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99.アルカのネット親友の正体【後編】

 パラレルワールド。並行世界とも呼ばれる存在である。

 この世界には「もしもこうだったら?」と考えられる数だけ、無限に近いパラレルワールドが存在すると言われている。

 恋愛ゲームで例えるのであれば、Aヒロインを選んだルートA。Bヒロインを選んだルートB。それぞれが別世界での出来事である考え方である。


「う~ん。あれが未来のインターネットかぁ……今いち現実味が薄いなぁ。むしろそういうリアルな夢を見せる装置だったって方がまだ納得できるよ」


 授業中つい、小声で独り言を呟いてしまうナガレであった。


「じゃあこの問題を……双葉さん」

「え? へぇぁっ!?」


 別な事を考えていた為、ナガレは授業を聴いていなかったらしい。

 だが、実際にあんな現実離れした出来事があれば無理もないだろう。

 教室に笑い声が響き渡る。


「双葉さん。確かに貴方くらいの年齢ですと、考えなくてはならない事は多いと思います。おそらく時間も全然足りないと思います。ですが、勉強も大事です。脳を勉強と言う名の敵と戦わせ、レベルアップさせませんと、今後のシナリオにおいてレベル不足となり、大変な苦戦を強いられてしまいます」


 眼鏡をかけた優しそうな男性数学教師はニコやかにそう言った。

 これはナガレだけではない。全員にだ。


「すみません」

「いえ、分かっていただければ良いのです」


 愛想笑いをしながらナガレは謝り、場が落ち着いた……かのように見えたが、クラスメイトの少女が立ち上がり、ナガレを指差しながら叫ぶ。


「ハッハッハ! 怒られたわね! どーせゲームの事でも考えてたんでしょ? ゲームとかお子ちゃまねぇ。ホントにお子ちゃま。いいわ! 今日こそ証明して見せるわ! あんたの好きなそのゲームでも私の方が上だって事をね! 大体あんたの戦略は運任せなのよ! だからこの前の勝負はノーカンよ! ノーカン! それに引き換え、私は運になんて頼らないわ! 今日の放課後絶対勝負よ! ゲーム機持って、私ん家来なさい! いいわね!」

「槍崎さん。双葉さんと仲が良いのは良い事ですが、とりあえず落ち着きましょう」

「なっっっ! 良くないですよ! 何言ってるんですか!?」


 槍崎と呼ばれる少女は周囲の笑いを受け、顔を赤くしながら着席した。


槍崎やりざき黒亜くろあちゃん。

 なぜだか昔からライバル意識を私に向けて来るんだよねぇ。

 休日とかいきなり電話かけてきて勝負だ勝負だって勝負を挑まれるし……いや、私は嫌じゃないんだけどね。

 誕生日は忘れずに毎年プレゼントをくれるし、小学生の時から一緒に遊んでくれるし、チョコ好きな私の為にバレンタインの時も毎年チョコをくれるしね。

 ただ、誕生日で家族旅行に行った時にも、追いかけてきて祝われた時はちょっとびっくりしちゃったかな……)


 悪い子ではないのだ。



 そして放課後、一度家に帰りゲーム機を持ち槍崎家へお邪魔する。


「お邪魔します」

「ナガレちゃん、いらっしゃい♪ 黒亜は部屋に居るから遊んであげてね。いつも悪いわね。あの子いつもああだから……」

「いえ、私も楽しいですし」


 黒亜の母親が出迎えてくれた。

 そしてそのまま、黒亜の部屋へ向かう。


「来たわね! 勝負よ勝負!」


 黒亜は、パーティ用のポテチを豪勢に掴み、口へ放り込んでいた。


「よーし! 負けないぞー!」


 勝負に使用するゲームは【モンスターガールズ】だ。

 ゲームはお子ちゃまとか言っておきながら、黒亜はかなりやり込んでいるプレイヤーなので油断ならない。



「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!! 何で……どうして……どうしてよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 黒亜は、近所迷惑になりそうな大声で叫びながら床を叩く。

 どうやら勝負に負けたようだ。


「ありがとう、スカイエル♪」


 ナガレは、携帯ゲーム機【ノーリミット】の画面に映っている翼の生えた天使のような女の子を指で軽く撫でた。


「そいつよ! そいつが持つ専用技【天風撃てんぷうげき】! 攻撃した時にそのターン相手を3割で行動不能にするとか何とか知らないけど、発動し過ぎなのよ! 不利属性2体を強引に突破とかふざけてるわよ! 私10ターン以上行動不能だったのよ!?」

