった。


 人前で消えたこともある。たいていは何も言われない。流される。

 言われることもあるけど、こちらがそれに乗らない限り、会話は続かない。だが一人、じっと見てくる奴がいる。


 相沢。


 私には幼稚園から大学までずっと一緒の男がいる。話はしたことない。でも小3くらいから見られている。


 昔から人の視線には慣れている。自分で言うのもどうかと思うが、私の顔面は美人の部類に入るらしい。しかも稽古の一環で、立ち居振る舞いは日常生活まで徹底されている。

 なんというか、目立つ。いや、普段は地味な格好だけど、いろんなことに普通の子たちとは、かすかな違いがあるらしい。それに気づいた人は、はっと息をのむ。それから私はひそかに注目される。


 彼もそんな内の一人だった。でも最近になって、さらにその目の力が強く、妖気漂うようなものになった。


 理由は分かっている。あいつは、動画配信者という私の秘密を知っているのだ。


 


 動画配信のきっかけは、日舞の稽古帰りに仲間で喫茶店巡りをしていたことだ。


 着物姿の私たちが行くと、たいていの店の人や他の客は喜んでくれる。おまけもしてくれる。


 初めはそんな仲間たちとのいたずらからはじまったことだ。好意の視線にさらされつつ、仲間内で順にズルズルと紅茶を飲んでみた。真面目な顔して。 その周囲の引き具合がよかった。


 ちょっと面白かったので、私一人でその様子を動画に撮ってアップした。身バレ防止に盛に盛った金髪もかぶって。

 顔も白粉で真っ白に塗った。ついでに飲むときもっと汚くしてみた。


 なんというか、厳しい稽古の反動だったのだろう。だがそうしたことで何かが壊れた。


 身体の軸を整え、カップを持ち、紅茶を見つめる。そうすることで場が立ち上がる。どこからか三味線の音が聞こえてきそう。


 すする。


 下水口に汚物が吸い込まれるみたいな音を立てて。


 たまらない。


 止まらない。


 いつしか、お店から紹介のオファーをもらうようになった。


 人気者になっている。


 そんなのはどうでもいい。 


 楽しい。私がこんなのをしているなんて、誰も知らない。


 だが、相沢は知っていた。彼は私の動画を見ていたし、日記にもそう書いてあったのだ。


 奴の家に透明になって見に行ったのだ。


 それで分かったが、彼は私が一瞬だけ消えるとだけ思っているのだ。


 ばかめ。


 しかし彼は、自分が私を見ているとき、身体が数ミリ宙に浮いていることを自覚しているのだろうか? 奴の日記にもそんな記述はなかった。あいつのことだから、気づいてないのかも知れない。


 ―――相沢―――


 気づかないか? 僕が彼方さんを見ているとき、わざと宙に浮いている。もちろん興味を持ってもらうためだ。

 向こうだって消える。そういう方面の仲間だと思ってもらえれば、声をかけたり、話しかける機会を作ってもらえるのではないか。


 なんで僕は浮けるのか?


 分からない。


 その気になれば三十センチくらいまで上げられる。時間は5分くらい。浮けるのはその場だけ。


 ただし自分が地に足をつけている状態からじゃないとできない。飛び降りれば普通に落ちる。


 役に立つことはあまりない。せいぜい彼方さんに見せるくらい。その彼女も気づいているのかどうかわからない。


 そして事件があった。街で彼女にばったり出くわしたのだ。


 普段の彼女ではない。動画で見る方の彼女だ。

 いつもの金髪モリモリのカツラをし、あるお店の前でカメラ片手に説明をし、そうして入って行った。


 興味はあった。でもいくわけにはいかない。 あ、いや、いいのか。だって向こうは僕が正体に気づいていることを知らないのだ。


 入った。


 彼女は席に着いて、注文をしたところだった。あらかじめ言ってあったのか、店員さんは普通にオーダーを取っているようだった。紅茶とケーキセットか何かだろう。


 ちょっと遠くに行こうとしたら、隣の席に通された。


 横目でチラ見する分にはいいだろう。だって彼女は目立つし、けっこう人気の配信者だ。そうしない方が不自然というものだ。


 近くで見る彼女は普段の様子とは全くもって違う。でも一瞬表情が彼方さんになる。暇つぶしにメニューを見るときの目を細めるところとか、じっと見る僕を意識しているようなピリピリした顔とか。


