表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

リンとコロの物語

作者: 天川つばさ
掲載日:2009/11/08

秋の虫達のドラマチックな世界をお楽しみください。

ここは、秋の虫達の楽園ムーンライト王国です。


美しい月の光が、届く場所。


この素晴らしい楽園を守るのは、コウロギの代表 ロン大王様


楽園の政治や治安を守っています。




ある日の夜。


そう、秋の夜 夜空に大きなまん丸なお月様が、浮かんでいます。


その風景は、とても美しくまるで、一枚の絵の様でした。



月明かりに照らされたお城の窓から、月の美しさを眺めている影があります。


王様の一人息子 コロ


秋の晩餐会には、虫達の奏でる音色の中 次の王を決める儀式があるのです。



コロは、ドキドキしてなかなか寝付く事が出来ずに、窓の外をぼんやりと眺めていたのです。


夜空には、満天の星空。


そして、飴色に輝くお月様。



「ねぇ、お月様!僕は、このまま後をつがなきゃいけないの?」



お月様に、話しかけても答えてくれません。


「ちぇっ 冷たいお月様だなぁ…」


お月様から目を逸らし丘の上を見た時。


ぼんやりと月明かりに照らされた影が、何かをしています。


「ん?誰だろぅ…」


お城の高い窓からでは、なかなかくわしい様子がわかりません。



「よし!行ってみよう!」



コロは、そう言うとこっそりお城を抜け出しました。



こんな気持ちは、初めてです。



ほんの少し怖い気持ちとそして、わくわくする気持ちが交じり合っています。



お城から抜け出し、お城の門をくぐると外の世界です。



「お城の窓から見た時は、あんなに近くに見えたのに。」


コロは、一生懸命走りました。



芝生を抜けて 街を抜けて


川を渡り 林を潜り



こんなに、走ったのは初めてです。



やっと、お城から見た丘にたどり着きました。



やっと、目の前にお城から見た、スズムシのあの人がいます。



何かに夢中で、コロに気づく事はありません。



一生懸命、羽を広げて力いっぱい歌おうとしています。



声をかけようとした コロは、彼女の美しさと力強さに見惚れてしまい、声をかけずに少しの間

黙ったまま見ていました。


視線を感じたのか、やっとコロに気づきました。



「あなたは?」


ドキッとしながらコロが、答えます。



「ぼっ…僕は、コロです。お城からあなたを見つけここまで走ってきたんです。」



「お…お城から?」



元気よくうなずくとコロは、彼女の名前を聞きました。



「リンです。」



にっこりと笑顔で、答えてくれた彼女にコロは、お礼を言いました。



「素敵な歌声をありがとう!ぜひお城で歌ってくださいね。」


もうすぐ、お城で秋の晩餐会が、開かれる事と儀式がある事を伝えました。



少し悲しそうな顔をしたリンが、答えます。



「でも、掟が…」



そうです、お城には、とても厳しい掟があったのです。



種族の違うものは、交わることを許されない。



つまり、リンとコロは、出会ってはいけないのです。



コロが、にっこりと言いました。



「大丈夫!明日父さんに話して見るよ!」



そう言うと、リンの手を握りました。


リンもそっと握り返します。




二人を、そっとお月様が、眺めています。



そっと…


そっと…





翌朝…



お城中に響き渡る怒鳴り声。



「ダメだ!ばかもーん!よりによってお前は!」



いくら、コロが説明しても王様は、うなずいてくれません。



それどころか、よりいっそう掟を厳しい物に変えそうな勢いです。


悲しくて、自分の部屋に戻りベットの上で、大声で泣きました。


切なくて…


苦しくて…


しばらくすると、コロは泣きつかれて寝てしまったのです。



その晩の事です。


夢の中に、お月様が現れたのです。



「コロ… コロ!起きなさい!」



不思議な事に、お月様は妖精の姿をしていました。



「コロ!あなたは、恋をしてしまったのね。」


「真っ直ぐあなたの思った道を進みなさい。私があなたを照らしてあげる。」



はっとベットから飛び起きたコロ。


窓の外を見るとお月様が、照らしています。



またお城を抜け出しました。


明日の夜は、晩餐会です。


ちがう窓から、お月様に照らされたコロを見ている影があります。



「ばか息子め… ははは 私の若い頃にそっくりじゃ…」


王様ロンでした。



その、瞳には、少しの心配と大きな期待の涙が光っていました。




月明かりに照らされて。


リンが、いつもの丘で、歌の練習をしています。



丘に来る途中で、見つけた花を集めて作った冠をそっとリンの頭にかぶせました。



「ありがとう!コロ!」



リンの歌に、コロが伴奏を付けて二人は、歌います。




♪ もう、離れないと決めた心は、月明かりに照らされて強くなる


長い道も、二人で歩けば楽しい道のり  きっと きっと


迷っていた心は、真っ直ぐにあなたに向かっているよ


今、暗い道が、月明かりに照らされて


もう、迷わない 私の心 あなたの中に ♪




