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第5話 少女ラン

アースノアに戻った俺達は、重傷を負っている少女を食堂車のソファに寝かせ、手当を始めた。


「応急処置はこれでいいかな…」


医療の知識がある俺は、医療キッドを使い少女に一通り手当を行った。

少女の怪我は比較的に軽いモノが多かったのだが、唯一気になる点としては血だ。

あれだけ傷があったということは、その分大量の血が流れているはずだ。

輸血パックは何個かあるが、血液型が分からない中、下手に入れることは出来ないので、今は彼女自身の再生能力を信じるしかない。


「これで大丈夫なのかな…」


心配そうにノアはソファに横になっている少女を見つめる。

少々重い空気が食堂車に流れる中、食堂車の後方の扉が開いた。


「皆さーん!晩御飯の時間ですよー!」


元気の良い声を出しながら、食堂車に料理人のギアノイドヴィーナスが、人数分のオムライスをワゴンに乗せ、食堂車まで運んで来た。


「本日は、仲間が増えたということで、出来るだけ奮発してオムライスに致しました!」

「久々のオムライスだー!」


ヴィーナスがオムライスを並べようとする中、ノアはオムライスを見るや否や自分の分を取った。


「いただきます!」


目を輝かせノアはオムライスの一部をスプーンで掬い、そのまま口に運んだ。


「……久々に、暖かくて美味しい物食べよ~」


ノアは嬉し涙を流しながら、オムライスを食べ進めていく。


「食料が十分に補給出来たら、もっと美味しい物を作りまーす!」


ノアの言葉にヴィーナスは喜びながら、俺と少女の分のオムライスを目の前の机の上に置いた。

少女を様子を見ながら、俺がオムライスを食べようとしたその時、


「…っ!」


寝ていた少女がいきなり飛び起き、俺のオムライスを取ろうとしてきた。


「おっと!」


オムライスを取ろうとしてくる少女の顔に片手を当てて押さえつける。


「君の分はそっちにあるから!それを食べて!」


目線で少女に少女の分のオムライスを教える。

それに気がついた少女は、スプーンを使うことなく手掴みで、勢いよく食べ始める。


「それは食べ物じゃない!」


取られないように手で持っていたオムライスをテーブルの上に置き、皿まで食べようとした少女を止めた。


「もっと欲しいんじゃないの?」


自分の分を食べ終わったノアは、少女の気持ちを代弁した。


「……分かった…俺の分あげるよ。だけど、皿は食うなよ?」


皿を食わないのを条件に、俺の分のオムライスを少女に渡した。

俺の分のオムライスを受け取った少女は、先程と同様に手を使って、無我夢中にオムライスを食べ始める。


「お腹が減っていたんだね~」


オムライスを食べる少女の頭を撫でながら、ノアは優しく声をかける。


「♪」


オムライスを食べ終えた少女は、満足そうな顔をして、舌で口の周りに着いているケチャップを拭き取った。


「…君、名前は言える?」

「?」


少女に名前を尋ねてみるが、少女はこちらを向いて首を傾げるだけで、自分の名前を言うことは無かった。


「名前が無いのかな?」

「そうぽいな…言葉も喋れないみたいだし」


少女の状態をノアと話し合いながら推測する。


「なら、名前をつけたあげた方がいいわね」


オムライスを食べ終わり、布で口周りを拭き取ったマリナ姐さんが、少女に名前をつけることを提案した。


「連れていくのは確定事項か…」


俺は小さな声で呟いた。

まぁ怪我も治ってないし、このままこの世界に置いていってもろくな目に合わないだろうからな。


「うーん…ドラゴンみたいだから…ランとかどう?可愛くない?」


ノアは少し考えた後、少女の名前の候補としてランを提案した。


「あらいいわね、私が考えていたドラちゃんより良いわ」


マリナ姐さんは笑みを浮かべながら、ノアの案に賛成した。

ノア、ありがとう。ドラになってたら色々とやばい気がする。


「俺もノアのランでいいと思うぞ」


ドラという名前になる前に、俺もノアの案に賛成した。


「わーい!じゃあランちゃん、これからよろしくね!」

「?」


自分の案が採用され、ノアは嬉しそうにランに抱きついた。一方のランは何を言っているかさっぱりと言った顔をしている。

さてと、マトモな世界に行ったら、色々と揃えないと行けないな…

色々なことを考えながら、俺ははしゃいでいる女性陣を食堂車に残して、機関室に向かった。





「点検終わったか?」


機関室にやってきた俺はサン達にそう声をかけた。


「問題ありません。いつでも出発することが可能です!」

「サンキュー」


サン達に礼を伝えながら、俺は出発時間を考えることにした。

今すぐに出てもいいけど、折角ならもう少し食料や資材を集めたいな…なら、余裕を持って明日の昼に出るか…


「サン、出発時間は明日の午前11時頃にする。それまでに機関を始動させておいてくれ」

「了解です」


サンに出発時間を伝え、俺はマリナ姐さん達にそのことを伝えるために食堂車に戻ることにした。





食堂車に戻ると、この世界で取れた果実を皆が分け合いながら食べていた。


「あっ、龍介も食べよ!見た目はあれだけど、普通に美味しいよ!」

「じゃあ一口」


ノアに進められ、カットされている果実を一つ食べようとしたその時


ドンッ!


突如轟音ともに車体が大きく揺れた。


「なになに!?」


突然の出来事にノアが混乱する中、俺は少女が怯えていることに気がついた。

更に車内放送が始まった。


『緊急事態発生、緊急事態発生。正体不明の超巨大生物が襲撃中、超巨大生物が襲撃中!』


車内放送を通じて、ルナが襲撃されていることを教えてくれた。


「サン!機関始動!!ルナ!次元障壁展開!!」


また車体が揺れながら、俺は食堂車にある受話器を取り、サンとルナに命令した。

それと共にアースノアのエンジン音が辺りに鳴り響き始めた。


「見てあれ!」


ノアに言われ、俺達はノアが指さしている方を見てみると、倉庫になっている六両目が、ドラゴンに襲われていた。

幸い、ルナが直ぐに次元障壁を張ってくれたお陰で、最初の攻撃以降ドラゴンはアースノアに攻撃が出来ていないようだ。


「ラン…?」


ランの怯えが酷くなっているのを見て、俺は全てを察した。

恐らくあの龍が、ランを痛めつけた張本人なんだろう。次元障壁が破られることはないだろうが、このままではランの精神が安定しない。緊急発進するしかないか。


「マリナ姐さん、ノア!ランのこと任せたぞ!」

「分かったわ」

「うん!」


マリナ姐さんとノアにランを任せ、俺はもう一度機関室に向かった。





「状況は!?」

「機関出力は現状76%です」

「超次元障壁、出力99.99%です」


俺が機関室に来て直ぐ、サンとルナはそれぞれの報告を行ってくれる。


「よし、アースノア発進!」


俺の言葉を受け、アースノアは汽笛を鳴らし、宇宙に向けて走り出した。


ゴアァァァァァ!!!


宇宙に向けて走り出すアースノアをドラゴンは、火の玉を放って執拗に追ってきたが、大気圏を超えた辺りで引き返して行った。


「このまま次元跳躍(ディメンションワープ)を行う!機関出力最大!!」

「了解」

「次元障壁異常なし。いつでも行けます」


月軌道を抜けたあたりで、最高速度を出せるようになったアースノアは、次の世界へと次元跳躍を行った。

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