「えへへ~、それほどでも~☆」

「褒めてないわよ!!」


 こうして、その後は料理対決という事となり、料理対決という名の槍崎家の晩御飯作りの手伝いが行われた。

 結果、美味しいハヤシライスが出来上がった。



「明日学校で覚えてなさいよ! あんたに逃げ場はないのよ!」

「うん、またね!」


 こうして、家に帰り、昨日と同じくVRヘッドギアを使用する。

 今日は登録したSNSで遊ぶそうだ。


「折角だから未来人さんと友達になりたいな。いきなり仲良しの所に入るのは緊張するから、友達がいない人にしよう! えーと、あいうえお順でユーザー検索ができるのか」


 ナガレは【アルカ】というユーザー名をタッチした。

 アルカのプロフィールは「二次元コンテンツが好きです。最近あんまり好きな事できてないです」とだけ書かれていた。

 ナガレは思った。二次元好きに悪い人はいない! 根拠は無い。

 幸いにもアルカはログイン中だったようで、チャットを申し込んでみる事にした。


「待てよ……?」


 パラレルワールドの未来という事はもう1人のナガレが成長した姿で存在するかもしれない。

 流石にチャットでバレる事はないだろうけど、アルカがパラレルワールドのナガレと知り合いだったら……? 

そう考えると、口調を大きく変える必要があるのかもしれない。


極「はじめましてでござる」


 侍口調で行く事にした。

 古き良き二次元好きっぽく、尚且なおかつナガレが侍好きだからだ。

 昔、剣道をやっていたのにも注目だ。


アルカ「はじめまして」


「そう来るでござるか。真面目でござるなぁ」


 ボロが出るといけないので、この機械を使用し外部と接続する場合は相手に聴こえていなくても侍口調を徹底すると決めた。


極「拙者、きわみと申す」


 極とは、ナガレのユーザー名である。好きな動画のネタからパクったのだ。

 こうして、表向きは真面目なアルカとの絆を深め、フランクな関係となっていったのだ。

 そして、数日経ち、ある事に気が付く。


「あ、ノーリミットからケーブル引っ張ってきてヘルメットに差し込んだらマイスペースからでもプレイできた。これ対戦とかもできる……!? 未来のガールズ……ゴクリ」


 そう、ノーリミットとVRヘッドギアには互換性があった。

 起動できないゲームもあったが、モンスターガールズは対応していた。

 アルカの対決の際には、見た事のないガールズとの戦闘もあったが、持ち前の器用さと運で華麗に勝利をもぎ取っていく。


アルカ「つ、強い!」

極「よし、勝ったでござるw」



 そして時は流れ、とある冬の日の下校時間。

 ナガレと黒亜は雪が降る中、下校をしていた。

 傘を忘れたので、黒亜の傘に入れて貰っている。

 おまけにナガレが寒そうにしていたら、黒亜がマフラーをシェアしてくれた。


「ねぇ……」

「え?」

「最近あんたから妙な気配を感じるのよね」

「どういう事?」

「男の匂いって言うの? 男にまとわりつかれてるような感じがするわ。私のカンだけど」

「クラスの男子とかとはゲームの話よくするけど……」

「ちょっと違う気配なのよねぇ。何なのかしら? まっ、気のせいならいいわ」

(アルカさんって、もしかして男性なのかな?)


 帰宅後、アルカに尋ねてみたら男性だという返答が帰って来た。

 黒亜のカンの良さにナガレは驚いた。


「二次元好きに性別は関係ないでござる」


 とか言ってアルカに自身の性別は明かさなかった。

 この時点では、別に隠している訳では無かったが、言い忘れた&聞かれなかったのが理由だ。

 だが、素性がバレるのは良くないので結果的には良かったのかもしれない。

 そのせいで男性ニート疑惑をかけられてしまう事になるのだが。



 そして更に時は流れ、ナガレは中学2年生となる。

 相変わらず、アルカとはチャットを行っている。

 そして、とある春の日。


「当たった……!?」


 以前アンケートで答え、抽選でゲームソフトのダウンロードコードが貰えるキャンペーンがあったのだが、見事当選したのだ。

 当選したゲームはガールズワールドオンライン、通称GWOと呼ばれるVRゲームであった。


「ガールズワールドオンライン……?」


 全プレイヤーが女の子になれるゲームという事を売りにしていたのだが、VRゲームをプレイした事のないナガレにはリアルな世界で実際に体を動かしてゲームが出来るという面に感動していた。


「た、楽しみ!! 楽しみだ!! 本当にリアルな世界でプレイできる何て!! 私はとても恵まれている! あっ、そうだ。アルカさんも誘おう。一緒にやったらきっと楽しい! でも、アルカさんって女の子になりたいとか思った事あるのかなぁ? でもネットではこのゲーム人気みたいだし……ま、まぁそこは私の説得スキルで何とかするしかないっ!!」


 アルカにとっては2021年春。極にとっては2008年春。

 GWOをプレイするに至ったのだ。

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