第9話 奮起するナチス宇宙軍
「地球の周りを宇宙軍で封鎖、そして陸海空の各軍で、徹底的に地球内を探索して、アースノアを見つけるということか…」
小型ドローンを通して、ニュース内容から現状の情報を集めている俺は呟いた。
「これどう突破するの…?」
ドローンを通して写っている大型モニターには、ナチスの宇宙艦艇が地球を囲うように止まっている様子が映し出させれており、それを見たノアは俺にどうするか尋ねてきた。
「アースノアの防御力なら余裕で突破できるけど…」
「けど…?」
テレビを見つめながら俺は考える。
敵の主砲は光線砲のため、万全な状態のアースノアなら完全に防ぎ切ることが出来るだろうが、正直な所、話し合おうとすることなく、いきなり攻撃されたことに少々腹が立っている。折角だ…地球を囲っている艦艇にちょっかい出して、煽ってやるか。
「あら、何を企んでいるのかしら?」
どうやら顔に出ていたようで、マリナ姐さんにそのことを指摘された。
「調子に乗っている奴らのプライドを折ってやろうと思いましてね」
笑みを浮かべながら自分の考えを全員に伝えた。
「それ本当に大丈夫なの?」
「私は大丈夫だと思うわよ」
考えを伝えると、ノアは不安そうに止めようとし、一方でアースノアの力を理解しているマリナ姐さんは考えに賛成する。
「まぁ、ノアとランはアースノアの力をしっかりと見といてくれ…出発時間は、今から十分後だ」
時計を見て時間を確認した俺は、出発時間を伝えて機関室に向かった。
○
「サン、点検終わっているよな?」
機関室にやってきた俺は、サンに点検が完了しているかどうか尋ねた。
「勿論です」
「よし…機関始動!」
サンから点検完了の報告を受け、俺は機関を作動させる。
「ボイラー内圧力上昇。72…85…90…100…室圧120%フライホイール接続…点火」
ボイラー内のメーターを見ていたサンが、室圧が最高になると共に、フライホイールに接続したことで、森の中にアースノアの機関の音が響き渡り始める。
「超高次元障壁、現在出力100%。その他システム全て異常なし」
制御室ではルナが次元障壁を展開とシステムのチェックを行ってくれた。
「光学迷彩解除!アースノア、出発進行!!」
光学迷彩を解除したアースノアは、周辺に響き渡るほど大きな音で汽笛を鳴らし、宇宙に向けて上昇を始める。
「ジュピター、サターン!」
宇宙に向けて上昇し始める中、俺は機関車にある無線機を手に取り、武装が積まれている7両目にいるギアノイドのジュピターとサターンの名を呼んだ。
『はいはーい!何事何事?』
無線機を取ったのはジュピターだった。
「小型迎撃誘導弾を装填しておいてくれ、恐らく必要になるだろうからな」
『待ってましたー!』
久々の出番に、ジュピターは嬉しそうに返事をした後、そのまま一方的に通信を切った。
「ルナ、妨害電波と破滅電磁波の用意を頼む」
「了解」
武装の迎撃誘導弾とはまた別の武装の用意をルナに頼む。
「これでこちらの準備は完了っと…このまま地球軌道に突入だ」
準備が整い、アースノアは再び汽笛を鳴らし、そのまま大気圏を超えて宇宙空間に向かう。
○
アースノア鹵獲のため、ナチス宇宙軍は現在、全ての艦艇を地球軌道上に展開し、目標が宇宙空間に出てこないよう見張っていた。
そんな大規模な艦隊の旗艦を務めているのは、戦艦ビスマルクの名を受け継いだ、超弩級宇宙戦艦ノイエスビスマルである。
ナチス宇宙軍の艦艇は基本的に、Uボートの設計図を元に設計建造されたUUBと呼ばれる葉巻型の宇宙船なのだが、ノイエスビスマルクは他と違い、水上艦の形をしている。その理由としては、前部甲板に搭載している武装が関係している。ノイエスビスマルクは建造時、陸上最強クラスの武器である80cm列車砲を搭載することになり、搭載するには葉巻型では不便ということで、水上艦の形になったのだ。
普段は使うことがない列車砲だが、使用時には宇宙軍の主力兵装である光線砲以上の破壊力を齎すことが出来るため、宇宙軍でも決戦兵器として見られている。
「目標を発見しただと?」
ノイエスビスマルクの艦橋にて、今回の艦隊指揮を任せられたヒストン・ヒンデンブルクの元に空軍から報告が入る。
「はっ、偵察機を飛ばしていた空軍によると、パリ郊外の上空にて、目標を確認したとのことです」
敬礼を行いながら、乗組員は空軍からの報告を伝える。
「…よし、まずはUFO型宙雷艇で、機雷を周辺にばら蒔いて時間を稼げ!その間に、艦隊を集め一気に叩く!」
「はっ!」
ヒンデンブルクからの命令を受け、乗組員は待機さていたUFO型宙雷艇に指示を出す。
UFO型宙雷艇。第二次世界大戦時、ドイツが極秘に開発が進められていたハウニブを宇宙空間でも動けるように建造された宇宙雷撃艇である。
「全艦隊前進せよ!必ずや作戦を成功させるのだ!!」
ハイル・ヒトラー!!
ハイル・ハイドリヒ!!
ヒンデンブルクの命令を受け、ナチス宇宙軍の大艦隊は初代総統と現総統を何度も称えながら、目標達成に向けて動き出した。