第10話 ヴェルト宇宙艦隊戦
地球軌道に向けて進み続けていると、
「レーダーに感あり。無数の機雷郡です」
制御室のモニターを見つめていたルナから前方の機雷のことを報告してくれた。
「次元障壁、出力最大。そのまま突入だ!」
汽笛を鳴らしながら、アースノアは避けることなく機雷に突撃する。直進するアースノアに機雷が何度も当たるが、アースノアは損傷するどころか、衝撃で揺れることなく突き進む。
「超高次元障壁消耗率、現在0.01%」
大量の機雷を受けているが、それでも次元障壁にとっては大した攻撃ではなく、消耗率はほぼゼロに等しい。
「前方に艦影を確認。超大型艦1隻、大型艦3隻、中型艦8隻、小型艦15隻、超小型艦20隻の計47隻です」
「来たな…迎撃誘導弾、1番から3番、7番から10番…てーーっ!!」
武装車にいるサターン達に、装填した6発の迎撃誘導弾を発射させ、放たれた迎撃誘導弾は、真っ直ぐ敵艦隊に向かっていく。
敵艦隊は迎撃しようと光線を乱射しながら回避行動に移るが、迎撃誘導弾は不規則な動きを行って光線を避けつつ、目標を追尾する。
そしてついに、全弾がそれぞれ小型艦の中央部に命中、命中した小型艦達は真っ二つに折れるように爆沈した。
『次弾装填全て完了』
敵艦が爆沈すると共に、武装車から次弾装填完了の報告が入る。
「よし、合図があるまでそのまま待機だ」
待機命令だけ出しておいて、俺はそのまま通信を切った。
「敵、砲撃を開始しました」
敵の射程内に入ったようで、敵艦隊は荷電粒子砲の雨を振らせてきた。だが荷電粒子砲の雨では、次元障壁を打ち破ることは出来ないので、アースノアは構うことなく突き進む。
荷電粒子砲、光線、ミサイルが雨のように降り注ぐ中、機雷宙域を突き進むという普通の列車なら耐えられないような所を悠々と突き進むアースノアは圧巻だ。
そんな風に余裕をこいていると、超大型艦が艦隊の前にで始めた。
「……おいおい、あれって…」
何をするんだろう。そう思っていたら、超大型艦の甲板から巨大な砲が姿を現した。
「80cm列車砲。ナチスドイツが誇る最強クラスの兵器です」
巨大な砲について、ルナが解説してくれる。
宇宙に陸上兵器を持ってくるなよ…
そんなことを思っていたら、列車砲から一発の砲弾が勢いよく放たれた。
○
少し時を遡り、ヒンデンブルクの視点に変わる。
「目標!機雷郡に突入しました」
「何とか間に合ったようだな…UFO型宙雷艇も艦隊に組み込め!」
レーダーでアースノアを捉えているノイエスビスマルクは、アースノアが機雷郡に入った所もしっかりと捉えていた。
「も、目標!真っ直ぐ機雷郡を貫けてきます!」
レーダーを確認していた乗組員は、真っ直ぐ突き進んでくるアースノアを見て、驚きながら報告した。だがヒンデンブルクは、その事に一切驚くことは無かった。
(瞬間移動が使えると言われている超文明の列車だ。シールドのようなモノを展開する技術があってもおかしくないだろう…)
エッセンからアースノアについて聞いていたヒンデンブルクは、真っ直ぐとアースノアが来るだろう方向を見つめる。
「ヒンデンブルク司令長官!目標、我々の射程外からミサイルを放ってきました!!」
「対ミサイル防御!全艦回避行動に移れ!!」
ミサイル発射の報告を受け、ヒンデンブルクは的確な指示を艦隊に飛ばすが、6発のミサイルはそれぞれ、UUB型宇宙駆逐艦のゲオルクティーレ、リヒャルトバイツェン、ヘルマンシェーマン、ブルーノハイネマン、ハンスロディ、エーリッヒシュタインブリンクに命中、たったの一撃で各艦を爆沈させてしまった。
「やはり一筋縄では行かないか…全艦通達!目標が射程圏内に入り次第、各艦自由射撃開始!」
アースノアが向かってくる中、ヒンデンブルクは自由射撃を許可した。
最初に攻撃を始めたのは、UUB型宇宙巡洋戦艦のシャルンホルスト、グナイゼナウ、ヨルクの三艦だったが、それぞれが搭載している光線砲の強化版、40cm三連装圧縮式光線砲は、アースノアの次元障壁によって打ち消されてしまう。
その後も、射程圏内に捉えた艦艇達ができる攻撃を全てぶつけるが、アースノアに傷一つつけることは出来なかった。
「……核弾頭弾装填、80cm艦艇砲発射用意!」
考えた末、ヒンデンブルクは列車砲こと80cm艦艇砲の用意を進めることにした。
「か、核弾頭弾をですか!?」
ヒンデンブルクの命令を聞き、乗組員達は驚いた。
核弾頭弾。ノイエスビスマルクの80cm艦艇砲の威力を更に高めるべく専用に開発された核兵器で、その威力は直径15kmある小惑星を粉砕することが可能とされている。
「目標のシールドを破るにはこれしかない!急げ!!」
「は、はっ!」
乗組員達は艦艇砲に核弾頭弾を装填させたのち、甲板のハッチを開けて、そのまま艦内にあった艦艇砲を甲板上までエレベーターであげた。
「目標捉えました!」
「80cm艦艇砲…撃てぇー!!」
艦艇砲から核弾頭弾が放たれる。
勢いよく飛んで行った核弾頭弾はそのままアースノアに衝突、宇宙空間は一瞬にして眩い光に包まれた。
「どうっ…だ……」
光が収まってきたため、ヒンデンブルクはアースノアの姿を確認しようと目を凝らし、言葉を失った。
ヒンデンブルクの目線の先には、損傷している箇所が一切見られないアースノアが健在していた。




