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第3話 新たな世界

次元跳躍を行ったアースノアは、新たな並行世界の宇宙空間に出てきた。


「超高次元障壁、出力18%まで低下」

「機関出力低下、現在微速前進中…機関の急激冷却開始します」


サンとルナから、次元跳躍によるアースノアの車体状況の報告を受ける。


「じゃあ、このまま星に向かってくれ。俺は一度客車に戻る」

「了解です」

「お任せ下さい」


列車の運行と管理を二機に任せ、俺は炭水車の中を通って客車へ戻って行った。





「おえ…気持ち悪い」


二両目に来ると、ノアが今にも吐きそうな顔をして、部屋から出てきた。


「ワープ酔いか?」

「ワープ、酔い…?というか、さっきの跳躍ってやつ、なんだったの……?」


ワープの振動で酔っていることをノアに指摘すると、ノアは死にそうな顔をしながら様々なことを聞いてきた。


「次元跳躍。世界と世界を跨ぐために行うワープのことだ。んで、その際に起きる振動で、酔ってしまうことを俺らはワープ酔いって呼んでるんだよ」

「……」


俺は大まかに次元跳躍とワープ酔いについて説明を行った。

この他にも、次元跳躍を行う際は、亜光速を出す必要があるとか、その速度に耐えるために、超高次元障壁を張る必要があったりとか、詳しい説明があるが…今のノア言ったら混乱するだけだからやめておこう。というか、多分それどころじゃないな…

ノアに説明をしていた俺だが、ノアの顔が青ざめて行くのを見て、それどころでは無いと判断し、バケツの用意をすることにした。


《しばらくお待ちください》


「スッキリした」


出す物を出したノアは、清々しい顔をしていた。

間一髪袋が間に合ったため、廊下が悲惨なことにならなかった。


「これで終わりっと…」


丁度、俺が後始末を終わらせると、車内放送が始まった。


『52光年先に特異点反応を確認。機関の冷却が完了次第、長距離空間跳躍(ロングワープ)を連続で行います』


ルナは業務報告を終えると、そのまま放送を終わらせた。


「…特異点反応って……何…?」


放送から聞こえてきいた特異点反応に興味を示したノアは、首を傾げながら俺に尋ねてきた。


「特異点反応っては…まぁ、平たく言えば地球から出ている反応のことだな」


誰でも分かるように俺はノアに説明した。


「52光年に別世界の地球があるのか~…えっ何年かかるの?光速度でも52年だよ?いつ地球に着くの!?」


ノアは別世界に心躍らせたが、地球まで途方もない距離があることに気づき、俺に到着時間を尋ねてきた。


「直ぐだよ直ぐ…ワープを連続で行って、一気に距離を詰める」

「へっ?」


ノアに地球までの行き方を説明していると、再び車内放送が始まった。


『これより長距離空間跳躍(ロングワープ)を開始します』


ルナが放送でそう言うと、アースノアは速度を上げて進み始める。それと同時にアースノアを覆うようにバリアが張られた。

そして次の瞬間、窓の外の景色が一転し、アースノアは何処かの惑星までやってきていた。


「えっなに!?」


ノアが何が起きたか分かっていない中、アースノアは再び空間跳躍を行った。そこから数回アースノアは長距離空間跳躍を行い、火星軌道に到達した。


「ほ、本当に…一瞬で…」


顔色が悪いノアは、フラつきながら窓から火星を見つめて呟く。


「このまま進み続ければ、地球に辿り着くはずだ」


そうこうしているうちに、アースノアは火星を跡にし、地球に向けて進み続ける。

数分後には客車の外に地球の姿が写ったのだが…


「なんか…赤くない?」


外に写った地球を見て、ノアは首を傾げながら俺に聞いてきた。

今、アースノアから見える地球は、青い海が真っ赤に染まっており、大陸の位置も普通のとは変わっている。


「これ本当に地球なの?」


不安そうな顔を浮かべながら、ノアは俺に尋ねてきた。


「ああ…何があったか分からないが、あれがこの世界の地球だ」

「む~…」


ノアに地球だということを説明するが、ノアは信じられないような表情を浮かべる。


「まぁ、何があったか地上に降り次第、調べるしかないな」


アースノアが地球に降下を始める中、ノアにそう言い聞かせ、俺は地上の様子を窓から見つめる。

地上には見るからに危険そうな紫色の植物などが自生しており、街のような場所は見られない。人間がそもそも居ない可能性があるな。


「ノア、食堂車に行くぞ」

「うん」


地上を暫く見つめた俺はマリナ姐さんと今後の方針を決めるため、ノアを連れて食堂車に向かうことにした。





紫色をした不気味な森の中に、異様の姿をした幼子が一人居た。幼子の身体には無数の傷がついており、素人が見ても重傷だと分かる。

片足を引き摺りながら彼女は、疲れたのか木にもたれ掛かり、その場に座り込んだ。


「…」


座り込み目を瞑っていた彼女は、聞こえてきた音が気になり、ふと目を開ける。


「…蛇……?」


彼女の視線の先には、降下中のアースノアの姿があった。

アースノアを見た彼女は、無意識に手を伸ばす。


「…大きな、蛇さん……」


列車というものを知らない彼女は、アースノアを蛇だと思い、手を伸ばしながら呟く。そしてそのまま、力なく前のめりに倒れた。

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