 コーヒーを注文した僕の方が先に運ばれてきた。


 それを半分くらい飲んだとき、彼女が頼んだものがやってきた。彼女の頭にも負けないモリモリのパフェだ。


「わあーーーーーすごい。落ち武者の将軍を見つけた足軽くらい興奮します!!」


 とかなんとか言っている。


 と思っていたら、彼女はいきなり頭に手を伸ばし、カツラを床にバスンとたたきつける。


「もうなんっなの!」


 僕を見てそう言った。


「あいざわ!!!」


―――彼方さん―――


 相沢の野郎。


 多分、私の正体にあいつが気づいていないと私が思っていると思っているから、そ知らぬふりをしてのこのこ隣まで来たに違いない。ちょっとなにいってんだかわかんない。


 とにかく、図々しいったらない。


 スイーツが来るまでは我慢した。しかし撮影の段になって限界が来た。だってコーヒーを飲みながら横で私をガン見しているのだ。


 そして椅子から身体が少し浮いている。なにこれなんのアピール?


「あいざわっ!」


 と、私は言った。カツラを叩きつけながら。彼は驚いてすとんと椅子に着地した。


「お前が部屋にいるとき、わざとおしっこを漏らして、興奮していることを世間にバラすぞ!」


 彼の日記にそう書いてあった。私もやってみた。確かに気持ちよかった。あの背徳感。


「え」


 と彼は言った。何を言われているのか分からないといった顔だ。


 そのまま固まってしまう。たぶん言われたことを理解して、リアクションに困っているのだろう。


「じゃあ、僕の気持ちも知っているよね!」


「えっ」


 知っていた。


 だってもう彼のノートはそればっかりだったから。


 私が言葉に詰まると、向こうはなんだが勢いがついたらしい。


「だってもう十年以上だ。僕はずっと君のことが好きだ」


 そして私は消えた。


 気づいたときには、電車に乗って家に帰っていた。


 ―――相沢―――


 やってしまった。テーブルには食べかけの巨大なパフェと、伝表が残された。あとカツラも。


 僕は仕方なくお金を払い、カツラを持って店を出た。


 どこをどう行ったのかわからない。気づくと自分の部屋にいた。茫然自失とはこのことだ。


 ただうれしいこともある。彼女が僕のことを認識していたことだ。それから、なんだか告白できたこともまあ良かったかも知れない。


 あれ、じゃあよかったのか?


 カツラも持っているし、これがなければ彼女も困るだろう。ということはいずれ会えるということだ。そのときちゃんと話をできないものか。


―――彼方さん―――


 どこをどう帰ったかわからない。気づくと私は自分の部屋にいた。透明ではなかった。ドレス姿だった。でもそんなこともういい。


 相沢だ。


 なんなんだあいつ。突然こくりやがった。


 ふと鏡の自分を見る。あいつのことを考えている自分は、別に普段と変わりない。うん大丈夫。私はなんとも思っていない。


 というか、それどころじゃない。カツラだ。カツラがない。


 あれがなければ、撮影ができない。


 恥ずかしいけど、今日行った店に電話してみた。


 でもそんなカツラみたいなものはなかったらしい。


 とすると、誰かが持って行ったか。だがそれは違うと私の直感は告げている。あいつの仕業だ絶対。


 相沢。


 きっと私のカツラは今あいつの家にある。


 取りに行こう。今すぐ。


 ―――相沢―――


 彼方さんは、きっとくる。このカツラを取りに。


 というか彼女は以前、僕の部屋に忍び込んだことがあるのではないか。なぜなら、僕の赤裸々な日記の内容を知っていたからだ。しかもあんなおしゃれなカフェの中で暴露するなんてどうかしている。

