第2話 次元跳躍
ノアがアースノアに乗車することが決まった後、俺はノアを連れて六両目の倉庫車に辿り着いた。
「さてと、そのバイクはどうする?」
「一応、ここまで愛用してきたから…あまり捨てたくないかな…」
「了解」
ノアのここまで乗ってきたバイクを捨てたくないという意思を確認した後、俺は倉庫車の扉を開けた。
「サターン、居るか~?」
「ここに居ますよー」
列車の武装が搭載されている武装車から、サンより少し大きいギアノイドが姿を現す。
「このバイクを頼む」
「了解ー」
サターンは軽々とバイクを持ち上げ、倉庫車の中にある機械にぶち込んだ。
「ちょっ!何してるの!」
バイクが機械にぶち込まれる様子を見て、ノアは止めようする。
「まぁまぁ、見とけって」
俺はノアを落ち着かせ、事の顛末を見届けるように促した。
機械にバイクを入れてから数十秒後、コンパクトなサイズで透明な長方形の箱に入ったバイクが出てきた。
「…えっ、なにこれ…?」
小さくなったバイクを見つめながら呟くノアに、俺は説明を始める。
「あれは空間圧縮装置と言ってな…空間…いや空気ごと物体を圧縮させ、小さくさせることが出来る便利な装置だ…あっ、大きさが小さくなっているだけで、重さは変わらないから、そこだけ気をつけてくれ」
バイクを小さくさせた装置、空間圧縮装置について、ノアに説明する。
「…元に戻せるよね?」
バイクを見つめていたノアは、俺のことを疑いの眼差しで見つめる。
「勿論だ。あちらこちらに圧縮解凍装置が置かれている…それを使えば、元のサイズに戻るさ」
「それならいいけど…」
元に戻せると聞いても、ノアはまだ疑っているようだ。
まぁ、いつかそれを証明すれば良いだろう…
「これはどう致しますー?」
サターンは小さくなったバイクを持ち上げて、バイクの置き場所を尋ねてきた。
「第二倉庫車に運んでくれ」
「はいー」
指示を受け、サターンはバイクを持って最後尾にある第二の倉庫車に向かって行った。
「バイクも収納できたし、食堂車に行こうか」
「うん」
バイクの問題が片付いたことで、俺はノアを連れて四両目の食堂車に向かうことにした。
〇
食堂車に入ると、マリナ姐さんが珈琲を洋菓子と共に呑んで寛いでいた。
「あら、新入りさん?」
「は、はい!ノア・アルファルトです!」
俺達に気づいたマリナ姐さんに、ノアは自己紹介を行った。
「ふふ、マリナよ。よろしくねノアちゃん」
「はい!」
マリナ姐さんはノアことを気に入ったようで、笑みを浮かべながら挨拶をした。
「さてと…龍ちゃん?作業の様子はどうだった…?」
「冷却は完了、今は点検中とのことです」
「そう。それなら良かった」
作業の状況を聞きいたマリナ姐さんは、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「取り敢えず、ノアちゃんを部屋に案内してあげて」
「はーい。ノア、着いてきてくれ」
「うん」
マリナ姐さんにも言われたため、俺はノアを空いている部屋に案内することにした。
ノアを連れて、三両目と四両目を繋ぐ扉を開け、先に進む。
「ここが浴室と手洗いな…風呂には入りたかったら、いつでも入っていいからな」
「お風呂…」
ノアを連れて食堂車から出た後、俺は浴室と手洗い場がある三両目の浴室車について紹介を行う。
「で、次の車両が…」
列車の扉を開け、二両目の個人部屋がある客車に案内する。
「基本的に全部空き部屋だから、好きな部屋を選んでくれ」
「どれにしよう…」
空き部屋が多くあるため、ノアはどの部屋にするか頭を抱える。
「……この部屋にした!」
ノアは004と書かれた札が扉にかかっている部屋を選んだ。
「綺麗…」
「定期的に掃除しているからな」
部屋に入ったノアは、部屋の綺麗さに見とれる。
「ノアの好みに装飾していいよ」
「ホント!?」
部屋の装飾していいと伝えると、ノアは目を輝かせて喜んだ。
何だこの可愛い生き物…
そんなことを思いつつ俺は、
「じゃあ、後はご自由に」
一言かけて部屋をノアに残して出て行った。
〇
「作業の進捗はどうだ…?」
ノアを置いて、俺は外で機関車の点検を行っている作業班に声をかける。
「現在の作業進捗率89%デス」
俺の質問に工具を持っているギアノイドのマーズが答える。
「内部点検完了!」
そんなことを言いながら手のひらサイズのギアノイド、マーキュリーが機関車の下から姿を現した。
「冷却並びに点検完了いたしました」
「お疲れさん」
作業班長のギアノイドユラナスから終わったと聞き、皆に労いの言葉をかけながら腕時計で、今の時間を確認した。
「…じゃあ、戻ってマリナ姐さん達に、今から出発するのと、その十分後に次元跳躍を行うと伝えといてくれ」
「「「了解!」」」
時間を確認した俺は、作業班に出発時間の伝言を任せた。
伝言を任せられた作業班は、返事を返した後工具などを手早く片付け、客車に向かって行った。
「さてと…サン、ルナ!準備を始めるぞ!」
「「はい!」」
出発時間が決まったことで俺は、機関室に居たサンと休憩させていたギアノイドのルナを呼び、出発の準備を始める。
「機関始動!」
機関室にあるレバーを俺が倒すのと同時に、点検のため停止していたアースノアの機関が音を立てて動き始める。
「室圧上昇…120%フライホイール接続します」
サンは手馴れた手つきで、フライホイールを接続させる。すると、黒焦げた大地に、アースノアの機関の音が鳴り響き始める。
「超高次元障壁の展開を確認」
機関が動き始めた後、炭水車のような見た目をしている制御室でルナがモニターを見ながら伝える。
「前方ようし、後方ようし…アースノア!出発進行!!」
前後の確認を取った俺は、アースノア出発の合図を出す。
アースノアは汽笛を鳴らし、進み始める。
動き出したアースノアは止まることなく、様々な星が無限に広がっている宇宙に向けて進み続ける。
「現在、超高次元障壁正常値」
「了解。機関出力最大!」
ルナから次元障壁に問題がないと聞き、アースノアの速度を最大まで上げ始める。
「あーあー…これより、次元跳躍を開始する。くれぐれも馬鹿な真似はしないように」
無線機を手に取った俺は、アースノア全体に注意喚起を行った後、次元跳躍のタイミングを見定める。
「機関出力最大です」
アースノアは、光を超える速さで宇宙空間を突き進む。
「次元跳躍!」
タイミングを見定め、俺は機関室にあるレバーを勢いよく倒した。
レバーを倒すと、アースノアの目の前の空間に穴が開き、アースノアはその中へと入って行った。
アースノアが通過した後、穴は何事も無かったかのように閉まった。