第19話 崇められる者
「見つからないように頼むよ」
「了解ですー」
米俵を積んだ荷台をアースノアまで持ってきた俺らは、サターン達に積み込みを頼み、そのままもう一度街へと向かった。
「さてと、まだ買えていない野菜は〜…」
前に書いといたメモを見ながら、足りない野菜を探すことにした。
「…」
ランはボーッと空を見つめながら、荷台の上に座っている。可愛い
「ラ〜ン?気になる物があったら、言っていいからね〜」
「…」
そんなランに、欲しいものを買うと約束する。
「んっ」
暫く進んでいると、荷台から降りていたランが、服の裾を引っ張りながら、とある店を指さした。
ランが指さした先には、甘味処と書かれた看板が出ていた。
「1回休憩しようか」
「…」
俺の言葉にランは無言で頷く。
そのため、俺らは甘味処で一度休憩をすることにした。
「よいしょっと…」
道端に出されていた長椅子に座った。
「あらぁ?親子でいらっしゃい!」
ランを座らせていると、店の人がお品書きを片手にやってきた。
「旅人かい?親子とは珍しいわね〜」
「ええ、まぁ」
話を合わせるため、俺とランは親子で旅している者ということにした。
「おはぎ2つと、お茶と水をそれぞれ頼む」
「あいよ!」
お品書きを見た俺は、店員にラン用のお汁粉とそれぞれの飲み物を頼んだ。
道行く人を見つめながら暫く待っていると、
「はい、ご注文の品だよ」
おはぎ2つを乗せた皿と飲み物を乗せた盆を、先程の店員が持ってきた。
「…」
ランは有無を言わず、おはぎを二口でペロッと食べ終えた。
「!」
美味しいのか、満面の笑みを浮かべ、尻尾を犬のように振りながらこっちを見てくる。
「……もう一ついいよ」
「!」
目の輝くにやられ、自分の分のおはぎをランにあげることにした。
「お嬢ちゃんの食べっぷりは、見ていて気持ちいいよ!ほれ、これはサービスだよ」
今度は味わって食べ始めるランを見て、店員は笑みを浮かべながら団子もプレゼントしてくれた。
「態々ありがとうございます」
「いいのよ!私の奢りだから!」
礼を述べると、店員は笑みを浮かべてくれた。
「今はこれしかなくてな…これで会計頼む」
「いやいや!そんなに受け取れないよ!」
小判を一枚取り出すと、店員は断ろうとしてきたが、本当にこれしかない。
「本当にこれくらいしかなくてな…お釣りも要らぬから頼む」
「………わかったわよ…毎度上がり!」
俺のゴリ押しに負けた店員は、素直に出した小判を受け取ってくれた。
ふとランを見てみると、おはぎを既に食べ終わっており、サービスで用意してくれた団子の最後の一個を食べていた。
そしてお茶と水をそれぞれ飲み干した後、甘味処から出ることにした。
「それじゃあ、我々はそろそろ出るとしよう」
「ありがとさん!二人に酒呑童子様の加護がありますように!」
「酒呑童子…?」
店員に一言かけて出ようとした時、酒呑童子の加護と聞き、俺はそれを詳しく聞くことにした。
「この土地は代々酒呑童子様に守って貰っているのよ…実際、鬼人とかが多いでしょ?」
「確かに」
酒呑童子が守っているため、鬼人が多いということを聞き納得した。
しかし酒呑童子ねぇ〜…酒を持っていくか
「酒呑童子様はどこに…?」
「北にある山中に居るとは聞いた事はあるが…そう簡単に人の前に出てくることは無いわよ?」
酒呑童子の居場所を尋ねると、心配そうな表情をしながら店員は場所を教えてくれた。
「折角なので、行ってみることにします」
「それなら、気おつけていってらっしゃい!」
「色々とありがとうございました」
礼を述べ、俺はランを荷台の上に乗せ、そのまま甘味処を去って行った。
そしてそのまま、酒屋を探すことにした。
街中を歩いていると、酒屋の看板がかかっている店を見つけることができた。
「…酒吞童子が愛した山海あります…?」
店に入ろうとした時、扉の前に貼られていた紙が気になった。
山海という酒が気になりながらも、俺は店の中に入った。
「おう、いらっしゃい!何をお求めで?」
店の中には気前が良さそうな店長が居た。
「山海という酒が気になってね、それを樽で二つ頂けるかな?」
「あいよ!すぐ用意するよ!おーい!山海を樽ごと二つ持ってこい!!」
山海を樽ごと二つ頼むと、店長は店の奥に向けて声をかけた。
店の奥に居るだろう店員が、山海を持ってくるまでの間に、会計を済ませることにした。
「山海樽二つで、2両と935銭だね」
「それじゃあこれで頼むよ、釣りは結構だ」
「毎度!!」
代金として俺は小判三枚を支払った。
それと同時に鍛えられている身体つきをした男が、山海とでかでかと書かれた樽を二つ同時に運んできた。
「これに乗せればいいんですね」
「嗚呼頼む」
男は山海を荷台に積み、落ちないように縄を縛ってくれた。
「色々とありがとさん」
「またのお越しを」
酒を手に入れた俺は、そのままランと共に酒吞童子が居るという山に向かうことにした。
〇
「ここか?」
甘味処の店員に言われた通り、俺とランは北にある山に辿り着いた。
山道に入る道には、酒天通りと書かれているため、間違いないだろう。
「さてと、流石に荷台は置いて行くか」
俺は荷台が邪魔になると判断し、一つの樽だけ持ち、もう一つの酒樽を乗せたまま、荷台を茂みの中に隠した。
「はいラン。ここからは手を繋ごうか」
「…」
片手で酒樽を担ぎ、空いている手でランとしっかりと手を繋ぎ、そのまま山道へと入っていった。
鬱蒼とした森の中にある山道を歩き続き、道を塞がるように置かれている大岩を迂回しようとしたその時、
「よぉ…異世界の人間」
岩の上から誰かが俺に声をかけた。
声が来た方を見ると、そこには大きな盃を持った褐色肌で、真っ赤な角が二本生えた金髪の男が岩の上でしゃがみながらこちらを見ていた。
どうやら、この男が酒吞童子のようだ。