二人の息が合った素晴らしいメロディが、夜空に響きます。


透き通った歌声のリン


美しいハーモニーのコロ


秋の夜、月の明かりに照らされて。





今日は、いよいよ晩餐会の日です。


お城の中は、準備で大忙し! 厨房では、おいしいお料理が作られ、次から次へと庭に運ばれて行きます。



いよいよ、秋の大感謝祭が、始まります。




壮大なファンファーレが、鳴り響きます。



王様ロンが、すっと立ち上がると大きな声で、叫びました。



「皆のものよく聞いて欲しい!今宵のひと時楽しもうぞ!」



「おーー!!!!!」


地面が揺らぐほどの拍手が、響き渡ります。



大舞台に繰り広げられる、様々な催し物。


演劇 踊り 喉自慢の歌 楽器の演奏


お城の庭は、大盛り上がりで、皆の拍手や喜びの声が耐えません。



ひと段落下ところで、いよいよ新しい王を決める時間になりました。



ファンファーレが、また響き渡ります。



「皆のもの!王を決める時間となった!心せよ!」


お城の庭が、静かになりました。


さっきまでの晩餐会が、うそのようです。



しばらくの時間が過ぎて王様が、壇上に上がってきました。


手には、次の王の冠を持っています。




冠を台の上に置くと、王が大きな声で言いました。


「皆の者聞いてくれ!我が息子は、過ちを犯した!大切な楽園の掟を破ったのじゃ!」


たちまち、お城中に大きな驚きの声が、響き渡ります。



「よって!残念だが!次回の王は、いない!」



ゆっくりと音楽が、流れ始めました。


コウロギカルテットの演奏です。


美しい音色なのですが、何かが足りません。


そう!


ちがう音色がないのです。



そう、お城のすべての者は、気づいていたのですが、掟が怖くて黙っていたのです。



「待ってください!王様!」



そう、声がするとお城の人達をかきわけてあやしい二人の影が、壇上に近づいてきます。


しかし、兵達があっという間に、二人を取り押さえました。



「王様!聞いてください!私達はずっと練習をしました!」



王様が、聞き返します。



「なんの練習だ!」


ベールを脱いだその姿は、息子のコロでした。



「コ…コロ! お前は!よくもぬけぬけと!」



二人を取り押さえていた兵達は、コロの姿を見て一瞬手を緩めました。



隙をついて壇上に駆け上がった二人は、ベールを脱ぎ捨て王の前に立ちました。


王は、姿を見て言いました。


「スズムシではないか!掟を知ってのことか!」



コロは、しっかりと彼女の手をにぎり締めています。



王の目からは、涙があふれています。



「コ…コロよ…」


ぎゅっと握り締めた拳を振り下ろした王ロン


「兵達よ!切り捨てろ!」


兵達が、二人を切りつけようとした瞬間!


突然、強い風が起きて兵達は、飛ばされてしまいます。


夜空には、にこっと笑った月と自分じゃないよとそっぽを向いた雲がそっと様子を眺めています。


一瞬の静寂が、あたりを包み込みます。



そして、美しい透き通る様な歌声が、響き渡りました。




♪ もう、離れないと決めた心は、月明かりに照らされて強くなる


長い道も、二人で歩けば楽しい道のり  きっと きっと


迷っていた心は、真っ直ぐにあなたに向かっているよ


今、暗い道が、月明かりに照らされて


もう、迷わない 私の心 あなたの中に ♪



そうです、あの歌です。


二人で、練習した歌声は、楽園中に響き渡りました。



大きな声で、心から歌う歌は、お城の人達を包み込みます。


夜空の月と雲も聞いています。



歌が終わると人々から拍手が巻き起こりました。


まるで、落ち葉を巻き上げる秋風の様です。


祝福の紙吹雪が、舞っています。



月は、それ様子を明るく照らし 雲は、やさしい風で祝福します。




ロン王様が、再び壇上に立ちました。


ファンファーレが、鳴り響きます。



「皆の者よく聞いておくれ!私は、いままで間違っていた!」


「代々伝わる邪魔な掟を消し去る事が、できなかった王だ!」


「この楽園には、足らないものがある事を知っていて、変えられなかった哀れな王だ!」


「今!ここに宣言する!新しい王の誕生を!コロ王の誕生じゃ!!!」



大歓声が、響き渡る中、王から新しい冠を頭にかぶせてもらいました。



そう!


あの時、リンに冠をかぶせてあげた時の様に…


月明かりに照らされた二人は、凛として壇上に立っています。



そして、愛し合う約束をしました。






透き通るメロディが、響き渡り


ハーモニーが、かくれんぼの様に


秋の虫達の楽園は、永遠に続いていくでしょう。


様々な、素敵な音色が奏でられる秋の夜





月が、あなたを照らし


星が、あなたに煌き


雲が、あなたをやさしく導く




透き通った歌声!


素敵なハーモニー!



月明かりの下。


リンとコロの声が、聞こえるね。



ほらっ! あなたにも素敵な事が、起こりそうな音色がするでしょう。


最後まで読んでくださってありがとうございます。


ご意見、ご感想等お待ちしております。




天川つばさ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