 思い出すだけでとても興奮する。


 いや、いかん。


 こうしている間にも、今まさに彼方さんが僕の部屋に忍び込んでいるかもしれないのだ。


 どうしてくれよう。


 ピンポーン


 インターフォンが鳴った。


 誰だろう、モニターを見る。


 出前の配達員だ。


 そんなの頼んでいない。間違いだろう。


 いや、だが待てよ。


「はーい、ごくろうさまでーす」


 そう言って僕はアパートの玄関のロックを解除する。


 間もなく、部屋のインターフォンが鳴った。


 ドアを開けるとピザの箱を持った配達員が立っている。


 料金は払い済みのようだ。


 何も言わずそれを受け取り、ドアを閉める。


 鍵を閉め、念のためチェーンもする。


「いるんでしょ彼方さん」


 後ろを振り返りながら僕はそう言った。


 もちろん居間には誰もいない。人の気配もない。


 でも分かる。なぜなら自分の身体が浮いているからだ。


 なんでそうなるのかは分からないけど、何年もやっているうちに、彼方さんを感じると、浮くようになってしまった。


 何も反応はなかった。


 でも僕は居間のテーブルにピザを置いた。


 そのときに部屋の異変に気付いた。


 ベランダのスライドドア近くに置いてあった彼方さんのカツラが浮いている。


 ―――彼方さん―――


 相沢の家に出前でピザを送る、というのが私がしたことだ。配達員とのやり取りの間に部屋に忍び込む。


 そこまではよかった。我ながらスムーズに奴の部屋にお邪魔し、勢いそのまま土足で居間に上がり込む。靴を脱いでしまうと、透明でなくなるから仕方ない。


 カツラはすぐ見つかる。ベランダのガラスドアのすぐ近くに置いてある。


 なるべく音を立てないよう近づき、拾い上げる。すごい焦ってたけど。だが、行こうとしたとき、私がつかんでいる金髪モリモリのカツラがそこにある。


 消えない。


 そんな。


 こんなこと、一度もなかった。


 私が触れたモノはすべからく消えるのだ。


 マジックだと言って、友だちの前で掌のペンや消しゴムを消したりもしていた。


 得意なのだ。


 ところがどっこい。


 両手でしっかりつかんでいるというのに、私のカツラは消えてくれない。


 相沢からしたら、浮いているように見えるだろう。


 いや、それどころか、私の身体がどんどんあらわになっていく。


 相沢がこっちを見ている。そしてなんか浮いてる。


「なんで浮いてるのよ」


 そう言って、しまったと思った。私は不法侵入で、自分の物だという確信はあるが、それでも確実にそうとは言えないカツラを持っている。窃盗である。


「彼方さんだって、消えてたじゃないか」


 と、私のそんな心配を他所に、彼はそんなことを言ってきた。


 表情は、普通だ。普通の彼。すくなくとも犯罪者を見る目つきではない。たぶん。


「消えなくなった」


 私もこのままの流れがいいから、そう言ってみた。できればこのまま謝って、カツラ持って帰りたい。


「え?」


 と言って、浮いていた相沢の足がすとんと床につく。今私、何かおかしなこと言った?


 ―――相沢―――


 彼方さんが、消えなくなった。


 チャンスかもしれない。


 これを使って、もっと会話するのだ。


 自分の部屋に彼女を呼んで、二人っきりになる。


 ここまでは成功した。


 しかし、会話がない。


 そりゃそうだ。 だって話したことなんてないんだから。


「じゃあ姿を見せたのは、そのせいだったの?」


「……うん、そう」


 僕の言葉に、彼女が反応してくれた。なんだかこの光景が信じられない。本当に夢みたいだ。


 僕は一歩彼女のところに踏み込む。


「これ、私のでしょ」


 彼女はそんな僕に、カツラを上げて見せる。なんだか生首みたいだ。


「う、うん」


「これ、取りにきたの。じゃあ帰るね」


「ちょっとまって」


 よくは分からないけど、彼方さんが動き出す前に僕はそう言っていた。


「僕の日記見たでしょ」


 そう言っていた。共通の話題といったらそれしかない。


「うん、みた」


 再び立ち止まり、彼女は言った。


「どうして?」


 本当にどうしてだろう。つまり彼女は僕の家に入ったということだ。ていうかどうやって?


「どうしてって、相沢浮いてたからじゃない!!」


 まあ確かに。


 ―――彼方さん―――


 相沢に叫んで気がついた。おそらく彼は私に興味を持ってもらいたくてそんなことをしていたのだろう。何年も。そしてその思惑通り私は動いてしまった。くやしい。


 というか、今の一言で、過去にも私が彼の部屋に侵入したことがばれてしまった。

 やばい。


 これをネタに交際を迫られたら、私はおそらくオーケーしてしまう。すぐ別れるかも知れないけど、今この瞬間においてはイエス一択だ。


 なんという罠!! 幼児退行したい。


「あんたの目的は何?」


 私はそう言った。逃げ場がないなら、今この場で何らかの落としどころを見つけなければならない。


「キミと、話したかったんだ」


 少しの沈黙のあと、彼はそう言った。


「なんの?」


 なるべく感情をこめずに私は言う。


「その、友だちみたいな話とか、」


 友達?


 ええぇぇぇ~


 と思ったことが伝わったようだ。慌てだす相沢。


「そ、それから、君のチャンネルだけど、僕にも協力できることがあると思って」


 いや、間に合ってる。でも奴の話は止まらない。


「浮くんだよ。彼方さん自身でもいい。パフェでも、スプーンでも、コーヒーの中身でも」


 適当言ってるなとは思うが、最後のコーヒーの中身という言葉にはっとさせられた。


 モリモリ衣装で喫茶店のテーブルに座る私。目の前にはカップに入ったコーヒー。


「なんていい香り、新しい猫草を買ってもらった猫みたいに興奮しています」


 とかなんとか私。


 そこまでは通常。しかしここから、私は動かない。不安になる視聴者。それでも動かない私。


 そんなあるとき、コーヒーが独りでにふわふわと浮きだすのだ。


 宇宙飛行士みたいにそれを飲む私。自分の身体を消したり出したりして、おいしさや喜びを表現するのもいい。あるいはコーヒーが身体を通っていく様子だけ、見せるのもありかも知れない。できるかどうかはわからないけど。


 とにかく、そんな映像が一瞬で脳裏に展開された。


「いいわね!!」


 素の私ではない。動画配信者としての私が一も二もなくそう言っていた。


 ―――相沢―――


 我ながらなに言ってるのか分からなかった。僕は自分の身体しか浮かせられない。それなのに彼方さんや、さらにコーヒーを浮かすだなんて、そんなの思ってもみなかったことだ。


 だが、その話に彼女は食いついた。


 それでピザを食べながら、僕らは夜遅くまで彼女の動画の演出について話し合った。


 彼方さんは、運営にあんまり乗り気ではないと言いながらもその様子は真剣だった。


 夜が明け始めたころ、彼女は僕の部屋を後にした。


―――彼方さん―――


 空はもうすっかり明るくなっていた。


 気分は、良い。もちろん深夜テンションだからだ。


 だがあいつは本当に私のことをよく見ている。発想力はないが、よく気がつく。それをきっかけに思ってもみない考えがどんどん浮かぶ。それに彼は、私がどんな無茶ぶりを言っても、肯定的に受け止めてくれる。


 意外にいいやつだ。


 いや、いかん。


 今は気分が高揚しているんだ。


 とにかく早くシャワーを浴びて寝てしまおう。


 と、その前に、


 すっかり忘れていたが、私は相沢の部屋で消えなくなったのだ。


 その確認を一応してみる。


 姿見の前に立つ。


 目を閉じる。


 透明になる。


 だが、目の前は暗いまま。透明ではないということだ。


 目を開けると、身体は見える。


 


 はて?


 消えない。

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